休日
基本、安いもの好きな私としては、フリーマーケットや骨董市を月一ぐらいの頻度で回っている。
リサイクルショップはなんだか違う。ああいう場で、一期一会みたいな感じが好きなだけ。
普段は一人で回っているけれど、今日は旦那がついてきた。
パートで稼いだお金は一定額さえ家系に入れればあとはお小遣い。
子供ができたらそんなわけにはいかないけれど、今は気ままに暮らしている。
私は目星をつけた出品者に小さめな花瓶の値段交渉をしていた。
それを旦那はきょろきょろと周りを物珍しげに見ている。
「なんか高そうなものが無雑作に出されていないか?」
くすんだ桐箱に入った楽焼の茶碗を指さす。
「楽焼はちょっと見分けがつかないよね、いいのも悪いのもセンスが問われる」
実際はあんまり好みじゃないからなんだけど。
ひょろっとした体つきにごつい黒縁眼鏡を指先で押しあげながらしげしげと眺めている。
こういう場で買う場合と買わない場合がある。やっぱり好きなものを買わなくちゃって思うから。
「あれ、アンティークドールじゃないか」
わが旦那真一さんは古今東西の骨董が混在するこの空間に呆気に取られている。
ちょっと見るとそのアンティークドールは少し変わっていた。
大きさは普通だけれど髪が黒っぽいのだ。ああいう人形はクルクル縦ロールのキラキラ金髪のイメージだけど。
ロングフェィスジュモーっぽい。もちろん本物がこんなところに出ていたらえらいことだ。
「これはとても古い人形でね、十八世紀ごろに作られたものだよ」
とっさに噴出しそうなのをこらえた。アンティークドールは十九世紀より古いものはない。なぜなら、明治維新で開国した日本の市松人形がモデルだからだ。
博覧会に出品されてから少女ノダキ人形というジャンルができたらしい。
だからアンティークドールは市松人形と同じ大きさなのだ。
こういうところに出入りしているとそういう豆知識がついてしまう。
旦那はへえと感心しているが、間違っているからね。
このいい加減な知識からしてこの人形はおそらく新しく作った模造品に古色をつけたものだろう。
そして、ちょっと顔を近づけてよく見てみる。
ああ、ちゃんと焼いてある。
さすがにプラ製品ではないようだ。いくら何でもセルロイドの人形をアンティークドールなんて嘘をつかないと思うけど。
なんだかんだ言ってもセルロイドの人形だってもう立派な骨董品、モノによっては結構なお値段がするけど。
私がこういう場所で買うのは、豆皿や、箸置きというあまり場所をとらないものが多い。
何といっても我が家の面積は限られているから。
なんだかんだ言って旦那はその人形を買う気になったらしい。
値段は、確かに安い。たとえ近代のレプリカだとしてもちゃんと陶製品の人形の値段としては破格だ。
元は奇麗なラベンダー色のドレスだったのかもしれないが、今はくすんで、ほとんど灰色になっており、元のラベンダー色はプリーツの隙間くらいにしか残っていない。
裾に金色のすり模様がある。新品の時には結構高級感があったんだろう。
この人形はいったいどこの置くことになるのやらだ。




