act.18:異世界無敵の超越機械人《スーパーロボット》
ミサイル眼魔邪巨神 ガンクロン
頭剣乱舞邪巨神 ギロニアヘッド
結晶反射力邪巨神 プリズマエル
超弩級岩塊邪巨神 イワサイガミ
石化偽蛇獣邪巨神 メタデューサ
三首吸精邪巨神 ギドラキュラス
髑髏巨神 スカルキング
登場
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!」
髑髏大地に、絶望的なほどに巨大な地響きがなり渡った。
イワサイガミの巨体が、ブレイガーOを押しつぶす!!
***
「なっ……!?」
あまりの事態にドレッドノートの面々は息を飲む。
「パンツィアーッ!!!!!」
「おいぃ!?んなぁ馬鹿な話あるかよぉ!?!」
「ここに来てそれはねーだろみょぉ!??」
「データは出来たんだ!!!
もう送っている!!!
返事をしてくれ、パンツィア君!!!
無事だと言ってくれ、ブレイガーOぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!!」
『ようやく、ゴーサインか……!』
***
しかし、その時、イワサイガミの巨体が宙に浮く。
「うぉぉぉぉぉぉぉりゃァァァァァァァァァァァァアッッ!!」
なんとブレイガーOが、
実に4倍はあろう相手の巨体を持ち上げていたのだ!
「反撃いくぞぉーッ!!」
イワサイガミを投げ飛ばし、ぐ、と貯めるようにしゃがむ。
「ジャンプッ!!」
そしてブレイガーOはその場を即座に離れる。
「爆発魔法推進拳ォッッ!!!」
目標はプリズマエル。
両の拳が高速で撃ち出され、その雪の結晶じみた身体に穴を開ける。
アァァアァンッ!!
奇妙な鳴き声をあげ、全身を仰け反らせたプリズマエルが、直後怒りの砲撃形態へ結晶のように広がる全身を折り曲げて移行する。
「うぉっとぉ!!」
放たれる光線を避け、ブレイガーOは上空高くジャンプする。
「ネオブレイクキィーックッッ!!」
そのまま一回転し右脚を向け、両肩合わせて4基のロケットブースターの加速でプリズマエルへ。
右足に展開する三重構造の魔法障壁が円錐に展開し、反撃の光線を切り裂いてブレイガーOは飛ぶ。
交差。
ブレイガーOはプリズマエルを貫通し、プリズマエルの身体は背後で大爆発するように砕け散る。
「へへ、まずは一体!
うぉっ!?」
ブモォォォォォォンッ!!
喜びもつかの間、現れたギロニアヘッドをコックピットスレスレの位置で白刃どりするブレイガーO。
やはりと言うか、この細身の剣頭の怪物は、イワサイガミ級のパワーを持っている。
ブレイガーOの重量でも余裕で押し出せるほどのパワーを遺憾なく発揮し、踏ん張る地面に二つの線を残してブレイガーOは後ずさるしかない。
「ギロニアヘッドめぇ!!」
ピーピー、と警戒音がなり、援護攻撃のガンクロンのミサイルがブレイガーOを襲う。
「くぅ……流石は邪巨神って名乗るだけはあるなぁ……!!」
土ぼこりを落としながらブレイガーOは立ち上がる。
コックピットの中で頭から流れる血をぬぐい、キッと睨むパンツィア。
「もう容赦しないぞッ!!」
迫るはイワサイガミに向けて、左腕を向けるブレイガーO。
「喰らえッ!!
まずは、爆発魔法推進拳ォッ!!」
その巨体に向かい、爆発するような勢いで拳を飛ばす。
「そしてコイツだッ!!
超合金製実体刃ッ!!」
その途端、ブレイガーOの右腕装甲が開き、超合金スーパーオリハルコン製の刃を内部機械から錬成する。
オリハルコン製のカッターではない、
『オリハルコンを切り裂くもの』と言う名の武装は、拳の軌道上にあったイワサイガミの左腕、ギロニアヘッドの頭部の刀を斬り裂き、ガンクロンの右太ももに大きく切れ込みを入れブレイガーOへと戻っていく。
ギガァァァァァァァァァッ!?!
ズシィン、と左腕が落ち、紫色の血を吹き出す傷を抑え吠えるイワサイガミ。
「まだ終わりと思うなよ!!
コイツも喰らえッ!!
速射貫通榴弾ェェェイドッ!!」
肘装甲が展開し、一度錬金術で分解されていた機械が再錬成されて中から伸びる。
4つの筒を持つ砲身が、肘を曲げて前に向ける体勢で相手へそれを向ける。
この僅かな時間でそのせり出した砲身内で錬成された貫通爆弾は、毎分120発の速度で容赦なくイワサイガミを襲い始める。
チュドドドドドドドドドッッ!!
数秒で身体中を穴だらけにしたイワサイガミは、断末魔すらあげる暇もなく、事切れた。
「2体目……!?
うわぁぁッ!?!」
直後、頭の剣を目の前で再生させたギロニアヘッドが突撃して、ブレイガーOが吹き飛ぶ。
待ってましたとばかりにその先にいたメタデューサの隠された目が開き、あの石化光線を放つ用意をする。
万事休すか……?
「させるか!!ブースターオン!!
そして超合金製実体刃ッ!!」
しかし、次の瞬間ロケットブースターを起動させ、腕から伸ばした超合金製実体刃で思いっきりに突撃。
ギィヤァァァァァァァァ!?!
見事、石化光線を放つ眼の部分に刃を突き立て、石化光線を二度と放てなくする。
キュワァァッ!!
しかし、まだだ、と言わんばかりに吠えたメタデューサは、蛇型触手と残りの腕でブレイガーOを拘束する。
「何ッ!?」
瞬間、全てを察したギロニアヘッドが、その頭部の刃を煌めかせ、大空戦艦を落としたあの勢いで突進を始める。
「クソォ、そっちが捨て身なら……!
こっちだって捨て身だッ!!」
瞬間、コンソールを操作してロックを解除し、その『使う予定のなかった』魔法兵器を発動させる。
「氷属性照射魔法!」
瞬間、ブレイガーO頭部のV字部分の先端の間に魔法陣が展開、寒色の光がブレイガーOを掴むメタデューサの腕や触手に降り注ぐ。
そのとたん、バキバキと音を立てて凍てつく体に、一瞬恐怖を覚えるメタデューサ。
しかし、直後ブレイガーOのパワーで凍った身体の一部が崩れ去り、痛みのない恐怖に叫ぶ。
「さ゛、寒゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!!」
超合金製故に駆動部は凍らないが、コックピット内部は急激に冷えてしまっていた。
息は白く、歯は勝手にガチガチ鳴り、
操縦桿も氷のようで、コンソールはあまりの低音に機能を停止している。
ただ、まだ動く。
「身体動かして、温めないとなぁ!!」
かじかみそうな手で見事に操縦桿を操作して、後ろからやってきたギロニアヘッドを紙一重で避けて、その尾を掴む。
「ずぉぉりゃぁぁぁぁぁぁッ!!」
一回転!
遠心力でふるったギロニアヘッドでメタデューサを真っ二つに切り裂く。
「良い切れ味だ!」
フルスイングしたまま手を離し、ギロニアヘッドは適当な地面に土煙を上げながらぶつかる。
まるで仲間を殺された怒りを表すかのように吠えるギロニアヘッドは、すぐさま方向を転換して頭部の剣をブレイガーへ向ける。
「━━━だけどその切れ味も大陸じゃ、
『2番目』だっ!!」
対し、ブレイガーOは迎え撃つように左腕を腰だめに右腕を胸の前で構える。
「神光切断砲ァァァァァァッ!!」
ブレイガーOの両目が光り、一瞬周囲を白く塗り尽くすほどの光量が放たれる。
ピィィィィィィィィィィッッ!!
真正面から光の筋が通るようブレイガーOと交差するギロニアヘッド。
━━━コックピットからは、縦に真っ二つになったギロニアヘッドの断面図がよく見える。
「よしっ!!流石はジャンさんの作った武器だ!!」
真っ二つになって後ろに落ちた死骸にガッツポーズをする束の間、再びガンクロンのミサイルがやってくる。
「どわぁぁぁぁっ!?!」
ウッキャッキャッキャッキャッ!!
ガンクロンの両肩にコブのような丸い部位にびっしり生えたイガグリのトゲの様な眼のミサイルが襲いかかり、ブレイガーOへ群がる。
「弾幕勝負か……!
受けて立つッ!!」
パンツィアの視界に蠢く眼の数々に、自身の視線と連動させた火器管制魔法を起動させロックオン。
左手でコンソールを操作して、両肩の武装を起動させる。
「爆発魔法推進弾錬成機!!」
ガパァ、とブレイガーOの肩装甲が開き、肩よりも大きな巨大なミサイルと何処に入っていたのか分からない数の無数の小型ミサイルが現れる。
ボヒュンッ!!
一発発射され、錬金術の応用で魔力を消費して次弾が錬成される。
ボヒュボヒュボヒュボヒュボヒュンッ!!
それらによりガンクロンのミサイルの雨と互角の量のミサイルが放たれ、両者の間に爆炎の壁が出来上がる。
ウキャキャギィヤァァァァァッ!!
初めて、不気味な笑いは怒りの声に変わり、ガンクロンの両肩の丸い部位に亀裂が走る。
亀裂は瞼となり、そこから現れた巨大な眼は、巨大な生体ミサイルとして伸びる。
「━━━それがお前のとっておきか!」
時を同じく、爆炎の壁が晴れる。
ブレイガーOの両腕は肩関節の付け根から超高速回転を始め、関節に仕込まれた反重力魔導機構がエネルギーを貯める。
「来い!!とっておき勝負だ!!
大車輪爆発魔法推進拳ォッ!!」
ガンクロンの巨大な二つの眼のミサイルと、反重力の加速とロケット噴射に遠心力を加えた拳が同時に放たれる。
一瞬にして激突!
目を貫いた超合金製の拳が、爆発よりも早くガンクロンに激突する。
ウギャァァァァァァッ!??
「━━━これで終わると思うなガンクロン!!」
Uターンする右拳、左拳を戻したブレイガーOは、その右がガンクロンに再び激突する瞬間に接続部を殴りつけ、ダメージを増やす。
ウ……ギャ……!!
「ラインの仇だ!!!
念入りに倒す!!」
ガンクロンがよろめく隙に、スロットルレバーのトリガーを押して一気に押し上げる。
キィィィィィィィィッ!!
胸部に備えた緑に輝く魔石ダイオードが大きく発光し、計器が示すエネルギー充填率が120%となる。
「コイツでトドメだッ!!!
極大炎熱魔砲ァァァァァァッッ!!!」
スロットルレバーが下された瞬間、胸を突き出した姿勢のブレイガーOから、凄まじい熱量が放たれる。
ギャァァァァァァァァァッッ!!
断末魔と共に一瞬でその体を蒸発させ、あまりの熱量を浴び大爆発を起こす。
これでガンクロンは死んだ。
これにて、ギドラキュラス以外の邪巨神を全て倒したのだった。
***
『おぉぉぉぉぉぉぉっ!!』
ドレッドノートの面々は、この僅かな戦闘の間に起こった出来事に歓喜していた。
「やっぱり強いぞブレイガーO!!」
「ははっ!!僕のデータ通りの武装を、あんな滑らかに使いこなせるだなんて!
流石だぞパンツィア君!!」
「ハハハ、あやつもすごいが、それ以上にブレイガーOじゃ!!
流石はHALMITの総力を結集させて作りし、スーパーロボットじゃいッ!!」
イェーイ、とみなまるでもう勝ったも同然のように騒ぐ。
『━━━━……』
「おう、パンツィア、無事か?」
『ええ、まぁなんとか』
***
けほ、と喉から出てくる苦くて赤い液体を吐き出す。
取り敢えず、応急処置として頭の傷は金属のコの字の針を打ち出す道具━━医療用ホッチキスで塞ぐ。
「ちょっと、まだコックピットの居住性が悪いかなって」
多分、肋骨も折れている気がする。
鈍痛がある、動けば痛い。
だが、それを申告する暇はない。
ついでに痛み止めは頭がはっきりしなくなるから打たない。
「補給お願いします。
後、ブレイガーOの関節パーツありましたよね?」
それよりもブレイガーOだ。
戦闘のダメージか、氷属性照射魔法を腕ごと巻き込んで撃ったせいか、左関節からの異常警報が鳴り止まない。
『む、やはりブレイガーOも無傷とは言わんか……!
任せろ!
はやくせんと今度はギドラキュラスが相手じゃ!』
『オイ、パンツィア!?
右見ろ!!』
ふと、そんな声を聞き急いで右を向く。
ブワサァッ!!
風を巻き上げる強靭な竜の翼。
その主は━━━━吹き飛ばしたはずのギドラキュラス!
「嘘……!?」
『と、飛べるのかぁぁぁぁぁぁッ!?』
ぶわぁ、と強風がブレイガーOを襲っていく間に、巨大な翼を広げて空へと舞い上がっていく。
「カーペルトさん、スクランブルウィンガーを!!」
『焦るな、パンツィア!!
ブレイガーOで空中戦は無理じゃ!
お前が一番わかっておるだろう!!』
「くっ……!!
アレみたいに捕まって行った方が良かったかな……!?」
と、ギドラキュラスの2つの尾の先には…………
「逃すかぁ!!
この野郎!!勝ち逃げは許さねぇぞぉゴォウロルァァ!!」
必死にぶら下がり、暴れてギャアギャア鳴くスカルキングがいた。
「追いかけなきゃ……!!」
『冷静になれパンツィア!!
ブレイガーOの補給を済ませるのじゃ!!
空中戦が危険なのは承知の上だろうに、無茶をするでない!!』
「くっ……!」
その通りだ、まずは落ち着かねば。
激情で動きすぎるのは魔法博士とは言えない……知性が無さすぎる。
……と、冷静に思うも、パンツィアは実はそんなには納得はいっていない。
「……ギドラキュラスはどこへ!?
まさか、人口密集地へ!?!」
***
「くぎぇ━━━━━っ!?
嘘なのぜ、うーそなのぜーっ!?!」
GPSの精度のない情報のせいだと信じたいが、マーシャのスーパーコンピュータは非情なデータを示す。
「ギドラキュラスの狙いは……!!
ブレイディア、ここなのぜ!?
それも首都直撃コースなのぜぇーっ!?!」
***




