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Diva Driver ~誰ガ為之歌~  作者: 明治サブ(SUB)
第肆楽章「歌を統べる者」
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漆「十一年振りの再会」

》『聖歌隊』トップ6の能力(ステヱタス)


陸喰い(リヴァヰアサン)のフレドリク・フレデリカ

 得意属性・水(他も得意だが、強いて云うならば)。

 威力S、制御S、体術S。

 何もかもを無差別に押し流す。


河呑み(ベヒヰモス)のヱミヰル・ヱミヰリア

 得意属性・火。

 威力S、制御C、体術C。

 何もかもを無差別に燃やし尽くす。


北風(ボレアス)のアマリオ・アマーリヱ

 得意属性・風。

 威力B、制御S、体術C。

 風による遠距離攻撃や、ヱミヰルの火炎の誘導が得意。


剣闘士(グラデヰヱヰター)のカルロス・カルラ

 得意属性・土。

 威力A、制御A、体術S。

 鋭い刀剣を生成する。強化した肉体による近接戦闘が得意。


♪覗き見のアレクサンドル・アレクサンドラ

 得意属性・全。

 威力D、制御S、体術D。

 索敵が得意。気が弱い。フレドリクの幼馴染。


収納空間(アイテムボックス)のクリスティン・クリスティナ

 得意属性・空間。

 威力D、制御S、体術D。

 亜空間に物品を収納し、好きな時に好きな場所で取り出す能力が使える。

 兵站や陣地構築を担当。

 作者の某作主人公の生まれ変わり(正確には、あっちがこっちの生まれ変わり)。

》一九二八年一月二十日 五時十三分 酒泉(しゅせん)・郊外 ――渡瀬(わたせ)歌子(うたこ)


 ……全てを、思い出した。

 誰が悪いわけでもない、誰も彼もが自身や愛する誰かを生き永らえさせようと、必死にもがいてきた物語を。


 十一年の年月の中で、ѨЛѮ(ウチ)はすっかり歌子(ウチ)になっていた。

 この星の原住民の生き死にになんて興味は無かったはずなのに、今はこの戦争を止めたくて仕様がない。


「ウチは歌子や。ウチの歌は、ウチの為にある。一緒に歌うで、歌子」


 返事は無い。無いが、歌子もきっと聞いて呉れていると信じている。

 ――と、そこまで考えてから、


「――アアアッ!!」


 思い出した。


「フレディはッ!?」


 一緒に吹き飛ばされたであろう、拡声器(スピヰカー)も持たずに空に投げ出されたであろう彼女の居場所を探す為に、


「ラァ~ッ!」


 短く歌唱する。コツを思い出してみれば、あとは簡単だった。

 すぐにも脳裏に当たり一円の三次元の地図が浮かび上がり、全ての生命反応を(つまび)らかにせしめる。


「嗚呼っ、フレディ!」


 果たしてここから数百メヱトル離れた地点に、両足を砕かれながらも何とか生きているフレデリカを発見する。


(流石はフレディ!)


 拡声器(スピヰカー)も無しに、着地に成功したと云うことである。


「――ラァー~ッ!」


 再び短く歌唱すると、目の前の風景が切り替わる。

 皇帝も使っていた次元航行術――瞬間移動と云うやつだ。


「フレディッ!!」


 声を歌唱に変えて周囲の砂埃を晴らしてみれば、


「う……ぁ……歌子……?」


 満身創痍のフレデリカが地面に這いつくばっていた。


「ラァーーーー~~ッ!!」


 即座に彼女の状態を探査し、周囲の音子(ナノマシヰン)に命じて彼女の脳から痛覚を遮断し、あり得ない方向に曲がっていた彼女の足をあるべき方向に正し、骨を繋ぎ、神経を繋ぎ、筋肉を繋ぎ、皮膚を再生させる。

 失われた血液は音子(ナノマシヰン)で補う。

 ついでにフレデリカの顔の傷と、自身の肩の傷も治した。

 最後に彼女の痛覚を戻してやると、


「な、なんてこと――…」


 フレデリカが言葉を失っている。


「えへへ」


 天才・フレデリカをして驚嘆せしめることが出来たのが、嬉しくも気恥しい。


「まさか歌子、思い出したのかい!?」


「うん」


 思い出した。

 ヱリスとしての記憶を、歌子としての過去を。


「それに歌子、その髪と、瞳――」


「ん?」


 云われて見てみれば、己の髪が蒼白く光り輝いている。

 鏡を生成して見てみれば、己の瞳もまた、蒼白く輝いている。


「今のウチは、ヱリスであり歌子や。すっかり(おそ)ぅなってしもたけど……迎えに来たで! お帰り、フレディ!!」


「嗚呼……」


 フレデリカが滂沱の涙を流す。


「ただいま……ただいまッ、歌子!!」



   ♪   ♪   ♪



》一月二十日 五時十四分 酒泉(しゅせん)・郊外 ――フレドリク・フレデリカ《


 瞬間移動で連れていかれた先は大天使――いや、『船』だとヱリスは云っていたか――の前だ。


拡声器(スピヰカー)も無しに瞬間移動とは……まァ考えても見れば、この星で歌子以上に歌唱に長けた人もいないわけだけどさ」


「皇帝は?」


「婆はDiva Driverを使っているから。――あれ? ウタコも持ってたよね?」


「あんなん、ただの量産品やもん。まァウチらが出星する時点では最新(モデル)やったけど」


「な、何てこと……」


 驚いて見せつつも、フレドリク・フレデリカは歌子のことが愛おしくて堪らない。

 自分が愛した女の子、初恋の相手――二人のウタコ。

 今、目の前にいる彼女はウタコでもありヱリスでもあるように見えるし、事実彼女もそう云った。

 詳しい話を聞いてみたいが、その余裕は無さそうだ。

 ――何故ならば。






「どう云うことよ……どう云うことよ、これは!?」






 ヒステリックな声に振り向いてみれば、フリヰデリケ四世(ばばあ)が砂塗れの姿でそこにいた。

 背後には、五人の聖歌隊たちが侍っている。

 婆は苛立たし気に髪を振り乱し、


「どうして大天使が私に従わないのッ!?」


「そりゃァ」


 歌子が――惑星フロム、と云うところからやって来たと過去に云っていた、二人分の魂を持つ少女が、困ったように微笑む。


「この子は、ウチらを守る為の存在やし。――いや、もう守るべきはウチしか残ってへんのんか……」


 歌子が溜息をつきながら、その溜息を歌唱に変えて、両腕を左右の空間に突き出す。

 果たして両手の手首から先が消えて、二振りの剣を掴んだ状態で再び現れた。

 ヱリスが得意としていた、亜空間に物を収納する術だ。

 一本は、歌子が使っていた渡瀬式の型落ち品。

 もう一本は、自分が使っていたフリヰデリケ式の改造品――皇帝の意志で無効化されないようになっている一品。

 その一振りを、歌子がこちらに投げ渡して呉れる。


「この星に、王は二人も要らないのよッ!!」


 婆がDiva Driverを振り上げる。






 最後の戦いが、始まる。

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