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SARA  作者: ホーリン・ホーク
Sugar Mountain
29/34

29.neptune

 針葉樹がひしめく葛折(つづらお)りを行く。

 次第に数を増す蜻蛉(トンボ)が二人を(いざな)う。

 群れは暗く薄ら寒い鍾乳洞へ。

 見ていた鹿たちが突如逃げ出す。

 低い唸り声……それは熊だ。

 アーロは立ち止まり、咄嗟に護身用の拳銃を手にした。


「アーロ!」

「大丈夫。俺の背に」

 するとしばらくして熊は姿を消した。

「行こう。やはり気配を感じる。熊も逃げるほど怪しい気だ」

「え?」

「俺たちの後を尾けてる。いや、同じように蜻蛉(セイレイ)に導かれて……。上か下か。得体の知れない何者かが近づいている。だから行こう。早く水を採取して帰るんだ」


 セイレイの力でアーロの感覚は研ぎ澄まされていた。

 足が竦むサラも確かに迫り来る異様な気配を感じ取った。



挿絵(By みてみん)



 闇の洞をくぐり抜けると峡谷。

 切り立った断崖に覗く星の輝き。

 そして駆ける一筋の流れ星。

 その眩い光に照らされて幾千万もの蜻蛉たちは束なり一つになり、やがて巨大な竜の姿を形作った。

 それはシギシギと蠢きながら、アーロとサラの眼前に。


「サ、サラ……見えるかい? こ、これが……これこそが」

「光の竜……美しい……なんて、美しいの……」


 サラは打ち震える。

 神々しい輝きに思わず手を伸ばし、触れようとした……その時、突然そのサラの右手を捕らえる鞭が!

 サラはそのまま鞭の主の下へ引き摺られた。アーロが叫ぶ。

「サラァッ!」

 

 見上げた洞の出口には一人の男がいた。

 黒いレザーコート姿に、銀色の歯で嘲笑う様子はまさに〝死神〟。


  光り輝く竜を目の当たりにするその男――闇組織ネオ・ナピスの〝ネプチューン〟は言った。


蜻蛉(DRAGONFLY)……なるほど、これが(DRAGON)の正体か……」

 ネプチューンの胸元にはオールドマンから奪ったセイレイが輝いている。

 そしてサラの首にかかるセイレイも捥ぎ取り、天にかざした。

「おお……素晴らしいパワーだ。エネルギーが満ち溢れている」と彼が瞬いた時、飛びかかったアーロにネプチューンは殴り飛ばされ、よろめいた。


 アーロはナイフで鞭を切断しサラを抱きかかえ、また後方へ跳んだ。

 ネプチューンは背中から(モリ)のような武器を取り出した。


「……ほぉ。流石はリバ族の血。凄まじい跳躍だな……いや、それもセイレイの力か?」

 アーロはネプチューンを睨みつけながらサラを背中に回す。

 サラは震えながら言った。

「……ありがとう、アーロ」

「俺から離れないで」

「見て、竜が動いてる」



 伝説の竜がラグーンへ向かおうとしている……。



挿絵(By みてみん)

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