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鳴神大戦記ー最果て城主の仮想現実ー  作者: 舞茸イノコ
3章 『焔の糸で未来を紡いで』
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『12』


「おはよー、結構ぐっすりだったよ。朝ご飯も冷めてるけどできてるから食堂に来てね。ほーら、氷華も起きて」


「ねむねむ…むぉ、…もう朝か」


「おはようであります。…よし、覚えている。早速見えたのでお伝えしたいのでありますが」


「とりあえず食堂で話を聞こうかな。多分そろそろ飛鷹も帰ってくるはずだから」



 先日書いた手紙については偵察隊の飛鷹を使って運んでもらっていた。空を飛べる彼は美鶴城へも何回か行ったこともあり、伝書鳩…というのは申し訳ないが、とても便利である。


 眠気まなこの氷華を起こして全員が食堂へと集まる。そこには雑務員、偵察隊、調理員、門番に至るまでがこの場に集結する。人数は少ないとはいえ、10人以上も集まれば小さな食堂は圧迫感を感じる。



「ただいま戻りました。美鶴城の猪俣様に対応していただきまして、手紙を直接お渡しできました」


「お疲れ様。どんな感じだった?」


「はい、とりあえずひっ迫している旨を伝えると兵を集めてくれるみたいですね。早くて明日の明朝には250人ほどをこちらに寄越すと。しかし、美鶴城は戦いに秀でているわけではないので、そこについては期待はしないでとのことでした」



 貿易で発展を成した美鶴城は鉱山があれど、武器や防具の類いを保有しているということではない。原料を最果城や華宮国に輸出しているだけである。



「そうだね…とりあえず今私が持っているお金で武器とか調達して、最低限戦力になればそれで構わないかな。うん、とりあえず指針は決まったね。あ、みんなに紹介忘れてたよ、西紀城から亡命?してきたフランさん。今回は『未来予知』の結果を伝えてもらうよ」


「模擬戦闘をした人や雑務員は顔を合わせているでありますが、フラン・フィアンマであります。出身は…華宮国の奥にある北斗という所で育ったであります。私の職業でもある『焔の魔女』は未来を見る技能があり、今回は近い未来を見る事ができたであります」



 事情を知る者、知らぬ者問わず多少のどよめき。七海も半信半疑であったが、今回の準備が徒労に終わることがなくて良かったと感じる。



「見えた未来ーーーーーーーー掻い摘んで説明するでありますが、私の見立てでは戦いは行われることは間違いないかと」


「そうですか…それの規模はわかりますか?日数によって食料関係を組まなければ」


「恐らく…1週間以内には終わるであります。被害や規模はわかりませんが…。私が見た未来は、西紀城の執政室にて私と城主2人がいる姿を確認しました。が、他の情報というのはわかりません」


「癖髪がそこにいるということは戦いは終わって城に乗り込むことに成功したんじゃろな。…うーん、うまうま。六花の飯より美味…うぎゃ!な、何をするのじゃ六花!」


「話し合いなんだから飯を食うのやめろ、それと私の飯がまずいって言うのか?」


「まずいとは言っとらん!…から、鷲掴みを止めるのじゃ〜」



 話し合いの最中でも食事を取る氷華に六花の鷲掴みが決まったところで張り詰めた雰囲気は和やかになる。



「はい、とにかく戦闘は避けられないからね。美鶴城の兵士たちが集まったら連携して荷物の準備をしよう。九十九が1人で『薄氷』に潜入しているから、少しでも早く手助けしないと」



 その瞬間、またもや空気は張り詰める。そこに御船が一言ボソリと言う。



「つまり、今、戦ってる…かも?」


「そいつはやべぇな…」


「にゃ」


「やばいで済ましてはいけません!門番全員も支度してきます!」



 一斉に散り散りになる一同。食堂に残されたのは氷華の食べかけと、七海とフランだけだった。



「ありゃ…まずいこと言ったかも」


「そりゃあ…城主が単独で対峙してるとなればそれが普通でありますよ」



 氷室から保存の効く物を取り出す調理員、武具などを集め集積する雑務員、偵察隊『宵の地平線』は全員がすぐに出立する準備を。各々が危機的状況を理解していて忙しなく、そして慌ただしく動き始めた。



「さて…と、私は武器でも出しますか。外で準備してくるよ」


「あ、私も行くであります!…武器庫には雑務員がいるでありますが?」


「そっか。じゃあ、人目につかない所で出そうかな」


「人目…?出す…?」



 2人は他の人から少し離れた場所に移動すると、七海は宙に向かって指先を操作しているようだ。



「とりあえず初期武器と…扱える人は強めの武器かな。防具も私が装備できないのがあるし、それも出しとこう。あとは…こんなもんかな。足りなくなったら新しく出したらいいや」


「あの…なにをして」


「よしっ!じゃあ、そこに武器出すから離れて〜」


「出すって…」



 どさどさ…どさどさ…金属の擦れる音などが響き、フランの目の前には100を超える武具がどっさりと盛られている。



「え…えぇ!いきなり出てきたであります!?」


「あ、言ってなかったや。私も九十九は収納できるから、意外とたくさん持ってるんだよ」



 かつて『八百万』に入るために怪異を倒し、戦利品として数々の武器たちを手に入れてきた。もしこの世界から帰っても使い道がないのなら、今ここで戦力を上げるためにも出し惜しみはしない。



「私は刀くらいしか扱えないからね。斧とか短剣、西洋剣、弓、他にもたくさんあるけれど、これを城の在庫として出せば後々便利だからね」


「本当にお2人は規格外であります…」



 雑務員が見つけ驚愕するが、フランと同じく規格外というのを分かっているため、そつなく仕分けして種別ごとに並べ終わる。


 そして諸々の準備ができた時には日が高くなっていて、いつでも美鶴城との合流が可能となった。


 偵察達は『薄氷』への道に蔓延る怪異の殲滅。しかし、飛鷹だけは美鶴城からの部隊の存在を確認するために定期的に空を飛んでいるようだ。

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