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弟への手紙
勇樹へ
あなたが自ら命を絶って、もう二十年が経つのですね。
元気にしていますか?
あなたのことだから、誰かの相談に乗っては、やさしく手を差し伸べているのでしょうね。
あの時、あなたを助けられたのは、僕だけでした。
なのに、僕は自分のことで精いっぱいで、あなたのことが全然見えていませんでした。
あなたの亡骸を前に、何度も何度も謝ったのに、
あなたは何も言ってはくれなかったね。
僕は、どうしていいかもわからないまま、あれから二十年間生きてきました。
でも、もうとても疲れました。
あなたに会いたい。
あの時のこと、ちゃんと謝るから、あなたのそばにいさせてほしい。
今から会いに行くよ——
「大切な人に手紙を書きなさい」
突然聞こえたその声は、懐かしいあなたの声でした。
あなたの言う通りに、今、四通の手紙を書き終えたよ。
僕はあなたに、何一つしてあげられなかったのに、
あなたは僕に、最高の贈り物をくれました。
僕には、大切にしたい人がいる。
それだけで充分なんだね。
勇樹、本当にありがとう。
僕は生きるよ。
だから、ごめん、あなたに会って、謝れる日は、
明日じゃない。