5.energy
「あ〜ぁ、血が出てるじゃない……もう……」
幼い少女サラは椅子に座ってケラケラ笑ってる。
クリシアが膝に絆創膏を貼ってあげる。
「でもママ。できるようになったよサカアガリ」
そう言って鉄棒で汚れた赤い錆だらけの両手を見せた。
そんなオテンバ娘も眠っている時はやっぱり子猫のようだった。
寝静まる夜にブリウスとクリシアが見つめてる。
「ふふ……誰に似たのかしらね」
「お前にそっくりじゃないか。この目も口も」
「性格はあなたよ」
「もうちょーっと清楚にならんかな〜」
「性格があなただから無理」
「もうちょーっと可憐にならんかな〜」
「性格があなただから荒くれ」
「おま……」
****
サラも小学生になった。
明るく、誰とでも喋り、友達もすぐにできた。
わからないことは何でも聞き、元気で正義感に溢れ……時に溢れすぎることもあったが。
「プディングさん! お宅ではどういう教育してらっしゃるの? ウチの子見てちょうだいよ、こんなに怪我させられて! どうしてくれるのよ!」
と、隣り部落の母親が怒鳴り込んできた。
玄関口で頭を下げるクリシア。
「本当に申し訳ありません……」
サラは柱に隠れてる。
「サラ! こっち来て謝んなさい!」
「だってそのコがエリザベスのクレヨン、ぜんぶわざとおったのよ! このイジメっコ!」
サラはベー! と舌を出す。
その母親の後ろには、丸々と体格のいい、顔ボコボコの男の子が……。
……その夜の食卓。
「ハッハッハ。タネンのガキをやっつけたって? 番長クラスだろ?」
「笑い事じゃないわブリウス、ちゃんと叱って」
「頼もしいじゃないか! ありゃあデカいくせに根性曲がってら! なぁ、サラ」
「へへへ……」
「イジメっ子の方が悪いもんな!」
「うん!」
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英単語の授業。
「はーい。じゃあ次は〝H〟で始まる言葉よ。前の席の人から順番に、言ってください」
「え〜と…… HEART!」
「HORSE」
「……HAPPY」
「……ヒ、HERE」
「ここ! HEAD!」
先生が次の列を指差した。
「はい、じゃサラさんから」
「はい! えーと……、あ! HARLEY DAVIDSON!」
エネルギーの塊。
走るのも男の子を負かすほど。
鉄棒や跳び箱もみんなに教えてまわった。
夜、ブリウスがサラと絵を描いて遊んでいる。
クレヨンを手に、サラのリクエストに応える。
「パパも小っちゃい頃から恐竜大好きだったからなー」
サラも一生懸命描いてる。
「ほら、サラできたぞ〜 強そうだろ?」
「ええ? T・レックスはもっとアゴが大きくて手は小っちゃいよ」
「そ、そっかあ? どれ。見せてみな……あ、お前の方が、上手い」
クリシアがコーヒーとジュースを運んでくる。
その空気……それは本当に幸せだと、彼女は思えた。
二人の絵をクリシアが覗きこむ。
「あら、このトカゲ? カンガルーかしら」
「ママこれT・レックスだって! パパがかいたの」
ブリウスの絵の下手っぷりにクリシアは思わず吹き出した。
「え? そうなの? ……ぷっ」
「な、なにをぉ〜〜!」