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鳴神大戦記ー最果て城主の仮想現実ー  作者: 舞茸イノコ
3章 『焔の糸で未来を紡いで』
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『22』


 フラン・フィアンマ。ついこの間まで西紀城に仕え、轟天一の助言もあり、九十九の元に訪れることができた。そんな彼女が行手を遮ってまで出たのにはそれなりの理由があった。



「私の『未来視』によれば、西紀城に私がいる姿が確認できたであります。…そこには主人の轟天一と九十九…貴方の姿がありました」


「未来視…成功したのか」



 七海の方を見るとこくりと頷く。なるほど…その未来視の結果を捻じ曲げることになるから一緒に行くのがいいと言うこと。その結果に至るには彼女の同行が必須…ならば答えは1つだ。



「よし、一緒に行こう。その未来を達成するためにもフランが必須ならば無下にはしないさ」


「かたじけないであります!」


「それじゃ…私の後ろに乗ってもらった方が良いよね。剛力よりも体重は少ないからね。金剛もそれでいい?」



 ぶふーと鼻息を出して軽く頷く。こいつ…人間の言葉分かってるのか…?それとも単にスケベなだけなのかもしれない。



「金剛もいいってさ〜。はい、手を貸すから後ろに乗ってね。九十九は悪いけど走ってもらっていいかな?」


「あぁ。まだ霊力は残ってるし構わないぞ。よし…改めて行くか、西紀城へ」


「了解であります!」



 なんとかフランを金剛へと引き上げて森へと向かう3人。それを見送った居残り組は、西紀城の敗残兵を伴って最果城へと戻るのだった。



「さぁ、負傷者も多いことですし、私が後ろから押し上げましょう。小鈴は先陣に立って引っ張ってください」


「分かったにゃよ。『宵の地平線』集合にゃ!」



 偵察隊チーム(御船を除く)を呼び寄せて前を進む小鈴と、殿にて遅れる者がいないようにする田門丸。それに付随するように静流子は早乙女を御者として馬車にて並走する。馬車の中には静流子の他に運動が苦手な御船、歩くのが面倒な氷華、お目付役の六花が乗っている。



「そう言えば早乙女殿…で良かったですか、御者も出来るなんて多彩なのですね」


「うす…。俺は昔から猪俣様…お嬢の父上に仕えてましたので、一通り小間使いのようなことは出来る。が…それだけだ。戦いはほとんど出来ないから、俺としては田門丸殿のような守備的な補佐ができるようになりたいものだ」


「なるほど…でしたら暇があるときにでもお教えしましょう。体格は私と変わりませんし、すぐにでも習得できるでしょうね」


「…!、うむ…是非ともご教授願おう」



 外では戦いの後のようには思えないほどにリラックスして会話をしていて、それを静流子はニコニコと見ながら馬車に揺られている。



「こうやって繋がっていくんやな〜。早乙女は仕事に愚直で友人と遊ぶなんて無かったからホンマに微笑ましいわ」


「その、静流子…様。私たちまで乗っても良かったのか?まぁ、楽だし良いんだが」


「様付けはええで〜、それに女の子をこうして侍らすのはええもんやでな」


「はは、じゃあお言葉に甘えて気にせず話させてもらうよ。…それにしても戦場まで出てくる城主は見たこと…いや、いるな…。前線で命の危険に晒してまで戦う男が」


「九十九様…は、七海様と、同じか、それ以上に強い…らしい」


「我もそこには同意じゃな。雇い主でもある九十九は単独で『薄氷』にて軍勢を足止めし、戦力を削ぎ落とすまでに強い。我らがここまで苦戦せずに戦闘に勝利できたのはそれが要因じゃろうな」


「うちが直接見たわけじゃないけど、確かにここまで完勝出来たのは彼の力の賜物やろうな〜」


「実際に見ると凄まじいぞ…。一瞬で怪異を殲滅したり、そもそも身体能力が私たちじゃ足元にも及ばないからな」


「同じ城主…いや、うちは代理やけど様々やからな。うちはどっちかと言えば内政に尽力して戦闘はからっきしや。その点で言えば西紀城の轟天一は九十九と同じ…武人と言ってもええやろな。話だけ聞いてるけど、やっぱ色んな伝説と言われるだけの功績はうちの耳まで届いとる。そんな2人がかち合えば…いや、…無粋なことやな」


「全てが上手くいけばいいけれど、私としてはそれだけ穏便に済みそうにはないと思っているが…」


「言霊じゃぞ六花?口に出しては本当に起きるかもしれん。我らは無事に帰ってきてお給金を払ってもらいたいものだ」


「現金やな〜。あ、氷華ちゃん尻尾触らして〜な」


「嫌じゃ」


「もう、いけずやな」



 馬車内は微笑ましい雰囲気が漂っている。が、御船が何かを探知して皆に伝える。



「…ここから北東、距離…10町、餓鬼を引き連れて大餓鬼、接近中。数は…15匹ほど」


「そんな遠い距離から…ほんまに?」


「いや、御船の探知能力は別格だからな。その代わり戦闘はからっきしだが。よし…行軍を止めて迎え討つか。氷華行くぞ!」


「えー…我が出る幕なさそうじゃが」


「しのごの言わず来い!」



 馬車から氷華を連れ出して外に出る。前方の方も気付いたのか列は止まっているようだ。



「では、私は被害が及ばないように守りに行きます。御船さん、探知を継続して危険があれば教えてください」


「了解…」



 田門丸も盾を携えて北東の方へと向かう。しかし、残されたのは戦闘技術のない者ばかりで、それに気付いたのは声も届かない場所に行ってからだった。



「あ…これやばいんちゃう?」


「何とかなる…。戦いになれば、西紀城の人に…手伝ってもらう」


「俺も微力ながら守ります」



 結果からすれば、最果城が誇る偵察隊と六花と氷華の援護もあって悠々と撃破することに成功する。時間にしてもほんの一瞬で、戻ってきた時には氷華が1番疲れているみたいだった。


 六花曰く、早く殲滅したら奢ってやるとその言葉にほだされて惜しげもなく術を使って雑魚を殲滅、大餓鬼は田門丸の防御と小鈴の武術、六花の射撃によって倒されることになった。


 だが、大餓鬼を単独撃破できる怪異狩りでもある七海の膂力を知ることとなった一同であった。


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