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未来に繋がる過去物語

作者: 来季



 伊南県にある、“古森“がある餝崎市から、15㎞離れた鍵谷(かぎや)市の鶴芽(つるが)山の任務から戻るために、山を下りながら帰るついでに街に行って仲間(使用人)たちに、土産を買おうと考えていると、長い髪を、浅黄(あさぎ)色の(ひも)(まと)めた16才くらいの娘が、慌てて藪の中から鬼の声が、聞こえたと言ってきた。「早く帰っておいた方がいい」よっぽど、怖かったのだろう。言われると、走って山を下りて行った。近寄ってみると、鬼が、1人。報告では、10人。そのうちの、9人を、倒したから大丈夫だろうと油断して、別の事を考えていた自分の迂闊(うかつ)さを呪いたい。ふと鬼が気付いて、こちらを振り返る。血のように赤い瞳に、黒で書かれた鬼の階級、"有"と書かれた文字を、見て刀を抜く。しかし、鬼は、攻撃どころか、防御もしない。無防御だ。 おかしい、普通なら攻撃か防御をする。 ——何かの罠か?—— 攻撃された時、近くにいた場合、無事では済まない。下手したら、即死だ。迂闊な判断をして、怪我をするのも嫌だが…それよりも、仲間達と弟が心配する。後ろに飛んで、距離を取った俺を見てから有の鬼は問う。「妖狐よ。何故、我ら"鬼"に、刃を向ける?」正体が、ばれてる! と思ったが、気にしない。「…人と、他の妖を守る為に」それを聞いた鬼が、にやりと怪しく笑う。「人と妖を守るだけが、貴様の願いでは、なかろう」さっき、言った言葉は噓ではない。心の中で思っていた事を、言い当てられ、黙る棟煉に「貴様の真の願いは、何だ」さっき言った事が、偽りだと言うような、その言葉に腹が立ったが、表情を変えないよう意識しながら「それに答える前に、問うことがある。何故、そんな事を俺に聞く」「暗き過去…妹が鬼になり、そこから鬼狩りになると決めた貴様が、何と言うか知りたくてな」なぜ、知っている。妹・・・颯希(さつき)が、鬼になったのを知っているのは、父上と弟である裕だけだ。颯希が、この鬼に話したとは考えられにくい。可能性が、全くない訳ではないが… 棟煉が、そう考えている間、鬼は、見ていた。相手の考えている事が色や言葉で分かる能力、“覚り"で。底がみえぬ程の、"後悔の色"青色と、呪いがかかった者だけに、表れる黒い靄を・・・ 「鬼よ。問いに答えよう」はっきりとした声で、覚りから現実へ引き戻される。「嗚呼(ああ)、何だ」余りにも、酷い、呪い。一生背負わなければ、いや、一生かかっても降ろされる事は無いであろう呪い。鬼狩りにこんな感情になるなんぞ、鬼らしくない。そう思いながら答えを待つ。「人々が、鬼に恐れずに生活できる様な未来を目指している妖達の力になれるようにそれが、俺の願いだ」「それが、貴様の真の願いか」「そうだ」鬼狩りは、人が、鬼を恐れずに暮していける世を、創ろうとする妖たちの力になれる様に。その願いは、覚りで見なくとも本当に願っているのが分かった。「そうか。…その貴様の願いを、邪魔する、俺を斬れ」そう言って斬られた時、自分の血が目に入らないように目を瞑ったが、痛みはなくその代わり刀を鞘に収める音がした。目の前に、鬼がいるというのに、何故斬らない。目を開いて、そう問うと「鬼でない者を、殺せるか」と少し驚いたような表情をしながら言われ、「どういう意味だ」鬼でない者、その意味が分からずに聞く。「そのままの意味だ。猫族だったんだな」"猫族"その言葉で固まる。いや、待て俺は、もう猫族では無い。自分の負の感情に、吞まれて鬼となったはずだった。様々な疑問が出たが、最後に答えに辿り着く。「ありがとよ」そうつぶやいた声は、聞こえなかったらしく「何だ?」と聞かれたが、さあなと何も言っていないふりをした。言えるか、そんな事。争いに負け、仲間を失った罪の意識に悩まされ、絶望して鬼になったが、お前のお陰で、手遅れになる前に、猫族に戻れたなんて。「名前なんて、言うんだ」「風音(かざね) 蒼大(そうた)・・・貴様の名前は」「鬼の時と、あまり変わらないな…。火焔 棟煉だ。よろしく」「よろしくって・・・俺は、鬼にだったのにいいのか?」「別に、人を喰っていないんだろう」「そうだが」頭の回転が速いなと思う。そう、鬼の中でも上の階級"有"の文字が目に書かれていたのは、化けていただけだ。そういえば、寝る場所がなかったのに気付く。「…すまないけど、今日一晩泊めてくれないか」別に、野良猫のように外で寝たって良いが、季節が問題だ。今は夏では、なく冬だ。流石に冬は、猫でも寒い。「いいけど、仲間に土産を買うから街によるけどいいな」「嗚呼」うなずいた蒼大と棟煉は、街へ行くために山を下りて行った。 この二人は、親友となり、滅の鬼を倒す最後の戦いで大活躍することとなる。

 そして、娘は3年後、祭りの日に棟煉と出会い、鬼狩りを目指すことになる。


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