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幸せな僕ら  作者: 相上雄
第一章
2/2

少年と少女

前回のあらすじ:少年が喰われたと思ってたら生きてて、少女はとっても驚いたよ。


 少女はとても混乱していた。ダイアウルフに喰われた腕や足がなぜあるのか。そもそもどうして生きているのか。そんな事を考えている少女をよそに、少年は明るい声で言う。


「いやぁー、もう少しで死ぬところでしたよ。本当にありがとう。」

「どうして生きてるの?ダイアウルフに食べられたんじゃ・・・」

「どうしてかって?それは僕が・・・」

「GUAAAAAAAA!」


少年が何かを言いかけたが、どこからかダイアウルフの遠吠えがきこえてきた。更には、足音がどんどん近づいてくる。


「ヤバイ、逃げるぞ!」


少年はそういうと少女とダイアウルフの死骸を担ぎ、全力で走り出した。その力とスピードは、人とは思えないものだった。40キロはありそうな少女と、80キロはくだらない亡骸を軽々と持ち上げた。そのうえ、それらを持ったまま大の大人顔負けの走りをしているからだ。少女はそのことに驚きつつも、今は自分の命を守るために迫ってきているダイアウルフに集中する。


「アイツらをどうにかしてくれ!町の近くまで行けばアイツらは追ってこれない!」

「わかった。どうにかしてみる。」

「あぁ、頼んだぞ。」


少女はダイアウルフを足止めするために、持っていた袋から大量の小石を出した。そしてそれに魔力を込め、すぐ後ろのダイアウルフに投げつける。すると、小石は小さな爆発を起こした。その爆発はダイアウルフの顔のすぐ近くだったため、目を一時的使えなくした。


「一匹やったよ!」

「よくやった!」


少女は更に小石に魔力を込め投げる。しかしさっきので学んだダイアウルフは、その小石を軽々と避けていく。


「全然あたらない。」

「クソッ、あと一キロも有んのに。」

「どれ位かかるの?」

「あと三分くらいだ。」


それを聞いた少女は持っている小石すべてに魔力を込め、辺りにばらまいた。それにはさすがのダイアウルフも躱せないようで、ダイアウルフたちは目をやられ、その場にうずくまった。


「全員やったよ!」

「何とか生き延びたってことか。」


少女は嬉しそうに言い、少年は疲れ切った顔で言った。少年はそのまま走り、ついに町が見えた。しかし、少年は走るのをやめた。少女はなぜ止まったのかわからなかったが、少年の次の一言で理解した。


「お互いに知られたらまずいもんを持ってるようだし、少し話をしないか?」

「いいわよ。だけど奴らがまた追ってくるんじゃないの?」

「大丈夫。魔力の無いところで奴らは生きていけない。人が住んでるところは魔力がほとんど無いからな。じゃあ、そこで話をしよう。」


そうして二人は近くの木の根元に腰かける。そしてお互いのことについて話し合い始めた。


「まずは僕から言おう。僕はウェスタだ。君が見た通り再生する能力をもってる。腕が無くなっても生えてくる便利な能力さ。」

「なるほどね。それは分かったけど、なんであんな怪力がでるの?」

「あぁ、それはこの能力の副産物みたいなもんだ。常に再生するから力が百パーセントだせるんだ。」

「そうなんだ。」

「次は君だ。」

「私はプラナ。無機質なものを爆発させることができる能力よ。」

「僕よりも使い勝手が良さそうでいいなぁ。僕のは人前で傷を負うだけでばれちゃうからさぁ。」

「こんなものできれば捨てたいわよ・・・」


そう言うプラナはとても悲しそうな表情を浮かべていた。

この世界の人々は特別な力を持たない。だが時々何か能力を持って生まれてくる人が存在する。それこそがウェスタとプラナなのだ。特別な力は魔力を消費して発動できる。だから人々には二人のような力を持つ存在はまるで魔物のように見られる。そのため能力を持つことがばれてしまうと、ひどい迫害を受けることになるのだ。


「話は変わるけど、ダイアウルフから逃げるときどちらか片方だけだったら死んでたと思うし、一人で魔物を狩るのには無理がある。そう思わないか?」

「何が言いたいの?」

「まぁ、つまりだなぁ、能力を持つ者同士、僕と手を組まないか。」


ウェスタがとても真面目な表情でそう提案すると、プラナは考えるような仕草をした。そしてしばしの静寂の後プラナが口を開いた。


「いいわよ。」

「いい返事を聞けてよかった。これからよろしく。」

「こちらこそよろしくね。」


そう言うとウェスタは手を差し出した。それに答えるようにプラナも手を前に出し、二人は握手を交わした。

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