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4 王国初の『魔女』

デスティニー。

「ルーナのお父様、これは悪魔でこの二人から聞いた話に基づく可能性の話なのですが...ルーナは『魔女』かもしれません。」


 魔女...?


 ルーカスの口からそれを聞いたお父様は、急に真面目な顔になった。普段生活していてこんな顔をするのは見たことがない。


「ルーカス君、それは...どういうことかな?」

「クリストとカインによると、ルーナは僕とアークスの体を光で包み込み、もう助からないだろうという傷を完治させたようです。また、近づいてきた盗賊に対して突風を起こし、吹き飛ばしたとも言っています。その二つのことから考えると、ルーナは普通の人間にはない力を持った『魔女』なのではないかと。」


「そうか...。ルーナが魔女か...。」


 お父様の声は真面目だった。魔女であることはいけないことで、恐れられているのだろうか。

 私がそう思って落ち込んでいると、お父様は急に声を明るくしていった。


「すごいじゃないか!さすがルーナだ!愛しい娘が魔女なんて、私も誇りでしかないぞ!」

「へ...?」

「へ?じゃないよルーナ。『魔女』っていうのは、人間には使えない不思議な力が使える女性のことを言うんだけど、現存する資料を見ると数百年に一度しか現れないみたいなんだ。実際、最近魔女が現れたのは、同じオスラン大陸のザスト帝国で、400年前みたいなんだ。」

「よ、よよよ400年前!?」

「そう。国の中だけに限らず、大陸全土を含めても数百年に一度しか現れない魔女は、どの国もものすごーく必要としているんだ。そして、自分自身や、親族が魔女であることはものすごい誇らしいことなんだよ。」


「ルーナはそんなにすごいのか!!!」

 アークスが気楽そうに言い、隣でクリストとカインも頷いている。

 そう簡単に「すごい」の一言で表せることじゃないだろっ!


 もう一度お父様が口を開いた。

「ルーカス君の言うことは分かった。ルーナ、その時したことを今一度やってみることはできないか?」

「や、やってみます...。」


 それから私は、あの時のように手に力を込める。実際私も、あの時は何かの奇跡が起きただけで、運が良かっただけだと思ってる。ダメもとで力を込めてみた。


 やっぱり何も起きないよね......うん?


 私は目を見開いた。


 驚くことに、前に出した手の周りが光り輝き、あたりを照らしていたのだ。加える力を強くしてみると、徐々に付近に風が吹き始め、最終的には小さな竜巻のようなものができていた。すると急に温かくなったと思ったら、小さな炎が出てきて、手が凍り付いた。


「ど、どうなってるの...。」

「なんだこれは。こんなことは初めてだ...。」

「さすがルーナ!」


 その様子を見つめていたクリストがお父様に提案をした。


「オットレイ伯爵、ルーナについては私から陛下にお話しさせていただきます。陛下も魔女がこの国に現れたとなればお喜びになるでしょう。ほぼ確実ですが、まだルーナが魔法を使えるとは決まっていませんし。ルーナが国に縛り付けられないように説得してみますから。」

「王太子殿下、ありがとうございます。ほら、ルーナも。」

「クリストありがとう。」


 別に私に利があるとは思わないし、国に目を付けられちゃうのも嫌なんだけど、、、

 せっかくクリストが言ってくれてるんだからね。


「こんな時間ですが、今から向かいますか。」

「今からですか!?」

「はい。今からです。『善は急げ』と言いますしね。どっちにしろ、馬車と護衛が駄目になってしまったので、オットレイ伯爵にご迷惑になると思いますし。」

「ルーナ、早くいこ!」


 さすがに今からはやりすぎな感じがするけど、国王陛下も王太子殿下の話ならすぐに聞いてくれるんだろうな。


「わかったわ。」

「一応アークスとルーカスも現場に居合わせた者として来てもらおうかな。」

「よっしゃ!俺一回行ってみたかったんだよな。」

「でも、ご無礼を働いちゃうかもしれないし...。」

「大丈夫だルーカス。安心しろ。   話さなければいい!」


 いやなんでだよ。それはそうだけども。



 それから私たち子ども5人とおじさん(お兄さん)1人は、フィオーレ家の馬車に乗り、王都の中央に位置する王城へと向かった。



 王城ではクリストとカインの帰りが遅いため少し騒ぎになっていたようで、クリストが声をかけたときには門の警備をしている衛兵が、本当に慌てた声をしていた。

「クリスト様、それにカイン様も、大丈夫でしたか?衛兵づてに聞いた話ですが、国王陛下もものすごく心配なさっているようですよ。」


「心配かけちゃってごめんね!ばいば~い!」

 窓から元気に手を振ってるけど、カイン君ことを甘く見すぎでは。私でもわかります。もう少し自分の身の上を考えれるようにならないとね。


 王城の建物内に入ってからも、通り過ぎる人に毎回のように声をかけられ、全員二人の無事を安心しているようだった。


「クリスト!カイン!無事だったか!?よかったぁ~。」

 この口ぶりで、この国の国王陛下です。本当に若いな~。二人と同じきれいな銀髪。

「オットレイ伯爵、私の息子たちを守ってくれてありがとう。」

「もったいなきお言葉でございます。」

 さすがのお父様も国王陛下の前ではペコペコしてるね。

「それよりお父様、もっと大事な話があるんだけど...。」

「クリスト?どうしたんだ?大切な話って。」

「実は、そこにいるルーナちゃんのことなんだ。ルーカス、お父様に説明お願いできる?」

「わかった。僭越ながら国王陛下、このルーカス・フォン・リッチモンドが説明させていただきます。」

「リッチモンドっていうことは、あの侯爵家の息子か。」

「はい。」


 それから、ルーカスは私たちに起きた出来事を終始話した。

 途中、盗賊が来た時の話なんかは、泣いて息子たちの無事を喜んでいた。


 そして...

「話は分かった。ルーナ嬢には申し訳ないんだけど、今ここで見せてくれることはできないかな?」

「わかりました国王陛下。」


 なんやかんやこれで三回目である。少し慣れてきたところはあった。何をしたら何が出てくるかは一切わからないが。今回も適当に雷が出てきたり氷ができたりした。


「すばらしい!これは本物だ!君がこの国初の魔女なんだな!」

 そこまで言われると少し恥ずかしい気がするなあ...。

「本来なら今すぐに国民に発表して喜びを分かち合いたいところなんだが...それでは君も大変だろう。まだ五歳だ。」


 この人、私の身になって考えてくれてるんだ。私がまだこんなに若いのに国民に注目されるのはプレッシャーだし、もしかしたら他国の人に襲われることもあるかもしれないと思って。


「そうですね...。」

「でもだからと言って国民に言わないのもいけないことだからね。いつかは経験してもらうことになるよ。そうだな...18歳になって学園を卒業した後なんかはどうかな?」

「その時までいわないでおいていただけるんですか?」

「もちろん。このことはここにいる私達だけの秘密にしよう。国王の名に懸けて約束する。」

「ありがとうございます!」


「よかったなルーナ!」

「うん!」


「もう夜遅い。そろそろお開きとしようか。少し男だけで話したいことがあるから、ルーナ嬢は出て行ってくれるかな?」

「は、はぁ。」

 国王陛下の言ったことに、アークスとルーカスも驚いているようだった。

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