母への手紙
輝子様
お母さんも、もう六十五歳になるのですね。
外見だけみれば、とてもそんな年には見えないけれど、加齢による不便は感じているのかもしれませんね。
それでも、熱心に働いて、皆に頼りにされているあなたを、僕は尊敬しています。
思えば、お父さんが亡くなってから、ずっと働きづめではないですか?
仕事が好きだから、とあなたはおどけて言うけれど、本当は僕の為なのではないですか?
仕事が長続きしない息子。
養育費を抱える息子。
心が健康でない息子。
そんな息子だから、いつ何があるかわからない。だからいつでも援助できるように、とお金を残してくれているのではないですか?
それが当たり前のことだとは、僕は思いません。
あなたは僕に、まっすぐな愛情をくれました。
そして、僕を信じてくれました。
何かを始める時も、やめる時も、
何かをつくる時も、こわす時も、
いつでも僕の選択を尊重し、受け入れてくれました。
その選択は間違っていたこともあったけれど、そこから学び、成長することができました。
お母さん、
僕は今、やっと自分を好きになれたよ。
幸せで幸せでたまらないよ。
僕を生み、今までずっと僕の母親であり続けてくれたこと、心の底から感謝します。
僕にすばらしい人生をくれて、本当にありがとう。
もし明日、僕が死んでしまっても……