センター フィールド
シオンは腰にナイフをぶら下げ歩いた。
なぜかナイフを重いと感じなく足取りも軽やかになった。
ノアがどこに向かっているのかは分からないがシオンは付いていく。
先程までの視線もあまり感じない。
ノアはカフェらしき店に入るとシオンと1番奥の席に案内された。
「コーヒー」
それだけ言うと2人分のコーヒーが出てくる。
シオンを向かい側に座らせた。
ノアの顔が正面にきて目のやり場に困る。
長くて綺麗な茶色の髪。
アーモンドアイで綺麗なブルー。
透き通った白い肌によく似合う。
シオンはついつい口元に目がいってしまう。
唇が動く事にシオンは胸の高まりを感じずにはいられなかった。
しかしそれを感じたのはシオンだけでは無いようだ。
店内にいる人皆が感じた様だ。
彼女が髪をかきあげるだけでみんなの心は奪われる。
きっと彼女に恋しない男はいないんだろうななどと考えているとノアがシオンをじっと見つめていた。
「何かついてる?」
「あ、いや……あの……その、綺麗だなと思って……」
「イタリアって国のメーカーのなの。 素敵よね」
ノアはコーヒーカップを見て答える。
シオンは顔を紅くしながらも頷くしかなかった。
そこからはノアの事がどうしても視界に入ってしまい、緊張してコーヒーの味がよくわからなかった。
2人が店を出るとシオンの時計が震える。
「なんですか!?」
ノアはシオンの腕を持つと時計の横についてるボタンを押した。
「シオン、もう合流できるか? もう限界だ」
ナオキは疲れた声で言う。
その後ろからカエデの声が聞こえてきた。
「ダーリーン。 お姉様。 早く会いたいですよー」
「向かいます」
とシオンが言うとノアがもう一度一緒のボタンを押した。
「これ電話にもなってるんですね」
シオンが言うとノアは頷く。
2人は待ち合わせの中央に高くそびえ立つ歴史博物館へ向かう為に歩き始める。
ノアの真横を歩いているシオンはちらりと横を見た。
頭一個分シオンより低い彼女はとても細く抱きしめたら潰してしまいそうなくらいだ。
唯一出っ張っているのは胸くらいだろう。
かなりの大きさだがシオンはなるべく見ないように心がけた。
ノアは気が付いていないのか真っ直ぐ前を向いて歩いている。
凛とした彼女はとても強いのかもしれない。
シオンは約束したことを思い出していた。
ーー僕の能力は賭け事に勝てるって事です。 僕は賭けます。 絶対にノアさんを残して消えません。
シオンは顔がニヤけるのを抑える。
2人がビルに近付くと遠くからカエデが大きく手を振りながら飛び跳ねていた。
シオンとノアが近づくとカエデはシオンに小走りで駆け寄ってくる。
きっと彼女も可愛いのかもしれない。
ショートボブで綺麗な茶色。
切れ長の目。
スカートをはいているがその下にはスパッツもはいている。
スポーツ少女と言われるかもしれない。
ノアは大体シャツにスカートと決まっている様だ。
正反対の2人だが意外に仲が良いみたい。
シオンは少しずつ関係がわかり始めてきた。
「それで、太郎君と花子さんは?」
「あの2人なら今チケットを買いに行ってるよ」
シオンの腕を引っ張り中に連れて行こうとする。
ピピピ……ピピピ、ピピピ。
シオンの腕時計が鳴る。
カエデがシオンの腕時計の画面をタッチした。
「これって……」
画面に映っていたのは先ほどの大男と10万クロンと書かれた文字だった。
「賞金首を倒したのか? 捕まえたのか?」
「この人はさっき絡んできた人ですね。 確かに倒しましたけどお金貰っていいんですか?」
「いいに決まってるだろ。 そうじゃなきゃやってられない」
シオンは画面をタッチしてみた。
すると現在額に増額された。
シオンはナイフのお金を払った方が良いのかもと思いながら歴史博物館の入り口に向かった。
入り口には警備員らしき男が無愛想に立っている。
みんなチケットを見せるのでシオンも見せると頷いたので中に入った。
中はとても広く奥が見えないくらいの大きな空間が広がっていた。
天井も3階分まで空いている。
展示物は様々だがこの国の歴史がわかる様な気がする。
「ここはこの世界が出来たきっかけが飾られてるからこの世界意外の物もあるんだ」
ナオキが説明してくれる。
みんなは順番に回っていく。
シオンはどれも新鮮だったがみんなは何回も来たことがあるのかそこまで興味は無さそうだった。
「まずこれがトーテムと言うポールで向こうの世界で能力者の家につけられていたんだ」
「なんの意味があるんですか? ただの棒にみえますけど」
確かにそれはただの金属の棒に見えた。
「そうだ。 ただの金属の棒だよ。 これで雷が能力者の家に落ちる様にしたんだ」
「つまり自然に任せて能力者達を殺そうとしたのよ」
カエデが付け加える。
「残酷ですね」
「まぁこれではほとんど死ななかったみたいで逆にこれを見て助けを求めてくる人が増えたみたいだけどな」
ナオキがフォローする。
「次にあるのがこの世界の基盤となった牢屋だ」
そこには文字の彫られた鉄格子が展示されていた。
「これは能力を封じ込める檻だと言われている。 実際に能力が封じ込められるのかは謎だけど。 でもこの檻が出来たことで学園長が新しく世界を創って隔離してしまえば攻撃されないと思ったそうだ」
シオンは鉄格子から一歩下がった。
「次だ。 これがシオサイ国を創った時に起こった戦争の武器、装備品だよ」
そこには禍々しい刀や盾が置かれていた。
「基本的には能力を使うけど弱い能力者はこれで武装したんだ。 ちなみに戦争は20年間続いたんだ」
「20年もですか!?」
「あぁ。 だから犠牲者も大勢いたのさ」
「そうだったんですか……」
「まぁ戦ってくれた人達がいたから今俺たちは安心して暮らせているんだけどな」
「そうですね」
ナオキが歩き始めたのでついていく。
階段を上がると3階まで上った。
「ここの階は主に生活用品の展示だからつまらないがこの世界のミニチュアがあるからそれだけ見に行こう」
生活用品は人類の進化の様にどんどん進化していた。
シオンはそれを見ながら先に進むと大きなジオラマが現れた。
「これでもかなり小さくなっている」
ナオキが言いながら指指したところは今いるところらしい。
「他の大陸はほとんど人が住めない環境だ。 だから今いるここが唯一人が住める環境の場所なんだよ。 ほら丁度この大陸さ」
それはオーストラリア大陸くらいの大きさだったが形は日本の北海道と九州を取り除いた形であった。
「ここが首都だが人口は少ないからまだここだけが街で他は開発されていない」
「人口は?」
「全体で10万人くらいさ」
街のジオラマは東京の辺りだった。
「これが世界……」
「まぁ多少大陸は違うけどな」
シオンはじっとジオラマを見ていた。
「シオン、街って言うのは円形に広がって行くんだ。 ここの街はセンター。 周りに出来た街はフィールドって名前なんだ。 まぁいつのまにかそう呼ばれているだけなんだけどな」
「センター……フィールド……」
シオンは呟くと頭に名前を入れる。
「ねぇそろそろご飯にしない?」
カエデが言うとみんな頷く。
そこからはカエデと花子を先頭にエレベーターに乗るとグングンと上に上がる。
エレベーターが止まるとシオン達は降りる。
そこは最上階であった。
全面ガラス張りのフロアは凄く魅力的だったがシオンは腕を引っ張られ食堂に入っていった。




