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11.immutable wind
《〝たとえ零落の方向にあっても寂しさの釣り出しにあってはならない〟……友とミツハル・カネコに学んだことだ。諸悪の根源は寂しさ、心の貧しさだと》
《ブリウスよ。全て失ったと思ってもまだ失うものが残されているという。お前は父親として外で精いっぱい闘ってる姿を見せればいい。それでいいんだ……》
ライセンスが死んだ。
心臓を患い六十五歳で息を引き取った。
彼の幾つもの言葉を思い出しながらブリウスは今その墓石に花を置いた。
――ライセンス。あんたも俺の瞳の中に生き続ける。そう、はるか道を行ったところでまた会おう。また会えるんだ……。
マリーゴールドの黄色い花びらがか弱く飛ばされてゆく。
無常の風が吹き抜けた。
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同じ一九八一年の冬には飼っていた老猫トムの死。
凍てつく朝、裏庭の片隅でひっそりと。
冷たく動かなくなったトムを見て、サラは泣きじゃくった。
その悲しみは深く深く胸に刻まれた。
サラはこの日とこの事を決して忘れないと誓った……。