処刑の日
とうとうこの日が来たのね……
目の前には鉄格子。
その鉄格子が外の世界の、繋がりを阻む。
牢屋に入れられて何年経ったのだろうか。
外の世界に行きたくて仕方がなかった。
「囚人248号、行くぞ。」
腕は後ろで組まされ、麻のロープで腕を縛られる。
どこに向かうか分かっていた。
牢屋にいれられた時からどうなるかわかっていた。
ーー処刑。
いくら冤罪だと
私はやっていないと言っても
誰も耳を貸してくれなかった。
愛しいあの人にも…。
どこでとう歯車が狂ったの?
どこで私は間違えたの?
考えても、もう無駄ね。
何年も光を浴びてなかったから、外の光はとても眩しかった。
連れられていく広場には大勢の人が集まっていた。
そこには断頭台があった。
あぁ、私の首はそこで落ちるのね。
断頭台の近くには私の愛しい人がいた。
初めて真っ直ぐに見てくれてる。
それが堪らなく嬉しいわ。
死ぬ前に愛しい人に会えたのだから。
「断頭台の準備を始めろ。」
「囚人248号。我が国の王妃を毒殺をしようとした罪でお前を処刑する。」
愛しい人に守られる形であの女がいた。
「私は、そのようなことしておりません。無実ですわ。」
愛しい人の愛しい人を殺そうとするなんてしませんわ。
愛しい人の悲しむ顔は見たくないですもの。
婚約破棄だって喜んで受け入れました。
受け入れると愛しい人の喜ぶ姿が見れるんですもの。
「囚人248号…いや、ソフィア。」
愛しい人が私の名前を呼んでくれるだけで、満足ですわ。
「陛下、お久しぶりにございます。」
「あぁ、10年ぶりだな。」
10年も経っていたのね…。
「10年も経っていたのですね。最後に陛下のお顔を見れただけで満足ですわ。」
私は断頭台にうつ伏せに寝かされる形になり、
陛下の端正な顔立ちがみえなくなりました。
「…すまない。」
陛下の声はとても小さかった。
なぜ陛下が謝るのでしょう?
「陛下、お顔が見えませんが…私は陛下のことを愛してます。これからも……」
着々と首が落とされる準備が始まる。
「…俺も愛していたよ、ソフィア」
陛下の消え入りそうな声は、どこかないているようでした。
私はそれだけで満足です。
陛下…私はとても幸せでした。
彼女の首は落とされた。
涙をこらえている男性と
その男性の隣にいる女性は顔を手で覆っていた。
だが、覆っていた隙間からニヤリと笑っていた。
陛下、私は幸せでした。