表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/36

20. 束縛

 え~、まず初めに、お断りしなくてはなりません。これまでにもたま~に少数派であろう嗜好を披露してきましたが、今回は超少数派です。

 もし、まだあまり女性との接し方をご存じない方がいらっしゃいましたら、これからお話することはほとんどの女性には当てはまらないということを忘れないでください。むしろ多くの女性は、私の趣味の対極にあると思っていただければよろしいかと存じます。自ら申し上げるのは非常に哀しいものがありますが、わたくし、少々……いえ、かなりおかしな感覚をしていると自覚しております。

 なので、この回をご覧になってなんらかの不利益を被ることがありましても当方では責任をとれませんのでご了承くださいませ。(と、一応言っておきます)

 パートナーに束縛されるのが好きです。つまり彼氏やダンナですね。

 ただ、ここで大事なのは、言葉での束縛であること。物理的干渉や身体的抑圧、つまり暴力は問題外です。当然のことです。そんなことみなさんおわかりですよね。


 恋愛において多少の嫉妬はいいスパイスだと思います。たぶんこれは一般的な感覚だろうと思っています……が! 私のはそんなもんじゃありません。激辛スパイスが私には激甘なのです。

 ええ、ええ。聞こえますとも。みなさんの心の声が。「こいつ、Mだな……」って。そして「わかったから、早く本題に入れよ」って。……はい。すみません。


 むか~し昔のその昔、とても嫉妬深い彼氏がおりましたとさ。

 そんなお話をします。


 付き合いはじめ、私は社会人で、彼は学生だったということもあるのかもしれません。

 嫉妬深い上に会社ってものを知らない彼からは、それじゃあ仕事にならないよ! ってことを要求されたりしました。男と口きくな、ってやつですね。

 いやいや無理でしょ。もちろん口ききますよ。仕事だもん。


 あとはスカートはくな、ってやつですね。

 いやあ、これの方がきつかったですね。子供の頃から私、スカート派なんですよ。今もパンツはほとんど持っていません。

 当時は私も若かったからミニスカートが多かったので、さもありなんと思いました。でもロングスカートでもだめだと言われて。その人と付き合っていた五、六年は一切スカートはきませんでしたね。

 あ、いや、友達の結婚式にはワンピース着ましたね。猛反対されたから、そのうち何回かはパンツスーツで出席したりもしました。

 それ以前に二次会への参加を止められましたっけ。参加しましたけど。だって、披露宴だけじゃなくて式から参列するくらい親しい友達ですよ? 二次会に誘われれば参加するに決まっているじゃないですか。


 でもまあ、彼の不安もわからなくはない。会社でさえ男と口きくなって言うくらいですもの、結婚式の二次会を出会いの場として描くドラマとかもあったし、実際そういう話も聞きましたもんねぇ。世間は知りませんが、私の周りでは合コンなんて言葉さえなかった頃の話でございます。時代を感じますわねぇ。(だれだ、あんた)


 とはいえ、まったく彼の取り越し苦労ってわけでもなくて、結婚式ってあれ、なんなんでしょうね。声かけられる率、高いですよ、ほんとに。幸せな新郎新婦見て憧れちゃうのって女性だけじゃないってことですね。こんな私でさえ何度か声かけられてますもん。

 一度なんか弟の結婚披露宴で、弟の友人から「お姉さん、綺麗ですね~。彼氏とかいます? 俺と付き合いません?」って。どこのナンパ師じゃい、おいっ!


 ……話がそれました。


 まあ、スカートはいたって、ナンパされたって言ったって、激怒されることはなかったんですが、ぐちぐち言われましたね。ってか、馬鹿正直に報告する私もどうかと思いますが。

 そうそう、時代のせいか、若かったからか、昔は(昔って寂しくなるな…)横浜駅周辺とか歩いているだけでナンパされたんですよ。草食系男子なんて呼び名がなかった時代ですね。バブルはとっくに弾けていましたが、みんなまだ浮かれていたんでしょうね。けして私がモテたって話ではないんだと思いますよ。残念ですが。


 ……お、おう……またもや話がそれました。


 ボトムスだけじゃなくトップスも制限がありましてね。襟元が開いてちゃダメなんですよ。

 いや、うん、わかるよ。胸元が見えるほどセクシーなのはさすがに、ね。そうじゃなくて、シャツのボタンは一番上まで留める、カットソーとかTシャツとかNG、でしたからね。Tシャツだよ!?

 当時、私、仲間内で芝居やっていまして。稽古着ってTシャツなわけですよ。しかも彼も同じ劇団だからどんな格好しているかバレバレなわけですよ。

 って言ってもですね、そんな彼だから襟周りの小さいTシャツとか着るようにしていたんです。でもダメでしたねぇ……。

 まあ、無理ですよね。芝居やっていた人ならわかると思いますが、舞台袖で早着替えとか普通にありますしね。

 だから私、芝居やめましたよ。それだけが理由じゃないですけどね。でも理由のすべてが彼ですよ。だって芝居やっている彼女はいやだって言うんだもん。


 あ。ちょっと待って。引かないで!! なんだか、みなさんが遠く感じます……。

 さすがに芝居辞めたのはつらかったけど、それ以外は彼の望みなら全然オッケー! って感じだったのです。めんどくさいけど、嫌じゃなかったんです。むしろちょっと快感だったりして。


 お出かけしても男性店員さんとは口をきかせてもらえませんでした。注文とか会計とか彼がしてくれました。ラッキー。

 もうよく覚えていないんですが、男性店員さんが置いたお水を飲むのも本当は嫌だったんじゃないかなぁ。そんなことを言われた気がします。


 電車でも男性の隣の席は座らせてもらえなくて。

 でもそんなだから、立っていても壁ドンみたいな体勢で守られているのでキュンキュンでしたけどね。


 うん。聞こえる。みなさんの声が聞こえるよ……「どっちもどっち」って。

 だから言ったじゃ~ん。束縛されるの好きだって。


 でもね、そんな人、滅多にいません。ええ、そうね、いたらいけないでしょうねぇ……。

 とはいえ、私は好きなんだもん。

 愛情とは別物だとわかっていてもそういう扱いってキュンキュンしちゃいます。


 ──まあいいわ。今は妄想で我慢します。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ