act.7:大陸会議
━━━━子供の頃私は、星ひとつない夜の空の日は恐怖していた。
あの空の向こう……『最果て』の向こうから、昔話の邪神がやってくるのではないかと。
だが、私は間違えた方向を見ていたのだ……
邪巨神は、あの丘の向こう、あの山の麓からやって来た。
どこでも良い、とにかくすぐ近くに空いた『時空の裂け目』からだ。
最初の襲撃は、我が国のセント・トウカ。
聖騎士、聖術師の全勢力をもって、現れた場を更地にしてようやく勝った……
だが、コレで終わらなかった。
2ヶ月後には、魔王連合の地に……
次は、トレイルの中央部に
そして、今4体目はブレイディアのエーゲ森に……
***
ことり、と飲み干した水の盃を置く。
場所は、トレイル商会連合国首都、ウェストキャピタル内に存在する国際会議場。
今、この大陸内で現在最も栄えている国の長や特使達が集まっていた。
「……私も、平和がいいとは思う。
だからこそこうも思う。
『対抗する兵器が必要』だと」
聖マルティア国の長にして、光の精霊教の最高権力者、『教皇タラニア12世』はそう言葉を紡ぐ。
「対抗する兵器、と申されましたか?」
「得意とするところではないのかね?クレド王、君の国は」
「我々としても興味がありますねぇ?
一応は、こちらの学者も貴方方に協力しているので」
トレイル商会連合代表、『トレイル商会総裁』アイザック・トレイル8世が、タラニア教皇の言葉に続きそう尋ねてくる。
「その節はお世話になった。いずれ代金は」
「その料金を値引きするかふっかけるか、我々も判断しかねているのですよ、クレド王閣下?」
ふむ、と答えに困ったようにクレドは呟く。
「ふむではないぞ、学者の国の王。
そなたの国の魔法科学で、こう、あの面倒な化け物共をどっかーん!と倒せるようなものが無いなどと申すつもりはないではあろうなぁ?」
魔王連合国の代表として来た、『雷竜魔王』こと『ネリス』は、もう数分前からつまらなさがピークに達しているのか、机の上にのの字を書きながら中々扇情的な格好の上半身を同じく机の上に寝かせていた。
「あいにく、どかん、で倒せるような生物群ではありません故に」
「えー!?つまらんでは無いか!!
跡形もなくなにもかも消しとばすようなのがあれば、相手も死んで余も気持ちがすっきりし、イダダダダダ」
「殺したくなるほどおバカな発言はやめようね〜?魔王の品位に関わるからね〜?」
隣に座るもう一人、『駿刃魔王』ことタニアがその頬を摘んで━━万力のような強さで━━━ネリスを諌める。
「しかし、今代ブレイディア王『さん』、あなたもおかしな事を言いますね?」
「というと?駿刃魔王殿?」
「邪巨神を『生物』と言い退けた事ですよ。
私もまだ、1500程の齢を重ねていない若輩の魔王ですが……」
「ふはは勝った!余は1700だから年うッ!?」
ヒュンと正確に食い込んだ嫋やかな指が、信じられない力でネリスの首を絞め上げる。
「邪巨神を『生物』などという風に言うことなど思ったことはありません。
そちらの方と同じ神などと形容する程度に、アレらは古から魔族も人も恐れるほどの力を持ち、邪と貴方方が形容する程度には、我々並みに『悪』。
ブレイディア初期の王の言葉を今でも思い出します、『勝った方が我々の敵になるだけだ』と」
「そんな相手とも話し合いの席に来ていただける今の世の良さを常に噛み締めておりますが……
駿刃魔王殿、雷竜魔王殿が完全に意識を失ってますが?」
「あら!」
と手を離した隣の彼女に、ごめんね〜、などと意識の消えた顔を突きつつ小声で言うタニア。
普通の人間や魔族なら死んでいるか首が耐えきれなくなり死んでいる所だ。
「あらあら、魔王さん達は相変わらず暴力的ですわね〜〜」
ふと、ころころ笑う声が響く。
ちょうどテーブルの反対側にいた、豊満な身体を落ち着いたドレスで包み、奇妙な王冠のようなものを被った美しい女性が声の主だった。
「これはお見苦しい所を……つい隣のおバカに釣られてしまって……」
「いいのよ、魔王のお嬢さん♪
謝れるだけここ1000年で進歩しているわ」
ヴァールファラ神国代表代理、外務担当の『月と豊穣の神』フェイリアは、柔和な笑みでそう答える。
「でもお友達とはいえ暴力は感心しないわ?
何でもかんでも暴力だけで解決するのはいけないことよ?」
「しかし、そればっかりは最後の最後にどうしても暴力が必要なのでは、とも思うのですが……」
「そこが問題なのよねぇ……
邪巨神の事もそう、彼らは根本的に『暴力しかない』の。
魔族の皆さんもまだ、策略とか打算もしてくれるから安心なの……案外そう言うのは、『お話を聞いてくれて』、『場合によっては引いてくれる』。
━━━この星に我々が生まれて、3万年、わたくしが自我を持ち始めて約2万年、彼らはその間、偏りはあるものの、何度も、何度も、何度も、何処かは知らない別の場所からやってきては、暴力、暴力、暴力……魔王さん達に攻め込まれた方が遥かにマシに思える破壊の歴史を積んで来たの。
戦闘を得意とする神も一筋縄ではいかず、倒れては消滅して今じゃ……
嫌よね、わたくしも嫌。
限りない時を生きられても、不老でも、優れた権能を持つ神でも嫌なの、
もっと限りある命であるあなた方なら……もっと嫌でしょう?」
ふぅ、とため息をつく。
「……最後の邪巨神の『厄災周期』は、今から三千年前。
我らが最高神オディリアは、そこで力を使い果たして今も目覚めず……
こんなに早く、また周期が来るとは思わなかったわ」
より一層、周りは暗い顔をする。
「……あなたの記憶と、我々人間の文献の通りなら、これが後何十年か続くと?」
「ええ、間違いなく。
クレドちゃんが退屈することはないと思うわ?」
「ちゃんはやめていただきたいですな」
「ふふ、可愛い子」
軽く投げキッスをしおどけ、ふと表情を引き締めるフェイリア。
「でも、貴方達人間の準備は、これまでとは違うようね。
……暴力しかない相手用の暴力は、ちゃんと用意できたのかしら?」
ふと、クレドに周りの視線が集まる。
なにせ……この場で最も、魔法科学の発展した国の長なのだ。
「…………そろそろ、報告があるはずです」
ふと、そう言った瞬間、会議室のドアがバン、と開かれる。
「会議中失礼します!!!
魔法博士マハムド・アヴィディルより、クレド王にご報告があって馳せ参じました!!」
「お、同じくシャーカ魔法博士失礼しますぅ……」
「おぉ、シャーカ君、アヴィディル魔法博士!!
待っていたぞ!!」
大柄な砂漠の民の筋と思われる人種の男アヴィディルと、コソコソ隠れてやってきたシャーカは、何やら大きな機材を持ってやってきた。
「?」
「これ、何をそんな仰々しい物を持ってきておる?」
「いやはや失礼を。各国の皆様にも、直接見ていただいた方がいいと思いまし
大きな機材を置き、小型反応魔導炉を繋いで起動させる。
続いて薄い箱のような物の一部に丸い魔導石のようなものが取り付けられた装置をケーブルでテキパキと繋いでいく。
「む!?なんだか分からないが面白そうな予感!」
「ネリスちゃん、そう言うタイミングで起きるよね」
「それで何が起こるのかしら?」
「私から説明させていただこう!
この二人の発明は中々、痒いところに届く物なのだ」
ふと、アヴィディルが大きな装置にあった受話器を持ち上げ、何処かに電話をかけるべく、ボタンを押していく。
「おい君、ここは通信線は通っていないよ?秘密の会議のためにね」
「チッチッ、先刻承知ですともトレイル商会総裁閣下。
だが、もし次から会議をここで開くならば、ミスリル銀を壁に仕込む事をお勧めしますな!」
「何?」
ふふふ、とアヴィディル本人以上に、クレドが不敵に笑う。
「彼、アヴィディル魔法博士の研究は、『空気伝達魔力波の応用』だ」
「む?質問である!余の記憶が正しければ、空気伝達魔力波の研究は『何に使うのかわからぬ研究』のはずだぞ?
機械的に魔力の波を受け取っても、我ら魔王やかつての冒険者や勇者と呼ばれた奴らのように、気配が掴める訳でもあるまい?」
「こう言うことは頭良いんだよねネリスちゃん」
「はっは、いい質問ですな!
アヴィディル魔法博士、説明してやりなさい」
「かしこまりましたとも!
おほん……そもそも魔力通信機の仕組みを知っている方はおりますか?」
「簡単である、説明は不要ぞ!」
「うん、いるからね?ネリスちゃん頭いいけどバカだね?」
「はいはい、この坊やの説明を聞きましょう?」
「ありがとうございます。
そもそも、あの魔力通信機も、ケーブルという道を通して声を物質内の伝達魔力波に変えて送るものなのですよ?」
何、とネリスやクレド以外が驚く。
「伝達魔力波……そう、空中と物質内の違いこそあれど、この二つは全く同じ!!
ならば、音という波を魔力に変えて送る魔力通信機に使えば、ケーブルなど不要という結論に至るはず!」
「何?待て!しかし、空中伝達は、途中で届かなくなるはずぞ!」
「そりゃそうでしょうとも、ご存知の通り地球は丸い。空気伝達魔力波がその丸さのせいで送る場所が限られてしまう。
━━━『最果て』を使わなければね?」
す、とアヴィディルは上を指差してそう断言する。
「『最果て』を使う……?」
「ご存知、この世の果て、ヴァールファラ神国の空中大陸より上に位置する、空の終わり『最果て』、未だたどり着いたものの少ない世界のフチは、なんと空気伝達魔力場を跳ね返す特性を持っていたのです!」
ほう、と一言納得がいったような言葉を漏らすネリスに反して、周りは首をかしげる。
「跳ね返ると、どうなるので?」
「はい。跳ね返る、と一言申しても、反射するだけで終わる訳ではございません。
例えるなら、水切りをする石のようにこう、跳ね返った伝達魔力波は戻るのではなく、より遠くの場所に進むのです」
空中でその様を手の動きで説明することで、ようやく周りも理解が出来た。
「で、あれば然るべき強さの伝達魔力波を然るべき角度で放てば、無線で通信が可能なのです!」
「なんと……!」
「おっと、驚くのは待っていただきたい!
そこへ、我ら『HELMIT』の副学長シャーカ氏のこれがあって、より素晴らしい物が出来上がったのだから!」
「……あ、え私!?」
黙々と作業をしていたシャーカは、急に名前を呼ばれたせいで素っ頓狂な声を上げてしまう。
「あなた以外にはいない、副学長?」
「あばばばば、ここ、心の準備ががががが」
「シャーカ君!!
アレの説明は不要だ……見せれば驚いてくれるだろうからな」
はひぃ、と涙目で急いで装置を起動させる。
ブゥン、と言う音と共に、魔法石のような部分から壁へ幻影魔法の応用で何かを写す。
「なんだ、コレは?」
「こ、自動魔法詠唱機です……」
「コンピューター?あのガリガリ音を立てて、適当魔力を込めれば複雑なものから簡単な魔法を撃ってくれるあの?」
「Mk-1の時点で構想してたんです……
そもそも、詠唱するのは魔法出なくてもいいんです……計算、物語、なんでも言えるなら……おっと、でもコレは、幻影魔法の応用で出してます」
機械の上の部分に指を走らせると、壁に映る映像の中に浮かぶ矢印のようなマークが、同じく映像の中の通信機の受話器を思わせるマークまでやってくる。
「詳しいことを言うと四時間はかかりますので掻い摘んで……
私の自動魔法詠唱機の最大の強みは二つ、『超高速詠唱』と『並列詠唱』。
達人より早く複雑な詠唱ができ、二つ以上のそれらを同時に行える」
「それが出来るとどうなる?」
「例えば、何か唱えたい呪文をこの画面の絵……「アイコン」と呼ぶものがトリガーになって数秒で発動するようになれば、」
トン、と指でそこを叩いた瞬間、画面が切り替わり、ざーと言う砂嵐を経て、ある顔が映し出される。
『━━━待ちくたびれたぞ、シャーカ殿』
「姫さまそちらは?」
映し出されたアイゼナの顔に、皆がおお、と声を上げる。
「遠見……!」
「いや、正確には映像を撮る、写す、音声を双方向に伝える、という魔法を数種類同時に発動させておるな。
伝達魔力波は光とほぼ同じ速度であるなら、後はそこの詠唱機の速度にもよるが、ほぼ同時刻画像通信といえよう」
『これは『雷竜魔王』陛下、流石の科学的見地です。
まぁ、お恥ずかしながらこうして遠くから通信する私ですら、原理はよくわかってないのですが』
「よろしい。アイゼナ、我が娘よ。
王国派遣軍団長として報告を聞きたい」
クレドの言葉に、は、と豊満な胸の前で片手を組む略式敬礼を行い、アイゼナは語り始める。
『残念な報告です、敵を逃がしました』
「何!?詳細を聞こう」
『はっ!
作戦は予定通り、新兵器メーザーによる焼却を行い、敵邪巨神を再生不可能になるまで焼きはらい成功、と見えたのですが……
直後、炭同然の奴の頭より、小さなやつの……いわば『分裂体』と呼ぶべき個体が飛び出し、逃走を許してしまいました』
「姫様、記録映像はありますか?
僭越ながら、真偽判定にも必要かと」
『来ると思った。
ソフィ!画像を送ってやれ!』
隣で向こうの機械を操っていたらしい人物への支持と共に、数秒立って何か下から『メール受信』と書かれた丸い物が現れ、そこへ矢印を置いてポンとシャーカが指で叩くと四角い窓のようなものが小さく現れ、今度はそれの中の映画のフィルムに似たマークと小さい数字の羅列のものを同じ動作で開く。
『━━━━まるで隣村のウィッカーマンを全部炭にしたみたいだな。これでお終い』
『おい、頭!何か動いてる!!』
『あ!?アイツ、ちっこくなって復活した!?』
『逃げた!!追えー!!』
そこには、確認のために近づいた飛竜部隊に付けられた映像記録装置の映像があった。
たしかに、報告の通りの出来事が映っていた。
「なんと……!!映像が送れるといえど、こんな事まで!?」
「今までフィルムを送っていた我々の数倍早い……!」
「どうやってフィルムの映像のやり取りを!?」
「フィルムなんて使っていません。
映像を記録する魔法の詠唱が入った私の自動魔法詠唱機が直接映像記録を内蔵しているのです」
今度こそ全員絶句する。
「…………我々は戦場との通信を未だにケーブルを運んでいた。
なんと馬鹿らしいことか、これを数台兵士に持たせればいい、ずっと軽くずっと自由に動ける……!」
タラニアの言葉にまさにと言わんばかりにクレドが笑みを浮かべる。
「…………これ欲しいぞ?」
「まだ量産段階ではないのですが、主力輸出品として売っていくつもりです」
「えー!?ずるい!これ欲しい、ほーしーいー!!
で、バラして余、めっちゃすごい改造するのだ!」
「はいはい、後で。
……でも、たしかにこれは……」
「こういうの、神託が出来る系の神様の面目潰れちゃうわねぇ……
また信仰心が減っちゃうかしら?」
「まぁ皆様静粛に!
機器の賞賛も聞いていたいのですが、まだ肝心な議題が残っておりますゆえ」
クレドが場を収める中、壁に移された映像越しで再びアイゼナが頭を下げる。
『ご報告の通り、逃がした失態の処罰は幾らでも私が受けます』
「必要はない!まだ想定内だ。
邪巨神をそうやすやすと倒せるとは思わないが……そうだな。
周辺警戒を他の物に任せ、竜騎兵隊は城へ戻れ。逃げた以上、首都の城下町まで来る可能性もある。
即応戦力が欲しい、夕刻までには全竜が帰れるな?」
『お言葉ですが、
3時のお茶の時間には間に合わせましょう』
「良い返事だが、あまり無理はさせるな」
『では、これより出立致しますゆえ』
そう言って通信が終わり、アイゼナが見えなくなった所でシャーカも機械を止め始めた。
「……そうやすやすと倒せぬか……
メーザーは我が国も手を貸した物だが……」
「傷が数秒で癒える化け物ではどうしようもありません、教皇殿」
ふぅむ、とタラニアは深いため息と共に唸る。
「対抗する兵器、何が良いか分からなくもなろうな」
「現在、我が国の『HELMIT』も総力を挙げて模索中ですが……やはり一筋縄では行きませんな」
「模索中?メーザーと言う結果があろうに」
「いえ、ここよりも先に『HELMIT』が映像を見て再び知恵を絞っているのですよ」
ほう、と驚くタラニアの背後で、突然ドアがドン、と開く。
「失礼、教皇陛下に報告が」
見るからに、聖職者風の彼が耳打ちすると、タラニアがうむとだけうなづく。
「我が国にも邪巨神が来よった」
「なんと……!」
「明らかに別個体らしい、四時間前確認されたとのことだ」
す、と席を立つタラニア。
「すまんのぉ……便利な物は未だない故に、行かねばならぬ」
「お気をつけて」
「うむ……」
一言だけ、沈痛な面持ちで言ったまま扉の向こうへゆっくりと消えて行ったタラニア。
やや、長い沈黙があって、アイザックがわざとらしい溜息をついた上で、こう呟いた。
「会議は踊る。されど進まず。
ちょうど、聖マルティア国の言葉、でしたっけ?」
それに合わせたのか、ふぅん、とつまらなそうな溜息を漏らすフェイリア。
「教皇ちゃんもかわいそうね。
私達を信仰していないとは言え、善良な方の人なのだもの」
まぁ、とふと自分の横に手をかざす。
瞬間、そこの空間が開き、ここではない広い稲穂の広がる何処かへの道を開く。
「どのみち御開きね。まとまらないならさっさと解散しちゃいましょ」
す、と空間の先に進み、同時に空間の裂け目が閉じた。
「…………異論はないが、流石神族と言うべきか……」
「ホイホイ、空間を開かないでほしいなぁ……」
クレドが一息つくために、水を飲んだ。
その時ふと、いつのまにか自分の隣にネリスとタニアがいた事に気づく。
「おや、魔王ともあろうお方が二人、このような人間の王に何の用ですかな?」
「安心してください。昔じゃないんです、いきなり殺して侵攻だなんて言う野蛮すぎる時代はお互い終わってます」
「そーだとも!!
というか余は人間も神も嫌いではない。不細工以外は。
ならば、我ら自らが他国の王の元に赴く用などただ一つであろう?」
「ほう?要件を聞きましょうか?」
にしし、とネリスが笑う中、微笑んだ顔で今まで大人しく立っていた魔法博士二人を見るタニア。
「「『HALMIT』に、観光に行きたい」」
ほう、と一瞬この場でもう一人の長に目を忍ばせるも、どうぞご自由に、こちらは結構と身振り手振りするのを確認し向き直る。
「承りましたとも、両魔王殿」
***




