5. 秋
本日の予想最高気温は29℃だそうです。十月なのに! 夏なら30℃以下だと過ごしやすいな〜と感じますが、今は秋ですからね。
秋……ですよね? 秋の虫(個別の名前がわからん)もいっぱい鳴いているし。金木犀の香りも漂っているし。
金木犀ってどこまで大きくなるんでしょうね。そんな大きな木のイメージじゃなかったんですけど、大きいのってすごく大きいですよね。二階の屋根に届きそうなのとかありません? それって普通? なんとなくちょっと見上げるくらいの高さの木が多いような気がするのですが。
それにしてもあんなに香りの強いお花も珍しいですよね。沈丁花もそうですけど、すっごく小さなお花なのに匂いはすれども姿は見えないなんてこと、よくありますもん。だからって花に鼻を近づけてクンクンしてみても強烈な香りがするわけでもなくて。はっきりした香りではありますけど、これがどうしてそんな遠くまで届くのだろうと不思議になります。
匂いと言えば焚火の匂いも好きです。落ち葉を燃やしたりしているのでしょうか。どこからともなく漂ってくる匂い。洗濯物に匂いが移る心配もないわけじゃないんですけど、郷愁を誘うというんでしょうか、なんかしんみりとした気分に浸ってしまいます。あれも結構遠くから漂ってきますよね。匂いってすごい。
秋は木々の色が落ち着いてくるのもいいですよね。
秋と言えば紅葉。モミジやイチョウの鮮やかに色づくのも美しいですが、地味に茶色く枯れていくのも結構好きだったりします。むしろそっちのほうが好みですね。物悲しくせつない感じ。胸の奥がキューンとなる感じ。心地よい胸の痛み。いいですよね〜。恋に似ています。
秋という季節全体にこの感じが満ちている気がします。なんとなくセンチメンタルになったり、人恋しくなったりするのってこういうところですよね。きっと。
まだ空気は冷え切っていないのに吹く風にひんやりした冷たさを感じる時、思わず深く息を吸い込んでしまいます。そこに秋の香りを感じると涙が溢れそうになります。
季節ごとの風の匂いはきっと気温とか湿度とか花や植物の匂いが混じってその時期だけの匂いとなるのでしょう。空気が冷えるほどにその匂いは濃くなる気がします。今の時期はその入口。
これからそういう季節が巡ってきて、そういう気分になっていくのだなぁという期待。そんな期待も含めていいなぁと思ったり。
秋は下っていく感じがします。
夕暮れに似ている気がします。
そしてやっぱり恋に似ている気がします。
せつなさと愛しさと。すべてを抱き締めたいのに形などなくて。もどかしい想い。ほろ苦くてしくしくと胸を締め付けて。息なんて浅くしかできなくて。でも深く吸い込みたくて。痛くて。苦しくて。でももっとこのままでいたくて。つらささえ感じるのにやわらかく包み込まれるような気もして。この世のすべてを抱き締めたくなるような。心がほろほろとほどけてどこまでも広がっていくような。
今年もまたそんな季節が始まるのかと思うと、心が膨らんでいくのです。高くなっていく空を見上げ、千切れ雲に想いを乗せたらどこかに届くのではないかと思ってみたりするのです。
静かに燃える秋はもうすぐそこまで来ています。
別の天気予報を見たら、予想最高気温31℃でした。え~。もうっ、秋ったらのんびり屋さんなんだからっ。