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ぐろりあ  作者: karon
3/9

深夜

 不意に真夜中目が覚めてしまった。

 普段の私は一度寝たらほとんど朝まで目を覚ますことはないのだけれど。今晩に限ってなぜか目が覚めた。

 目が覚めて、珍しく深夜に意識ははっきりとしているけれど、身体が動かない。

 指一本動かせない。

 いや、思い出せ、あれはあれだ。睡眠中に運動神経が切れてしまい、目が覚めた後もしばらくつながらないというありふれた現象だ。断じてあれではないのだ。

 そうよ、二十歳すぎるまでそういうことが一度も起こらなければ一生起こらないっていうじゃない。だからこれはあれじゃない。金縛りなんてあるはずがないのよ。

 指一本動かせない、辛うじて動くのは視点だけ。足元のコンセントにフットランプをつけてあるので視界は真っ暗じゃなく物の輪郭ぐらいはわかる。

 フットランプに照らされてきらきら光るものがある。

 あれはグロリアの瞳だ。うつむき加減なので、ちょうどフットライトがガラスの瞳に反射するのだ。

 あれ……?

 チカチカチカ光が点滅する。

 フットライトは別に点滅していない。点滅しているのはグロリアの瞳に反射している光だけ。

 まるでグロリアが瞬きをしているかのように。

 そんなはずない。グロリアはスリーピングドールじゃない。

 グロリアの顔はすべて固い陶器でできている。あの瞼が閉じたりするはずがない。じゃあなぜ点滅しているの?

 チカチカチカ、点滅は繰り返す。

 グロリアに触れて確かめようにも私はベッドから降りるどころか手を伸ばすこともできない。

 私はただその点滅する光を凝視していることしかできない。


 いつの間にか意識が途切れ、目覚まし時計の音に叩き起こされた。

 ベッドから起き上がり、戸棚の上のグロリアを見た。

 グロリアは昨夜と同じようにうつむき加減に戸棚に座っている。

 指先で恐る恐るグロリアの頬をつついてみる。やはり陶器だ、丼ぶりをつついた時と同じ感触がした。

 私は目覚ましを止めて、食事の支度をするために階下に降りた。

 朝食を作る関係から、私のベッドは扉の近くに置いてある、旦那のベッドは窓際だ。

 目覚ましが鳴っても旦那は太平楽に眠っているようだ。

 なんだか頭が重い、たぶん昨夜変な夢を見たせいだ。だってあれは夢に決まっている。グロリアは決して瞬きなんかしない。

 私は普段起きる時間なのであわてる必要などないのだけれど、足早に階下のキッチンに向かった。

 キッチンでみそ汁の具材を煮込み目玉焼きを焼く。

 タイマーですでにご飯は炊けている。

 今日はパートはない。

 買い物にでも行こうか、なんとなく今日は家にいたくない。



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