地上の星空
調査のため山腹にある城塞跡を訪れたナナミたち。数々の困難を乗り越え、辿り着いたのは、この世のものとは思えない幻想的な光景だった。
うっぎゃ〜〜っ
きゃ〜〜っ〜〜
「あいた〜」
「あたた〜。ナナミ、ロロも大丈夫?」
「特に怪我もないし、大丈夫みたい。」
「俺も特に怪我はない。」
シュータに引っかかって、穴といった方がしっくりくる長い坂道を、それこそ全力疾走で駆け抜けた後、ペイッっと放り出されたのは、小さな池だった。
「だいたいロロがあんなとこで石像を弄るからだよ〜。フルプレートのおじさんにもトラップには気を付けろって言われてたのに〜」
「何言ってるだよ。ナナミだってノリノリだったじゃないか。」
「はいはい、それくらいにしな。それにしてもここは何処なんだ?」
フィーナさんが、きゃいきゃいと責任を押し付け合うボクたちをたしなめる。
「出口!!」
「助かった〜」
どれくらい歩いただろうか、池から流れ出る水流にそって進んでたボクたち前に、うっすらとした光が差し込んでいた。
「もう月が登ってるんだね。結構遅くなったな。」
フィーナさんの呟きにも、ちょっと安堵している様子が伺える。辿り着いたのは、山の中腹くらいだろうかちょっとした広場になってて、ボクたちを導いてくれた水流は左手に進行方向をかえた後、切立った山肌を落ちていっていた。
「さて、ここからどうしたものか?」
「わぁーっ。すごい・・・」
フィーナさんの独り言なのか問いかけなのかを遮り、思わず声が漏れた。
月明かりに照らされた眼下の光景に、ただただ目と心を奪われるばかりだった。
ーーー
アムル川流域調査報告 ナナミ(翠玉)、フィーナ(紅玉)、ロロ(翠玉)
アムル川沿いにてゴブリンの目撃情報が相次ぎ、ゴブリンのものと思われる家畜被害が近隣から寄せられていたことから調査。
被害は軽微かつ散発的なものだが、目撃情報の中心となるタドリ山城塞跡には、僅かに生活の痕跡があったので、群れ形勢の徴候なのかもしれないので注意が必要。
アムル川湿地帯
☆☆☆(ナナミ、人族)
夜来香の材料になるエピュル厶が採れるから採取依頼なんかで訪れたことがある人も多いと思う。ただ、今回報告するのは、湿地帯に行ったんじゃ見られない、タドリ山からの眺め。
初夏の満月の夜、エピュル厶が一夜限りの花を咲かせるってのは割と知られた話だけど、月明かりが翳って、眼下に広がる湿地帯のあちらこちらで咲くエピュルムの花の淡く白い光が湿地帯を覆うと、湿地帯がまるで雪に包まれてるかのような幻想的な光景となる。
その中に、時折、ポツリポツリと小さな橙や緑の光が現れて、しばらく漂うと静かに消えていくのが目に入る。光は、徐々にに数を増し、月が頭上にかかる頃には、無数の橙や緑の小さな光がまたたき、まるで天の星々を地上に落ちて来たんじゃないかとの錯覚を覚える程になる。
月が傾き始めると光は数を減らし、やがて元の静かな雪景色に戻るのだ。
・・・と、書いては見たが、百聞は一見にしかず、とにかく一度見て欲しい!
☆☆☆(フィーナ、エルフ)
タドリ山中腹から見るアムル川湿地帯の夜景。幻想的な光景であり、一見の価値のあるものではある。清浄な森の深部で光精が集うのを目にすることもあるが、これに近いのではと言えば分かってもらえるだろう。
ただ、スケール感が全く違う。遠くからの眺めとなるので、包まれるような感覚はないものの、眼下に広がるそれは、森林地帯を縫うように走るアムル川、さらに遠く空との境界のような山脈の山影をも一望する景色の中で、大地に置かれた宝石箱のようだ。
これを見るためには、アルム川湿地帯は周辺部はともかく深部にはアンデットが多いので、多少遠回りにはなるがタドリ山北部からのルートを使うと良いだろう。ただし、こちらもそれなりに危険はあるので、準備を怠らないこと。
★(ロロ、人族)
確かに美しく幻想的な光景ではある。
その場にいたときには思いが至らなかったが、色とりどりの光の多くは発光虫のものだろう。ただ発光虫の餌が何かと考えると、美しさよりも怖ろしさを感じずにはいられない。距離があったので、不浄なものは感じられなかったが、それでも光の中のいつくか、特に、ときおり大きく青白く光っていたものの由来を考えると、寒気すら覚える。
湿地帯を行く危険性はもとより、タドリ山の城塞跡のトラップが生きていたことなんかも考えると、今回は運が良かっただけで、物見遊山で行く場所ではないと思う。
ーーー
『いろいろスルーしたね〜。』
『でも、知らなかったものを見つけれたんだから、これはこれで良いんじゃないかな』
駒達を見つめる彼ら。ひとりのつぶやきにもうひとりが応える。
『それにしても、見事なスルーっぷりだったね。』
(*゜。゜)ホッホーーッ!!
なんとなく思いついた光景を書き留めてみました。途中はいろいろ考えたけど、上手く繋がらなかったので、全部端折っちゃいました (*ノω・*)テヘ