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50パーセントの守護ゾンビ  作者: おんぷがねと
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53. ミッドラビッドへ行く目的

「これなんかいいんじゃないんですか。こちらの商品は、5万ですが、2万にまけてさしあげますよ」

「いや……」

「では、こちらの商品はいかがでしょう。こちらは3万のところを1万にしますので」

「はあ、でもお金が」

「失礼ですが、おいくらほどお持ちなんですか?」

「ちょっと、それは……」

「そうですか、わかりました。特別にこの店で一番人気の商品を9割引きにしますので、いかがでしょう」

「お、おいくらですか?」

「そうですね、少々お待ちください」


 マギルナは店の奥から人気のある商品を持ってきた。それは色の統一性がなくツギハギだらけのワンピースだった。


「こちらでございます。こちらのお値段、普段なら5万リボンなんですが、5000リボンで譲りますよ」


 ミレイザは苦笑いを見せながら首をかしげる。そんな彼女の優柔不断なところを見て、ピサリーはにらみつけることしかできず、息をあらげてしまうのを必死に抑えた。


「どうですか? 今回かぎりですよ」

「はあ、そうですね……ちょっと待ってください」


 ミレイザは指輪にふれて残高を確認した。8800リボン入っている。それを見ると、いますすめられた服が買えてしまう。なにかを買わないとここから出してもらえそうもないと思ったミレイザは、しぶしぶと服を買うことに決めた。


「では、その服をください」

「あ! そうですか、まいどありがとうございます。あっそうそう、本日はオプションとして髪飾りなんかもあるんですがいかがですか? この服をお買い上げになったお客さまだけに、この髪飾りをつけさせてもらいます」


 明らかに宝石ではなく、ガラス細工のものを適当に細い鎖で縫いつけたものだった。


「この髪飾り、普段は8000リボンするんですが。この服をお買い上げになったお客さまだけに、800リボンでお値段をつけさせていただきます。いかかですか?」

「は、はあ」

「じつは本日かぎりなんですよ。お安くしますのは」

「わ、わかりました。それも買います」

「ありがとうございます。合計で5800リボンになります」


 ミレイザは指輪から5800リボンコイン取り出してマギルナに渡した。

 店を出るときドアを開けてピサリーが出たことを確認したあとミレイザがそのあとにつづいた。


「ありがとうございました」と店の中からマギルナの声が聞こた。


 ふたりは物陰に隠れるとピサリーは透明の魔法を解いた。それと同時にミレイザの服ももとにもどった。


「これだろ? おまえの服」


 ピサリーは疲れたように言いながら手渡した。ミレイザは自分の服を見て完全に直っていることにほほえみを見せた。


「ええ、ありがとう」

「まったく、なんであんなやつが売っているものを買ったりするんだ」

「買わないと、店から出させてもらえないような気がして」

「あーいうのは無視してさっさと店を出ればいいんだよ」

「でも、なんか悪いような気がして」

「ミレイザそれだ。それがおまえを苦しめている。もっと自分を威張れ」

「そんなことわたしにはできないわ」

「じゃあ、また誰かの口車に乗せられて物を買わされるだろうな」


 ミレイザは黙った。自分が欲しくないものを買わされるのは自分のせいだと思った。店員の口車に乗せられてしまい結局買ってしまう。断り切れないのだ。買わないと店員に悪いと思ってしまう自分がいる。


「帰るぞ」


 そう言ってピサリーはあくびをしながら歩き出した。ミレイザは急に母親がどうしているのかが気になり会いに行きたくなった。


「今日の予定はもうないの?」

「あ? 特にねーよ。おまえの服を取り返したろ」

「あの、明日ミッドラビッドに行きたいんだけど」

「ミッドラビッド? ああ、おまえの町か。べつにいいよ。あたしも明日はどうせ学園だし、しばらくは流星と護身の練習だろうからな」

「ありがとう」

「礼なんていちいちするな、ありがたいことをしているわけじゃないからな。しかし、おまえが追い返された町になんで行くんだ?」

「お母さんに会いに」

「おまえが会いに行っても仮面で顔が隠れているからわからないだろう……まさか! 仮面を取る気じゃないだろうな」

「ううん、姿を見たいの」

「すがた? あたしにはわからん気持ちだ」


 それから、ふたりは酒場により食事をしたあと宿屋へ向かった。いつもどおりピサリーはさっさと寝てしまった。こんな昼間から眠れるわけがないと思い、ミレイザは町を歩くことにした。


 なにも目的はないが、時間をつぶすため本屋へと向かった。


 本屋に来てみるとヨチリオとアヤリが本を読んでいた。立ちながらぺらぺらとページをめくっている。ミレイザは彼女たちに気づかれないように店を出ようとした。


「あ、アリッサさん」


 ヨチリオが笑顔で声をかけてきた。アヤリも無表情のような顔で視線を送っている。


「どうしたの? こんなところで」

「本を読みに来たんでしょ」


 ヨチリオの質問にアヤリが答えた。ミレイザはもう逃げることができずしぶしぶうなずいた。


「そうなんだ、アリッサさんはどんな本が好きなの?」

「あ、いやとくに、その……」

「あーとくにないかんじ?」

「ええ、それよりあなた方は」

「あたいはアヤリにつき合ってるんだ。本を読みたいって言ったから」

「そうなんですか、アヤリさんはどんな本が好きなんですか?」


 アヤリは読んでる本をパタリを閉じると、その本の表紙を見せてきた。そこに書かれていたのは『魔法なんて古い、これからの最新技術』というものだった。


「その本のどういったところがよかったんですか?」


 アヤリはぺらぺらとページをめくりながら話してきた。


「この本は魔法はもう古いと言っているわ。たしかにそうかもしれない。わたしたちが普段魔法を使ったりするけど、その魔法はいまの技術に使われているの。くわしいことはわからないけど、あらゆるものに魔法がついているわ。たとえばこのクロバーの指輪のようにね。この指輪には物が入れられる。食べ物もそう、しかもずっと腐らないで取って置ける。空間はとても広くたくさん物が入るわ」

「へえー」

「空間を広げる魔法。わたしはまだその魔法を覚えていないけど」

「わたしは魔法は使えないけど、使えたら楽しいでしょうね」


 それを聞いて、ヨチリオが話に割り込んできた。


「まあ、魔法が使えない人からすれば楽しそうに見えるかもしれないけど、いまは魔道具があるからなぁ、それさえ装備すればあたいたちの魔法に似たものが使えるから、だから、魔法もめずらしくわないよ」

「わたしにはすごいと思うけど」

「そうか、まあそう言ってくれるんならうれしいけど、刹那を使ったものなんて、物を瞬間移動させているのがやっとみたいだからな。人を一瞬で移動できるものが開発されたら、誰も冒険者なんかを雇ったりはしなくなるだろうな。町から町へ一瞬で移動できるんだからさ」

「そうね」

「まあ、なんにしてもあたいたちの強みは先生から魔法を教えてもらえることだからな、新しい魔法を覚えることができるってわけだ」

「ピサリーも新しい魔法を覚えるのに大変そうにしているわ」

「えっ!?」


 ヨチリオとアヤリはミレイザに驚いた顔を見せた。


「ああ、ピサリー本人に聞いたんだな。いま新しい魔法を覚えているって、それで大変だって」

「え? ええ」

「あたいはてっきり授業でものぞいていたのかと思ったよ」


「なあ」とヨチリオはアヤリに言った。アヤリはこくりとうなずくと、また本を読みはじめた。


「のぞいたりしてないよな?」

「ええ、のぞいてないわ」

「そうか、よかった。もしのぞいてたら先生の強力な魔法で追い出されるって話だからな。でも、見てみたかったなどんな魔法か……あっと、ごめんごめん、そういう意味じゃないよ」

「大丈夫、ピサリーに聞いただけだから」

「ふうん、で、ピサリーは?」

「宿屋で眠っているわ」

「ねてる?」

「ええ」

「そうか、じゃあさっきまで一緒だったんだな」

「ええ」

「仲がいいんだな。ピサリーと」

「まあ、いろいろと」

「そうかわかった。話しちゃってすまんな、本を読みに来たんだろ?」

「いやぁ、わたしちょっと急用を思い出したから、ここで」

「あーそうなんだ。じゃあまた」

「ええ」


 ミレイザはそそくさと店の外に出た。適当に歩きながらなにか失敗はしていないか考えた。ヨチリオとの会話で変なとこを言っていないか、間違ったことをしていないかなど、自分が下手に動けばなにかが崩れて、それが自分の正体へとつながってしまう。


 気をつけないと……。


 今日は宿屋にもどって寝たほうがいいと判断して帰ることにした。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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