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50パーセントの守護ゾンビ  作者: おんぷがねと
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67. ふつうの人にもどる日

 ネモーネはミレイザに放った魔法が効かないとわかると、氷の矢の魔法を出現させて放った。


 クラレットはミレイザの止まっている状態をむだにしないために、鎌を出してその首向けて投げた。


 ふたりの攻撃がミレイザを仕留めようとしていた。ミレイザはここからどうにか離れるために必死に足を動かす。だが、前には進まなかった。


 そのとき、ピサリーは目をどうにか開けることができた。ぼやけながら状況を見てみると、ちょうど相手側の3人の位置が一列に並んでいた。


 ピサリーはそれを確認すると流星を放った。赤い光の帯をつけてその魔法が飛んでいく。


 急激な光にクラレットは戦士の盾を構えて前に飛び出した。その後ろではネモーネが透明な壁を使う。


 クラレットは盾を両手で持ち流星を防いだ。だが、じりじりと押されていく。やがて盾が割れて彼女の鎧も打ち砕いた。そのまま押されてネモーネの透明な壁も吹き飛ばそうという勢いだった。それと同時に竜巻が止み、ミレイザたちを囲っていた光が消えた。


 とたんに動けるようになり、ミレイザはドア目指して走り出した。ドアを蹴破り城の窓から外へと抜け出す。それから、ピサリーは刹那を使った。


 流星の勢いが消えるとクラレットは膝をついていた。ネモーネは透明な壁を消して辺りを確認する。


 この状況に女王は怒りをあらわにした。


「おのれぇ……ネモーネ、やつらを追うのだ!」

「はい!」


 ネモーネは刹那を使い3人を追った。


 なかば倒れ込むようになりながら3人はどこかの平原に姿をあらわした。ピサリーは立ち上がりラルドに言った。


「ラルドはここにい置いていく」

「えっ!?」

「アリッサを助けるためだ」

「アリッサさんを」

「ああ」

「……ぼくも、アリッサさんを」

「ダメだ。時間がない」


 有無を言わさずピサリーはミレイザの手をつかんで刹那を使った。すると、今度はミッドラビッドの墓の前に着いた。


「ピサリーここは」

「静かにしろ」


 ピサリーはミレイザの指からクロバーの指輪を取り外した。それから、杖を構えてミレイザに向けた。彼女は護身の魔法を使い火の玉をためはじめる。


「なにをしているの?」


 ミレイザは彼女の行動に困惑しながら言った。ピサリーはニヤリとほほえむと、気に入らなさそうに答えた。


「助けてやるなんて嘘だ。最初からこうしてればよかった。おまえとこうして向き合うのは何回目だろうな」


 ミレイザは首を振りながら信じられないと思った。どうして? なぜ? わたしが迷惑をかけたから? わたしがゾンビだから? そんな、そんな……。


 ミレイザは絶対に信じていたい彼女に裏切られるとは思いもしなかった。いままでのことと、いま起きていることの整理がつかなく、交錯する感情のなかでようやく言葉を出した。


「うそ、でしょ?」

「うるさい、死ね!」


 ミレイザはあわてて駆け出した。ピサリーに背中を見せて必死で逃げる。


 彼女との思い出が走馬灯のようによみがえってくる。それは、わたしという存在から目を離さずに、いつもわたしを見守り、いつも気にかけてくれたこと。


 嫌なこともあったはずなのに、なにを思い出そうとしても、ピサリーのやさしさだけしか思い出せない。


 こんなことになっても、こんなことを想うなら、もっと話してればよかった。もっと伝えてればよかった。感謝の気持ちを……。


 その苦しい気持ちを壊すように、どこかが破壊される音が聞こえてきた。なにが起きたのか振り向いていみると、ピサリーは真横に火の玉を放っていた。放ったところにある墓が焼けながら崩れ落ちている。


 ミレイザはなにが起きているのかわからなかった。

 ピサリーは人差し指を口に当てる。それを見たミレイザは声を出すなということだととっさに思った。


 ピサリーは刹那を使ってミレイザの近くに来ると、彼女のしていた指輪から、フリル付きの青いドレスローブを取り出した。それをミレイザに差し出すと、自然な流れでミレイザはそれを受け取った。


 ピサリーはミレイザの指輪と、自分している指輪を取り外し地面に落とした。


「早くそいつに着替えろ」

「う、うん」


 ミレイザはなかばあわてるようにしながら着替えはじめた。ピサリーはあたりに誰もいないことを確認して話し出した。


「いま、おまえをもとにもどしてやる。約束だからな」


 ミレイザはその言葉をどれほど待っていたことか、なにかを言おうとしたけどなにも言えなかった。ただ、驚きを見せるだけだった。


 そうこうしているうちに着替えが終わり、ピサリーはミレイザに杖を向けた。そして、浄化の魔法を放った。


 急激にミレイザの体はゾンビの体からふつうの体にもどっていく。青黒い体の色はだんだんと肌色になっていった。


 ミレイザは自分の手のひらを見ながらそれが自分の本当の姿だと思い、うれしさのあまり笑みがこぼれた。


 50、30、10パーセントとその数値は減っていく。


「ピサリー、ありがとう」


 ピサリーは黙ったままその作業をしていく。それから0パーセントになり、その作業は終わった。ピサリーは彼女の姿を見て言った。


「それで満足だろ。着替えたものをこっちに渡せ」

「うん」


 ミレイザはピサリーに着替えた服を渡した。


「よし、じゃあな」


 ピサリーは地面に落ちている指輪をふたつともすばやく拾い上げると刹那を使った。


「えっ!? ちょっと、まっ……!」


 ミレイザは彼女のあとを追おうとしたが転んでしまった。いままでとても体が軽かったのに、いまはとても重く感じていた。地面に吸い付けられるようなそんな重みを。


「ピサリー!!」


 灰色の雲から風に乗って雪が舞い降りてくる。ミレイザはそれを体に受けると寒さと同時に寂しさを感じた。 


 それから、その寒さに耐えながら、ピサリーがまたもどってくるかもしれないと思い待っていたが、結局いくら待ってももどってくるようすはなかった。


 しかたなくミレイザは実家に帰ろうとしたが、その前に自分がもとにもどったことを確認するため、自分の墓に近寄ってみた。すると、そこは黒く焦げて破壊されていた。


「ピサリー……」


 ミレイザはミッドラビッドへと向かった。足取りがとても重く、引きずるようにして歩いていく。町に着くころには辺りはすっかりと夜になっていた。


 実家に行く前にどうしても自分の姿を確認したく、顔が映る場所をさがした。どこかの家の窓で仮面を取ってみると、そこには自分の本当の顔が映し出されていた。


 ふいに自分の顔に手をふれてみる。するとやわらかく温かい感触が懐かしさと同時にゾンビでないことを確信させた。


 ミレイザは実家に着くまで自分の姿を人に見られたくないため、ふたたび仮面をつけた。

 

 実家に着きミレイザは玄関前で立ち止まった。心臓がどきどきと鳴り、ドアを叩くをのためらう。


 一度、深呼吸をして心を落ち着かせるとミレイザは心の中で念じた。


 お母さん……。


 決心をしてコンコンとドアを叩くとそのドアは開いた。


「はい、どちら様ですか?」

「……わ、わたし……」


 ミレイザは仮面を取った。母親は彼女の姿を見て目を丸くした。

 

「み、ミレイザ……? ミレイザなのかい?」

「うん」

「ど、どうしてミレイザ、本当にミレイザなんだね」

「うん、ただいま、お母さん」

 

 母親はミレイザを抱きしめた。ミレイザは久しぶりに人のぬくもりを感じた。


 そうして、ミレイザが生きていたことはミッドラビッドの町に知れ渡った。親族からは埋葬してしまったことへの謝罪があるが、ミレイザはそれを許し気にしなかった。


 その後、ミレイザは誰かが家にたずねて来るたびに、城の兵士がやってきたのだと思い恐怖を感じていたが、お客さんだとわかりほっと胸をなでおろすということがつづいた。


 結局、城からの兵士は一度も家をおとずれることはなかった。


 秋が過ぎ冬がはじまるころ、ミレイザは手袋を作るため布を縫っていた。 


 ――あれから、ミレイザはピサリーとラルドをさがすためダリティアの城下町をおとずれていた。


 あちこちと町を歩いているとラルドを見つけた。だが、ラルドに声をかけることはできなかった。彼は冒険者として道行く人に「ぼくを雇わない?」と声をかけていたのだ。


 ピサリーをさがすため町を歩いていると、いつの間にか骨董屋の前に着いた。そこは新しく建て直っていた。


 それから、いくらさがしてもピサリーは見当たらず、彼女のことを町の人にたずねてみることにした。すると、妖精女学園という場所を教わった。


 妖精女学園。ミレイザは本当は最初からそこへ行こうと思っていたが、あれからのことを考えると、どうしてもそこへ確かめに行く勇気が出なかった。ピサリーがもうこの世にいないかもしれないと思ったから。だから、その不安をすこしでもなくそうと、町でのうわさや情報を確認したかったのだ。


 ミレイザは妖精女学園へ向かった。向かいながらピサリーと一緒にいろいろやったことを思い返す。そうして、妖精女学園前にたどり着いた。


 ミレイザはそーっと木の陰に隠れながら授業をのぞいた。しかし、遠すぎてよく見えなかった。前まではこの木のところからのぞいていたのに、なぜかとても遠くに感じる。


 すると、授業をしていたローゼリスはそれに気づいて刹那でやってきた。一瞬でミレイザの目の前にあらわれた。


「妖精の授業をのぞくのは禁止です。すみやかにここを立ち去りなさい」

「あ、あの、わたしピサリーに会いに来たんです」

「ピサリー?」

「はい、ピサリーはいますか?」

「彼女は授業中です。どういうご関係か知りませんが、あなたに会わせることはできません」


 よかった、ピサリーは生きている!


「ま、待ってください。友達なんです。お願いです。ピサリーに会わせてください」

「……なにか事情がありそうですね。わかりました。いまお連れしますからここで待っていなさい」


 しばらくしてローゼリスがピサリーを連れてミレイザの目の前にあらわれた。ピサリーはミレイザの姿を見て渋い顔をしていた。


「ピサリー、彼女があなたになにやら話したいことがあるそうです。ですから、それが終わったらもどってきなさい」


 そう言って、ローゼリスはその場から離れた。


「ピサリー」

「……誰だ、おまえ」

「ミレイザよ。ミレイザ・ロティーリス」

「ミレイザ? 知らねーな」

「えっ!? うそ、わたしたちずっと一緒にいたでしょ? 盗賊を倒したり、女王陛下から逃れたり」

「ああ、確かに盗賊と戦ったし、女王から逃げたのは覚えている。だが、おまえは知らない、知っているのはアリッサっていうやつだ」

「そう、だからわたしがそのアリッサ」

「ちがう、あいつは死んだ。どこの誰だか知らないが、あたしは眠いんだ。じゃあな」


 ピサリーは学園にもどろうと歩き出した。


「待って、あの、わたしと友達になってください」

「いやだ……だが、金をくれればなってやる」


 ピサリーはそう言い残すと学園へともどっていった。その背中をミレイザは見送った――。


 いっ……。指先に赤い血がにじんだ。ミレイザはそれを見て、クスっと笑った。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


次回のエピローグで最終話になります。

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