表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Diva Driver ~誰ガ為之歌~  作者: 明治サブ(SUB)
第肆楽章「歌を統べる者」
47/53

捌「死闘」

》同日 五時十五分 酒泉(しゅせん)・郊外 ――渡瀬(わたせ)歌子(うたこ)


「ダバラルラァーーーー~~ッ!!」


 皇帝の歌唱。

 途端、歌子とフレデリカの足元から猛烈な竜巻が立ち上り、二人を紙屑の如く舞い上げる。


(十一年前――戦場デビューした皇帝が、露西亜(ロシア)の将兵を巻き上げたって云う、あの!)


 対する歌子は余裕があった。

 何しろ今や己の思考は何十倍にも引き伸ばされ、非道(ひど)くゆっくりと流れる時間の中では、塵芥の一粒々々に至るまでもの全てが把握出来るのだ。

 聖歌隊たちが大きく息を吸い込むのを知覚する。

 彼らの歌唱が始まり、膨大な量の音子(ナノマシヰン)が動き、見上げると、上空に極めて局所的な積乱雲が生成されつつある。

 歌子は巨大な磁石を生成し、プラス方向を雲に向けて射出する。

 引き伸ばされた意識の中での数瞬後、雲から眩い稲妻が落ちてきて、磁石に直撃した。


(落雷攻撃! 初手から飛ばすやないの!)


 自信が笑っていることに、果たして歌子は気づいているやらいないやら。


「フレディ、戦える!?」


「ははッ、誰に向かって云っているんだい?」


 隣では、フレデリカがしっかりと浮遊している。


「せやったな」


 フレデリカとともに戦える自分が誇らしい。


「皇帝は、ウチがやる」


「やれるのかい?」


「誰に向かって云うとるんや?」


「そうだったね」


「悪いけど、フレディよりウチのが勝ちの目あるやろ」


「云って呉れる」


 云いながらも、フレデリカの笑顔は晴れやかだ。


「フレディこそ、五人も相手に大丈夫?」


「僕に二度も云わせる気?」


「せやったな!」


 歌子とフレデリカ。

 二人の天才が、それぞれの戦争を始める。



   ♪   ♪   ♪



》同日 五時十七分 酒泉(しゅせん)・郊外 ――フレドリク・フレデリカ《


「ラァーーーー~~ッ!!」


 歌子とヱリスの、高く高く天まで伸びる極上のソプラノ。

 途端、真っ白な霧が眼下一面に立ち込める。


「フレディ」


「うん?」


 呼び掛けに応じて顔を向けてみれば、いきなり歌子にキスされた!

 唾を入れられ、無理やり嚥下させられる。


「ぷはっ、ちょちょちょっ!?」


「静かに詠唱してみ」


 が、どうやらロマンチックな雰囲気では無いらしい。

 ――当然だ。今は戦闘中なのだから。


「うん。――~♪」


 鼻歌を歌うと、両目がぽうっと熱くなった。


「五人の位置。見えるやろ?」


「おおっ!?」


 眼下に、聖歌隊五人の姿がぼんやりと見える。


「健闘を」


「ここまで支援してもらって、負けるわけにはいかないさ」


 原理は分からないが、歌子のことだ。

 またぞろ音子(ナノマシヰン)でも流し込まれたのだろう。体も軽い。

 フレドリク・フレデリカは静かな鼻歌によって飛翔する。

 五人のうち、愚かにも単独行動をしていた同僚クリスティン・クリスティナに背後から忍び寄り、


「――ラァッ!!」


 鎌鼬(かまいたち)を載せた刀身を振るい、その頭部を分断せしめる。

 同僚愛? 罪悪感? そんなもの、在りはしない。

 強いて云えば同じ村出身のアレクに対する感傷が多少あるくらいだろうか。


「マァーーーー~~ッ!!」


 その時、アレクによる広域索敵歌唱が聴こえて来た。


「――ッ! クリスが()られた!」


「んなこたァどうだっていい! フレディの位置は!?」


 取り乱した様子のアレクとヱミヰリアが云い争っている間に四人の集団に襲い掛かるも、


「アァーーーー~~ッ!!」


 風の歌唱が得意なアマリオ・アマーリヱによって、霧を散らされた。


「来ている! 十二時方向ッ!!」


 その、アマリオ・アマーリヱへ猛然と斬り掛かるフレデリカの前に、土の歌唱が得意なカルロス・カルラが踊り出る。


「パラリラァッ!!」


 脇差のような短い拡声器(スピヰカー)を左手に握り締める彼は、虚空から太刀を引き抜く――違う、この一瞬で生成して見せたのだ。


「――シィッ!!」


 鋭い吐息とともに脳内速度を十倍に引き伸ばしたフレドリク・フレデリカは、強化した筋肉で以てカルロス・カルラへ無数の剣戟を浴びせ掛ける。

 が、その全てをカルロス・カルラに受け切られてしまう。

 剣戟はほんの数秒のことだったが、その頃にはもう、ヱミヰリア、アマリオ・アマーリヱ、アレクの三人が態勢を整えていた。

 戦闘能力の低いアレクが後ろに下がり、ヱミヰリア、アマリオ・アマーリヱがこちらを取り囲むように陣取っている。


「ライラライラライラァーーーー~~ッ!!」


 指向性を持たず、ただただ破壊の限りを尽くさんとするヱミヰリアの火炎を、


「アァーーーー~~ッ!!」


 アマリオ・アマーリヱが風で道筋を作り、こちらへ向けて殺到せしめる。


「ラァッ!!」


 が、フレドリク・フレデリカは短い歌唱によって水の本流を生み出し、炎を相殺する。

 同じ聖歌隊とは云っても、こちらは歌唱の本家本元・ヱリスから直々に音子(ナノマシヰン)を注ぎ込まれているのである。

 体内を巡る音子(ナノマシヰン)量の桁が違うのだ。


 怪物たちの死闘(ダンス)は続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ