『10』
九十九はあれから募集や税収を見直し、内政に尽力する。それから約3ヶ月という短い期間で早速、田門丸と小鈴の両名は成果をあげた。
田門丸は力士時代の調理技術を用いて、調理員の代表として台頭することになり、城内の栄養事情の改善や兵站の安定化を担うまでになった。さらには城に新たな施設の建設のため、身を粉にして働いてくれた。その甲斐もあり、新しく兵站倉庫兼氷室、馬車小屋、詰所の建築が完了した。
小鈴は新たに偵察部隊(宵ノ地平線)を編成し、小鈴を隊長とした3人の雇用を行った。小鈴の出した条件は意外に現実的でかつ理想的なもので、技能として【気配察知】、【遠視】もしくは【夜目】を持っている者、さらには移動系の上昇スキルを持っている者を対象として、自らの目で決めたそうだ。
1人は【夜目】【速度上昇・良】【疲労軽減・良】を持った元足軽で元盗賊…ではあったが、以前倒した野盗とは全く正反対のいわゆる義賊として活動していた宗左衛門という男。それからもう1人は【気配察知】に優れていて、どうやら物陰にいても白くぼんやりと見えるらしい御船と呼ばれる口数の少ない女性。最後の1人は【遠視】と【飛行】という技能を持ち、怪異狩で生計を立てていた翼獣人である飛鷹。
先日も魔獣の森の入り口までや、南の山脈、東の川を越えた先を偵察して情報を集めてくれたのだ。
七海も晴れて初段に昇格、今日も今日とて戦いに明け暮れている。そして、今回の調査結果から社奉行所と共に怪異の討伐隊を組むことになった。これらがうまくいき、定職に就きたい者には城仕えとして討伐隊に入ってもらいたいと思っている。
【以下百から切り捨て】
国力 17000
雇用
門番 →5人(月15万)
調理員→2人(月6万)
雑務員→3人(月9万)
偵察隊→3人(月12万)
田門丸(月5万)
小鈴(月5万)
七海(月5万)
税収 月100万
陣営 偵察隊(宵ノ地平線)
残金 1200000円+彫像100万
「それにしても国力跳ね上がったな…今まで七海を雇用してなかったことになっているからかな…。ってことは今まで七海は名実ともにニートになっていたのか?」
「ふん、今は城仕えの侍だからいいもんね。…今回の討伐隊で良さそうな人がいれば、私と一緒に討伐隊組むのになぁ」
「にゃあ達も頑張るにゃよ!」
「怪我だけはしないように。私も今回は後方支援ではなく、護衛という形で入りますので、気を引き締めねば」
今回の討伐対象となっているのは、土蜘蛛・天狗・鬼となる。
土蜘蛛は以前にも森から出て平原を通る行商を襲ったりしていたため、今回の討伐対象入りになった。搦手を使い襲ってくるため機動力で殲滅したいところだ。
天狗は森から出ることはないが、木の上でコミュニティを作っているため、今回のように大勢で入れば襲いかかってくる可能性は否定できない。厄介なのは鴉天狗という上位種の存在で、同じく翼を持つ飛鷹も対峙したことがあるらしく、速度の上では勝てたものの、接近戦で刀を使用してきたり、吹き矢で牽制したりと非常にトリッキーな戦いをしてくるらしい。
そして、今回の一番厄介なのは鬼である。鬼は餓鬼の大きくなった版と思われがちだが、一番違うのは知能を有していて、罠を張ったりチームで行動したり、それぞれにあった武器を使用してくる。さらには人よりも筋肉隆々であるため、打撃戦にも非いでている。
社奉行所曰く、天狗とは縄張り争いをしているそうだ。触発されて合戦が行われているため、その度低級の怪異などが森から出ることもあるそうだ。今回もそのようなことが原因だと思われている。
「さて…明日決行する。各人準備は怠らないように。ってことで…俺は疲れました、寝ます」
「にゃす。にゃあも最近働き詰めだったから、偵察隊のみんなと食事したら寝るにゃ〜」
「私は最後に兵站の確認だけをします。料理はすでに出来てますので、あとで食堂に来てください」
「私は剣の手入れをしてから戻るね。…多分たくさん斬らないといけなくなりそうだから」
「というわけで解散!皆…明日はよろしく頼む」
そうして、それぞれがやるべきことを遂行する。九十九は寝所に着くやすぐに布団にダイブした。
「…俺の役目はみんなの無事を祈って拠点にて後方待機。とはいえ、中の状況が見えないから偵察隊と連携しないとだな。…縄張り争いだけで済めばいいんだけどなーーーー」
そして襲いくる微睡に耐えきれなくなり九十九は寝息を立ててしまった。その様子を七海は部屋の入り口から見ていたようで、少しだけ心配そうな顔をする。
「本当に…昔から変わらないね九十九は。人のために働きすぎだよ。私が塞いでいる時だって、お父さんやお母さんに頭を下げてさ…。『俺と一緒にゲームさせてください!』…なんて、誰が聞いても訳がわからないけれど、私は分かっているつもりだよ。救いたかったんだ、私を。…そして、今回はこの城下町を。もっと頼ってほしいな…なんて、九十九には言えないや」
それだけ溢すと、七海は剣を持って庭先へと手入れしに行ったのだった。




