表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

便箋と封筒

三月の下旬、男は会社を辞めた。


外は日が沈みかけていた。

会議室で、四人の男女が椅子に座っている。

従業員の女が「もうこの人とは一緒に働くことはできません」と言った。

もう一人の従業員の女も「私も同じ意見です」と言った。

男は、うつむいて、床を見ている。

経営者の男が、「何か言うことはあるか?」と男に尋ねる。

男は顔を上げずに、「ありません」と答えた。


男はデスクに戻り、残務処理を終えてから、会社を出た。

暗い歩道を歩き、駐車場の車に乗って、家路につく。

マンションのエレベーターを待っていると、年配の女と一緒になった。

男は先に乗り込み、「何階ですか?」と聞いたが、年配の女は聞こえなかったのか、自分で八階のボタンを押した。


男は十四階でエレベーターを降りた。

玄関のドアを開錠し、暗い部屋に入る。

コートを脱ぎ、鞄を置いて、換気扇の下で煙草を吸う。

男は立ち昇る紫煙を呆然と眺めている。

煙草が尽きると、リビングのソファに座り込む。

目を閉じて、何かを思案しているようだった。

暫くそうしたあと、男はコンセントから延びる延長コードを見た。

長さを確認するかのように、目が左右を何度か往復した。

その時、「えっ?」と漏らし、男の動きがぴたりと止まった。

次に周囲をきょろきょろと見まわす。

そして、口元に手を当て、なにやら考え込んでいる。


やがて男は、天井を仰ぎ見ると、「わかりました」と独り言を言って、ソファから立ち上がった。

コートを着て、部屋から外へ出る。

車を運転し、近くにある文具店に入る。

閉店間際の店内は閑散としていた。


男は、便箋と封筒を買った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ