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Diva Driver ~誰ガ為之歌~  作者: 明治サブ(SUB)
第弐楽章「君や何処か屍山血河」
25/53

参「Diva Driver」

 目を開く。


(……あれ? 私、今、何していたっけ?)


 千歳は首を傾げる。

 自分は渡瀬(げん)()(ろう)氏の工房の地下にいて、目の前には茫洋とした様子の歌子が立っている。


「歌子?」


「嗚呼……」歌子が生返事をした。「千歳……何でおるん?」


「そりゃア貴女、急に病室からいなくなるんだもの」


「御免」


「それで、ソレは何?」


 テヱブルの上に置いてあるケヱス。その中にあるのは――


「――拡声器(スピヰカー)ッ!?」


 大振りの剣が、一本。


「それも、見たことのない型式(タヰプ)……フリヰデリケ式でも渡瀬式でもない。いえ、渡瀬式に似ているわ。けどこれは――」


「父ちゃんの形見、なんやって」


 呟くように、歌子が云った。


「――ヱ?」


「父ちゃんがウチを連れてここに来て、そん時にこれを持ってたって、じっちゃんが」


「お父様は消音師(サヰレンサ)なの?」


「ちゃう。仏蘭西(フランス)で傭兵やっとってんて」


「…………」


「それで、仏蘭西人の母ちゃんとの間にウチが出来て、でも戦争のぐちゃぐちゃで母ちゃんが死んでもて……父ちゃんも非道(ひど)い怪我をして。ウチのことを心配して呉れた父ちゃんが、ウチをここまで連れて来て呉れて、その後すぐに死んでもぅたんやって」


 歌子が泣き出しそうな顔をしている。


「ウチ、父ちゃんと母ちゃんが生きてるとこ、全然覚えてへんねん。薄情な娘やんなぁ」


「そんなこと――…」


 歌子には五、六年より以前の記憶がないのだ。

 きっと、そうならざるを得ないほどに、辛く過酷な毎日だったのだろう。

 ……歌子のことを痛ましく思う気持ちが千歳にはある。あるのだが、千歳の心は別のモノに囚われていた。


「ねぇ……歌子、その拡声器(スピヰカー)、触ってみても善いかしら?」


 初めて見る型式(タヰプ)拡声器(スピヰカー)。未知の技術(テクノロジヰ)に対する渇望。


「あはは。千歳やったら絶対喰いつく(おも)てたわ。今まで隠してて御免な」


 歌子がケヱスの真ん前を千歳に譲る。


「善いわよ、お父様の形見を(いじく)られるのは(いや)だものね」


「ちゃうねん」


「ヱ?」


「これな、じっちゃんですら解析リバースヱンジニアリング出来んかった一振(ひとふ)りやねん。せやから、いくら千歳でもコレに時間割くんは無駄やと思た。渡瀬式の開発には、かえって邪魔になる思たから、隠しとった」


「…………へぇ?」


 (いた)矜持(プラヰド)を刺激された。


「云って呉れるじゃない?」


 拡声器(スピヰカー)に手を伸ばすと、


「あっ、触れる時はもっとゆっくり――」


「ヱ?」


 刀身に触れた。


「――痛っ!?」


 途端、指先に鋭い痛み。


「な、何よコレ……」


 この痛みは知っている。

 フレデリカや歌子が歌唱によって極限まで音子を活性化させた時に感じる、弾けるような痛み。

 見れば部屋中で、蒼い光がパチパチと踊っている。


「この剣な、ほとんどが音子で出来てんねん」


「ヱヱヱッ!? 物質化した音子が、歌唱もなしに固定化されているの!?」


「こんなん、人類の技術で再現出来るとは思えへん」


「そんな、それって、まさか――…」


「父ちゃんが、コレを何処から持ってきたんかは知らへん。じっちゃんも知らん云うとった。けど、父ちゃんは仏蘭西から羅馬(ローマ)に行って、そこから日本に来たそうやねん」


羅馬(ローマ)……大天使……」拡声器(スピヰカー)を間近で眺める。「何、この文字……アルファベットじゃないし。多分、地球には存在しない文字――」


 歌子が拡声器(スピヰカー)の束に刻まれた文字を指先で(なぞ)って、






歌ヲ(Diva )統ベル者(Driver)






 と、呟いた。

 タイトル回収です。

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