伝説の男
マンションを出るとすぐ学園とは反対側に歩く。
「このまま真っ直ぐ行くとスラム街の通りに出るんだ」
ナオキが説明する。
「その途中にある唯一の曲がり道がここさ」
しばらく歩くと確かに曲がり道があった。
「あれ? 前来た時あったかな?」
シオンは思い出そうとする。
「いや、夜や何かあった時ここの道は塞がれる。 ほらここがゲートになってるだろ?」
確かに大きなゲートがあった。
「これで街の中を護っている」
「街の人はみんな能力を持っているの?」
「いやそうでもないさ。 持ってない人もいるにはいる。 只街の中から出ることは出来ないし出ない方が安全だよ」
「能力なくても強い人はいるんですか?」
「昔いたよ。 最強の男と言われていたね。 彼は確かに能力者と対等に渡り合っていたんだけどある日突然この世界から出て行ってしまったんだよ」
「すごいですね」
「確かに凄いと聞いていたよ」
しばらく歩くと街に出る。
「凄いですね。 高層ビルに大きなお店。 この前行った街とは少し違いますね」
「あぁ、真っ直ぐ行ったところにある街は昔はスラムだったところにああして街を築き上げたんだよ。 だから能力者しかいないんだ。 まぁあっちの方が楽しいけれどこっちには色んな物が売ってるし不良もいない」
「ここでは能力の使用は禁止よ」
カエデが教えてくれた。
「そうなんですか……」
「大丈夫だ、ここは安全だからな」
太郎も教えてくれた。
「この街は円形になっている。 あの中心にある1番高いビルがこの国の歴史博物館だ」
シオンが見上げると雲の上まで伸びているビルがあった。
「じゃあお昼にあの塔に集合でしばらくバラバラに店を見るかい?」
「いいわよ、じゃあシオン君は私と行きましょう」
花子が手を引く。
「いえ、ダーリンは私と行くのよ」
その手を払いのけカエデが掴む。
「あのさ、公平に男と女で別れた方がいいと思う」
ナオキが言うと2人はナオキを睨みつける。
「くじにしよう!」
太郎が言うとみんなくじを引いた。
太郎 花子 ペア
ナオキ カエデ ペア
シオン ノア ペアになった。
「お姉様がダーリンと……これは文句言えない」
カエデは崩れ落ちる。
「負けた。 全てにおいて負けた……」
花子も崩れ落ちる。
2人はナオキと太郎に引きずられて街に消えていった。
「どこいく?」
ノアが聞いてくれた。
「そうですね……あの、武器とかって売ってるんですか?」
「武器? 銃は規制されてるから……ナイフなら……」
「じゃあそこに連れて行ってください」
ノアは頷くと歩き始めた。
シオンも後を追う。
しかしシオンはノアから離れて歩きたかった。
先程から何人にも睨まれてるのは当たり前肩をぶつけられるし遠くから何かが飛んできている。
「ノアさん……凄い……」
確かに綺麗だからわからないでも無いけれどこちらの身が持たない。
「……ここを入る」
細い道を入っていく。
ここなら安心だ。
シオンが思った時開けた場所に出た。
そこは行き止まりでいかにも不良みたいな人達がいっぱいいた。
しかしノアは気にせずに歩いていく。
シオンは離れない様についていく。
すると奥に店の入り口があった。
中に入ると年寄りのおじいさんがナイフを研いでいた。
「いらっしゃい。 何かご用かな?」
こちらを見る事なく答える老人はいかにも職人といった感じであった。
「あの、護身用のナイフが欲しいのですけど……」
シオンが言うと老人は手を止めシオンに近づく。
「いいかな?」
老人はシオンに手を出す様に自分の手を出す。
シオンが手を出すと老人は手を見始めた。
「君はナイフなんて使ったこと無いね。しかも別に必要そうでも無い。 最近殴っただろ? 手に跡が残っている。 これはこれは……初めて殴ったのか?」
「え、いえ初めてではありません」
「そうか? まぁそれならいいが……でどんなナイフが欲しいんだ?」
「えっと自分の身を守れるものなら……」
シオンは店内を見渡す。
1番上に飾ってあるナイフが目についた。
ナイフと言うには大きく刀と言うには小さい。
「あれはダメだぞ。 あれは若い頃に作った見た目だけのナイフだよ」
老人は笑って言う。
シオンには凄く良く切れそうに見えた。
「まぁアレは売り物じゃないし人を切ることもできない。 木刀の方がよっぽどいいぞ」
「人が切れないナイフ……」
シオンは呟く。
そこに1人の大男が入ってきた。
「おいじいさん、あのやっぱりあのナイフ切れるんじゃねぇかよ。 寄越せよ」
「アレは切れないナイフだと言うておる。 帰れ」
「切ったのを見たと言っていたぞ」
「見えただけじゃ、実際には切れん」
大男は老人を吹き飛ばすと店の奥に行きナイフを取る。
ノアは老人に駆け寄る。
「大丈夫じゃ。 それよりもあれを止めてくれ」
大男はナイフを振り回している。
そしてシオンを見つけた。
「おい小僧、お前ナイフ持て」
「え?」
「ナイフを持っててくれ」
と言うと男は適当にナイフを取るとシオンに持たせる。
「動くなよ」
と言うとシオンの体から腕を離し固定する。
次の瞬間男はナイフを振り下ろす。
シオンの持つナイフの刃は綺麗に切れていた。
「凄い……」
シオンも思わず声を出す。
「そうだろ、凄いよな。 なぜ切れないと嘘を言った」
大男はナイフを老人に向ける。
その前にノアが立ちふさがる。
「返して」
「綺麗なネェちゃんだな。 でもな返してやらない。 綺麗なまま保管してやるよ」
ノアに向かってナイフを振り下ろす。
シオンは少し大きめのナイフを取るとノアと大男の間に入りナイフを受ける。
「何ッ!? 切れないだと?」
何度も大男はシオンにナイフを振り下ろすがシオンは全てを受け止める。
「そのナイフは……」
老人は少し驚いているがノアが老人の前に立っているのでよく見ることが出来ない。
シオンは相手のお腹が空いてるのを見ると蹴りを入れる。
更に追い討ちをかける様に飛びかかり顔を殴りつける。
大男は倒れたのでシオンはすぐにナイフを奪おうとする。
しかし大男は反対の手でシオンの首を掴むと握りしめる。
シオンは呼吸が出来なくなり気を失いそうになる。
シオンは半分無意識の内に相手の腕にナイフを突き立てると相手の力が弱まりなんとか抜け出す。
「小僧。 喧嘩売ってるのか!?」
男は刺さったナイフを抜き取ると捨てる。
「さぁこれでお前には何もない」
シオンは手探りで棚のナイフを取るとそのまま大男に突撃する。
相手が振り下ろした時にはシオンの姿は消えていた。
「こっちだよ」
大男の背後からシオンの声が聞こえる。
振り向くとシオンは思いっきり顔面を殴りつける。
男はゆっくりと倒れると意識を失った。
「ふぅ」
シオンは老人の元へ歩いていく。
「大丈夫ですか?」
「あ……あぁ。 君は強いな」
「いえ、無我夢中でしたから」
シオンは照れながら答える。
その時大男が目を覚ました様だった。
しかし大男は起き上がることは出来ない。
「すいません。 貴方はもう立ち上がれませんよ」
大男は自分の足を見た。
片足に二ヶ所ずつ切り傷があった。
膝の下と足首が切られていて痛みで立てない様だった。
「今の内に警察を呼びましょう」
シオンがノアに言うとノアはキョトンとしていた。
「警察? なんだ、それは」
老人も知らないようだ。
「悪い人を捕まえる人はいないのですか?」
「あぁ、それなら学園かアダムさんか黒王に引き渡せばいいさ。 学園に引き渡せば相応のクロンが貰えるぞ」
老人は説明してくれた。
シオンが大男を見ていると老人が何やら紙に書いてくれた。
「これを渡せばいいよ」
紙にはシオンの特徴とどう倒したか書いてあった。
「あとそうだ、これをやろう。 これはお礼だ」
シオンが最初に取ったナイフを渡してくれた。
「これは隕石を磨いて作ったナイフでな、少し刃は長いがこれくらいでもいいだろ? それにこれは持ち手を選ぶらしい」
シオンは黒く輝く隕石のナイフと腰に差すためのケースを貰った。
「ありがとうございます」
「あぁ、また来てくれよ」
老人に挨拶すると2人は店を離れる。
ノアは何やら連絡をしているようだった。
シオン達が消えたあとマリアと学園長が現れた。
「やぁシオン君が倒してくれたんだってねぇ。 いやぁ今回は僕の学園の生徒のお陰だよね」
やけにハイテンションで老人に絡む。
「まさかあのナイフが使えるとは思わんかった。 まぁ仕方のない事だがな……」
老人は少し寂しそうだった。
「まぁまぁ気にするなよ。 それよりもこの大男は連れて帰るぞ」
老人が頷くとマリアと大男は消えた。
「あー、そうだ。 今後は気をつけるようにね」
マリアが戻ってくると学園長も消える。
「…………」
老人は床に落ちている中から先ほど大男が切ったはずのナイフを取った。
「やはり切れないか……」
老人は寂しそうに言うと散らかされた店内を独り片付け始めた。
読んでいただきありがとうございます。
ストック無くなりました。




