出会い
木が生い茂った森の中である少年は全力で走っていた。その少年は茶髪で体を使う仕事をしているのだと思わせる程には筋肉が付いていた。それに、背中には少年の体の半分以上覆うほどの大盾を背負っている。だから少年は戦いを生業としていることが想像に容易いだろう。だがそれにしては、少年の体には傷が一つも見当たらなかった。そして、なぜ全力で走っているかというと少年の後ろには、少年という獲物を狙う魔物の群れがいるからだ。
「GUAAAAAAAAAAAA!」
「クソッいつまで追ってくるつもりだよ!」
少年は焦った様子で悪態をついているが、その間にも少年と魔物達との距離は、どんどん縮まっていく。魔物達は狩りを楽しんでいるかのようだった。そして、ついに狼のような魔物は少年に追いつき、少年目掛けて飛び掛かった。
「ウアアアァーーー!」
辺りに少年の叫び声が響く。魔物は少年の右腕に嚙みつき、そしてそのまま強力な力で噛み千切った。少年が悲鳴をあげようとするが、あげる間もなく後続の魔物達が次々と嚙みつき、少年は左腕、太もも、脇腹そして首筋を噛み千切られた。魔物達は美味しそうに狩ったばかりの新鮮な肉を喰らう。誰の目から見ても、もう助からないほどのケガを負ったのは明らかだった。そしてその様子を、一人の少女が見ていた。
ある少女が森の中を歩いていた。その少女は長い銀色の髪で、あまり状態が良さそうではない弓を持っていた。その少女はお金を稼ぐために魔物を狩りに森に来ていた。この辺りに生息している魔物は狼のような見た目をしていて、ダイアウルフと呼ばれている。そのダイアウルフは4、5匹程度の群れで過ごしているため、狩るときは十数人がかりでする。そのため一匹当たり二十万タレントもするのだ。そこら辺の人達は一日働いて一万タレントなので、どれだけ高いかわかるだろう。体を張る代わりに、たくさんのお金が手に入るのだ。どうしてもお金が欲しい少女はたったの一人で来ていたのだった。
「ハァ・・・全然いないな、魔物」
少女は半日も探しまわっても、魔物が見つからずため息をついていた。少女はダイアウルフを見つけるため、更に森の奥深くへと進んでいった。すると何かが聞こえ、少女が耳を澄ますと何かの叫び声が聞えてきた。そしてその声がどんどん近くなり、その叫び声がダイアウルフのものだということに気付いた。少女は反射的に近くの岩の裏にかくれ、様子を窺った。すると一人の少年が走ってきて、その瞬間にダイアウルフは少年に飛び掛かり、少年の左腕を噛み千切った。そして少年はダイアウルフに喰われた。
「ヒィッ」
一瞬声が出てしまったが、急いで自分の口を押えた。少女はあの少年のようになるまいと死ぬ気で息を潜め、ダイアウルフがどこかに行くのを待ち続けた。しばらくそうしていると、遠ざかる足音が聞こえた。ダイアウルフがいなくなったと思い少年が襲われていたところを見てみると、まだ一匹だけ少年の体を喰らっているのが見えた。少女はこの状態をチャンスだと思い、持っている弓矢を構えた。そして弓に矢をつがえ、矢じりに魔力を込めてダイアウルフに向けて放った。矢はダイアウルフの首元に刺さったが、蚊に刺されたとでも言わんばかりに涼しい顔をしていた。だがその瞬間にダイアウルフの首元が爆散し、絶命した。
「やった!倒した!」
そう言うと少女はダイアウルフの亡骸の近くに駆け寄った。少女はそこで驚愕した。なぜなら生きていたからだ、少年が。しかも、喰われたはずの腕や足がそこにあったのだ。
「助けてくれてありがとう。」
少女が唖然としていると、少年はそう言って立ち上がった。少女は戸惑いながらも
「ど、どういたしまして。」
と返した。
これが二人の出会いだった。
初めまして。初投稿なのでダメなところがあると思いますが楽しんでくれれば幸いです。




