【四大天使】ミカエル
楽しんでいただけると幸いです!
『_______________っ!!_______________ル!!カケル!!』
誰かが僕を呼んでいる。
それも一人や二人じゃない。
その声は、まるで泣いているようで…………僕は徐々に意識を浮上させた。
「……うっ!」
体を僅かに動かすと、鈍痛に少し呻く。体が若干重たい感じがする。
初め、寝起きで頭がボーッとしてた為、現状を理解するのに少し時間がかかってしまう。
少しずつ頭も覚醒してから、僕は目だけを周辺に走らせた。
「……こ、こは……?」
掠れた声で、やっとそれだけを絞り出す事が出来た。
そこは森だったーー。
青々と茂った木々に、その隙間から太陽の光が差し込み、地面は土と所々草も生えている。
僕の今の状況は、どうやらその一本の木の幹に背中を預け、手足を投げ出した状態にあるようだ。
状況確認は済んだが、益々頭が混乱するばかりだ。
何故僕はこんな所にいるんだろう?
ここはどこだ?
僕は確か、大会に出る為に家を飛び出して……それから……それから…………
そこまで記憶を手繰り寄せた僕は、サーっと血の気が下がるのを感じた。
「っ?!そうだ!!たいか……くっ!!」
漸く、先程までの自分の行動を思い出し、僕は慌ててガバリと上体を起こすも、頭がクラりとして顔を顰めた。
やむを得ず、もう一度背中を木に預ける。
心を落ち着かせる為に、目を瞑って深呼吸をする。
一呼吸。二呼吸。三呼吸……。
そして、再びゆっくりと瞼を開けた。
そこは変わらず……森だった。
「……夢、じゃないよな?これは流石に……」
冷静に、そう判断した。いや、判断せざるお得なかった。
頬を撫でる風。緑の匂い。剥き出しの手で地面を触れば、ジャラりとした土の感触。
それら全てが、あまりにもリアル過ぎていた。
これが夢だと言われれば、逆にそちらを疑ってしまう程だ。
「あ~あ。折角の大会がぱあーだな」
木にもたれかかりながら、空を見上げて一人ゴチる。
こんな状況に陥っても、気にする所はそこか、と自分自身に苦笑する。
でもしょうがないよね?
今回の大会は、僕のデビュー戦……いや、雪辱戦みたいなものだったんだから。
大会に出られるのは中学生からだ。
それまでは、各地区で小さなイベントが行われる程度で、僕は去年中学に上がって、これでやっと大会に出られる!と思って大はしゃぎ。
けれど、実際に大会に出れる事になった本番当日、その会場内の雰囲気に圧倒されてしまったのだ。
何処を見ても人、人、人……その熱気と、皆の鬼気迫る緊張感に、僕は飲まれてしまった。
そして腹痛により、僕は試合を棄権する羽目になったのだ。
自分はそれなりに物怖じしない性格だと思ったけど、意外と脆い所もあったらしい。
その日は悔しくて悔しくて……自分が情けなくて、一晩中布団の中で泣いてたっけな。
だから、今回の大会は僕にとって特別な意味があったのだ。
けれど、そんな願いももう叶わないだろう。
何となく、それだけは確信を持って言えた。
「…………まあ、取り敢えず、いつまでもここでこうしてても意味が無いよな」
まるで自分に言い聞かせるように、僕は思考を切り替える。
一つ、息を大きく吐き出し、重たい体を木も借りて、何とか立ち上がる。
先程よりも大分マシにはなったが、それでもまだまだ体はダルい。
辺りを見回す。
「確か、森で迷子になったりすれば、あまりその場から動かない方がいいらしいけど…………これって絶対アレだよな〜」
僕は、そっち方面はあまり詳しくない。
ずっとカード一筋だったから。
それでも、そう言うのに詳しい親友から聞かされていたこともあり、それと今の現状を照らし合わせて、大体の予測は立てられた。
まさか、自分がそれを現実に経験するとは思わなかったが……。
僕が一歩前に進もうと足に力を込めたちょうどその時、がさりと前方の茂みが揺れたのに気付いた。
僕は何気なくそちらに視線を向け……
「は、はは……マジですか……」
僕の口から、乾いた笑いが零れる。顔が引き攣る。ツーと汗が流れた。
その視線の先に居たのは、三メートルはあろうかと言うライオン。
ただし、普通のライオンでないことは一目瞭然だ。
なんたって、二足歩行で立ってますからね。
「グァァァァァァァ!!」
「っ?!」
僕が身動き取れず硬直していると、ライオンのようなものは巨大な口を開けて咆哮を上げた。
その口からは涎が滴り、その瞳は真っ赤にギラギラとさせつつ、僕を見据える。
完全に僕を獲物と捉えているようだ。
逃げなきゃ。逃げなきゃ。逃げなきゃ!!
しかし、僕の思いとは裏腹に、足は竦んで一向に動いてくれそうにない。
そうこうしてる内に、ライオンがニタリ…………と笑った気がした。
僕が逃げない事に気付いたのか、ゆっくりとノシノシ僕の前に歩み寄り、ライオンが大きく右腕を振りかぶる。
その動作は、まるでスローモーションの様で……
死ぬ!!
瞬時にそう思った僕は、ギュッと両目を瞑り、無駄な抵抗と思いつつも、腕をクロスさせて顔面の前にやる。
その時、胸の辺りがポっと熱を持ったような感覚と同時に、体から何やら力が抜けていくような感覚を覚えたが、この時の僕は、そんな事を気にする余裕など何処にも無かった。
僕が次に襲ってくるだろう痛みに身構えてると、だがしかし、それは中々訪れようとはしなかった。
僕は恐る恐るキツく閉じていた瞼を開ける。
その視線の先に居た者に、僕は目を見開く。
そこに立っていたのはライオンではなく……………人間の男性だった。
黄金色に輝く髪。
ウェーブがかった髪を肩まで伸ばし、綺麗に切りそろえられていた。
右手には、メラメラと燃え盛る炎の大剣。
彼の足元には、先程まで恐怖の対象でしかなかったライオンが、真っ赤な目をカッと見開いたままで倒れていた。
彼は後ろ姿だった為、顔は判別出来なかったが、何よりも一番目を引いたのが………………彼の背に生えた、一対の純白の羽根だった。
有り得ない。そんな筈は無いと思いつつも、先程とは違った動悸が耳に響く。
こんな事、非現実的過ぎる。
そもそも、こんな所に居る事事態まだ受け入れられないと言うのに。
まだ、更に先があると言うのだろうか。
混乱する頭で、僕は目の前の男性の一挙手一投足に注視する。
その男性が、ゆっくりと僕の方に顔を向ける。
振り返った男性の顔を見て、僕は驚愕に目を見開いた。
その顔を、僕が見間違える筈がない。
今まで、穴が開くほど見てきたのだから。
そう。彼は、僕の愛すべき仲間の一人ーー【四大天使】ミカエルその人であったのだからーーー。
[ミカエル]
ミカエルは、旧約聖書からユダヤ教、キリスト教、イスラム教へ引き継がれ、教派によって異なるが三大天使・四大天使(三大天使+ウリエル)・七大天使(四大天使+α(教派や聖典ごとに異なる))の一人であると考えられてきた。彼はユダヤ教、キリスト教、イスラム教においてもっとも偉大な天使の一人であり、「熾天使」として位置づけられることもある。
キリスト教ではミカエルが死の天使として人間の魂を秤に掛けるという。
「ミカエル」という名前を直訳すれば「神に似たるものは誰か」という意味になるが、『タルムード』では「誰が神のようになれようか」という反語と解される。
カトリック教会では、ミカエルは大天使聖ミカエルの称号で呼ばれる。日本ハリストス正教会では現代ギリシャ語とロシア語読みから転写し、神使ミハイルとよぶ。
(Wikipediaより)
二つ名?を考えるのが難しいです!
「四大天使」って、まんまやないかい!(爆