#007
アンジェリカはジルに指示され、毎日朝昼晩にそれぞれ千回振るのを二セット行うようになった。
毎日六千回も振っているからか数日で無駄な動作が殆どなくなっていた。
ジルはこれなら次の段階に進んでもいいと、アンジェリカに魔術を教え始めた
ジルは前と同じ様に精霊化をして身体強化を使い感覚を覚えさせた後、精霊化を解きアンジェリカに身体強化を使わせる。
アンジェリカは始めの方は身体強化に斑があったり必要以上に強化して気にぶつかったりと失敗を繰り返していたが身体強化も剣と同じ様に理想との違いは何所にあるのか、如何すれば理想に近づけるのか考え次の動作で修正していき段々と動きが精練されていく。
そしてジルに朝昼夜にやっていたのを一セット目は身体強化なし、二セット目は身体強化ありで行う様にと特訓メニューが変わった。
その翌日、昼頃に村に鎧を着た五人組がやって来た。
なんでも殺人鬼が逃げ出しここらに逃げてきたそうだ。
ジルはアンジェリカがその五人組に近づこうとすると警告してきた。
『アンジェ気を付けろ、あいつらは俺を捕まえる為に研究所が放った者達だ』
(それじゃあもしジルの存在に気付かれたら……)
『その場で襲われるか、なにか理由を付けて拘束されるか、誰にも気付かれない様に攫われるか、それとも別の手にでるか、どうなるかわからないが気付かれないに越したことはない』
(倒しちゃうって言うのは……)
『ないな。そんな事をすれば俺が此処にいるって事を教えるようなものだ』
(だよね~、じゃあなにがあっても知らぬ存ぜぬで通すね)
『ああ、そうしてくれ』
そこで二人は会話を止め、家へこっそり帰ろうとすると村長に呼び止められた。
アンジェリカは悪い予感しかしなかったが、ここで逃げ出すとかえって怪しまれると思い素直に村長に近づく。
村長は五人組と一緒にいた。
近づくと村長がアンジェリカにお願いをしてきた。
「アンジェ、お前さんにこの方達を森へ案内して欲しいんだが頼めるか」
「村長には世話になってるんだし、お願いを断れるわけないじゃん。それで森まででいいの? それとも森の中も?」
「森の中までだ、幸い魔物が出たりしてもこの方達が守ってくださるそうだから安心していいぞ」
「それは心強いね、それで森には何時行けばいいの?」
「できれば今から言って欲しいそうだが構わないか」
アンジェリカは五人組のリーダーらしき人に訊ねる。
「それじゃあ森に向かう途中で家によりたいけどいいかな」
「ああ、構わないよ」
「すいません、言葉遣いが成っていなくて、後で言って聞かせるのでご容赦を」
リーダーは村長に構わない気にしなくていいと笑っていた。
「アンジェ、お前さんもいい加減言葉遣いを如何にかできんのか」
「面倒だから嫌、それに気にしないでいいって言ってるから別にいいじゃん」
「そういう問題じゃない──」
「それじゃあ、案内するので付いて来て下さい」
「アンジェ、人の話は最後まで聞かんか」
アンジェリカは村長の話に耳を貸さずそのまま、五人組を連れて森へ向かった。