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#006


 アンジェリカが目を覚ますとまだ空は少し暗くなっていた。

「アンジェ、千回自分の力で振ってみて如何だった」

「正直辛い、でも少しは良くなったでしょ」

「最初に比べればな、だが実戦を想定した場合にはまだまだ鍛錬が必要だ。と言う訳でまた千回振るぞ、剣を構えろ」

「またやるの、それよりも魔術の使い方を教えてよ」

「身体強化かそれなら──」

「そうじゃなくて、こう敵を一掃できるような魔術とかを教えてほしいの」

「そんな魔術は無意味だ、剣があればそんな事はできる様になる」


 そのお願いを聞いたジルは呆れたように溜息を吐き断った。

 アンジェリカはそんなバッサリと断られると思っていなかったのか絶句する。

 ジルはそんなアンジェリカを気に掛けずに追い打ちをかける。

「そもそもそんな魔術はどれだけの魔力を消費すると思ってる、それに発動するまでの時間は如何するんだ、普通は初級中級の小規模な魔術で牽制しながら使うがそれをこなせるだけの魔力がお前にはあるのか? ないだろ。仲間でも探して守ってもらうのか、如何やってそんな面倒ごとに巻き込まれるとわかっている奴の仲間になってくれる様な奴を探すんだ? もし仮に仲間ができたとしよう、それでそんな大規模の魔術を仲間を巻き込まない様に扱えるようになるまでにどれだけの時間が掛かると思ってる? お前にはそんな余裕はないんだぞ、少しでも早く強くならなければ死ぬぞ。それでもいいなら魔術を教えるが如何する」


 アンジェリカはジルに言われた事を考え自分がどれだけ物事を考えずに発言したのかを理解する。

 それと同時にジルの言い方に怒りが湧いてきた。

 それを気付いているのか気付いていないのかジルがまた発言する。

「アンジェ、お前初級でもいいから魔術は使えるか?」

「一応簡単なのだったら使えるけど、それが如何したの」

「魔術が無意味だと言った意味を教えてやろうと思ってな、俺に向けて魔術を打ってみろ」


 アンジェリカは訳がわからなかったが、そんな事は如何でもいいやと先程の怒りを込めてジルに今使える最高の魔術を15発も放つ。

 ジルは何の合図もなしに放たれた水の槍に特に焦る様子もなく、冷静に全てを斬って見せる。

 アンジェリカは唖然とした。

 今までに聞いた事のある魔術の防ぎ方は、障壁を張るか避けるかのどちらかで、斬って防ぐなんて聞いた事もなかったからだ。

 ジルは剣を鞘に納めたかと思うとその姿は消えた。

 アンジェリカはジルがどこに消えたのか周りを見回すとすぐ後ろに立っていた。

 アンジェリカは驚きを隠そうとしながら質問する。


「如何やって背後に回り込んだの」

「これは身体強化の応用だ、先の魔術はこれを使わなくても簡単に避けられる程度の稚拙なものだったぞ、真面に習った事もないせいか魔力の練りは甘すぎるし、魔術を行使するまでに時間は掛かる上に隙だらけだ、これでは実戦では何の役にも立たないぞ、寧ろ邪魔にしかならない」

「そんなに言わなくてもいいでしょ! 人の心って物がないの、私が一人でどれだけ頑張って来たか知らないでしょ、それなのに簡単に否定しないで!」


「結果の伴わない間違った努力は無意味だ、だから俺が教えてやる戦い方を剣の振り方を魔術の使い方を。その過程で今みたいに文句があるなら言いたいだけ言え、もし逃げ出したいんだったら死ぬ事になるだろうが好きにしろ」

「貴方って本当に最低、選択肢のない選択肢を押し付けて来るし、私の思いなんて完璧に無視するし、否定する時も言い過ぎだし、もっと私の事を思いやった発言はできないの?」


「言いたい事はそれだけか」

「まだまだ全然言い足りない、けど今は我慢してあげる。私が強くなった時憶えてなさい、絶対にこの恨みをぶつけるから」

 ジルはその宣言に言葉を返さず、千回振るように指示するだけだった。


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