15. 濃い顔
十代の頃から指摘されつつもずっと自覚していなかったんですが、最近ようやく認め始めました。
私、濃い顔が好きみたいです。
西洋系の彫りの深い感じよりはなんていうんでしょう……濃厚な感じが好きです。えっとね、東南アジアとか中東系の顔立ちですね。わかります? 端正な濃さより泥臭い濃さ。
なんかこういう表現をしちゃうと有名人とか特定の名前を出しにくくなっちゃいますね。褒めているのが伝わりにくいから困っちゃう。
これね、男女問いません。
以前、仲のいい後輩(女)に「顔濃いよね」と言ったら嫌われました。褒めたつもりだったのでわけがわからず、やはり仲の良かった先輩(女)に相談しました。
「Kちゃんのことを顔が濃いって褒めたらなぜか怒られちゃった~。どうしてかなぁ?」
先輩は即答。
「顔が濃いって褒め言葉じゃないからじゃん」
ええ~っ! マジっすか!? 派手な顔と言ったらちょっとどうかと思うけど、濃い顔って言うのもダメなの!?
彫りが深いも微妙で、はっきりした顔立ちという言い方ならセーフらしい。
え……難しい……。
だってさぁ、「派手な顔」と「彫りが深い顔」と「はっきりした顔」と「濃い顔」ってどれも違うじゃん。私は濃い顔が好きなのであって、その隣接ジャンルには興味はないのです。
でもまあ、なんとなくはわかりますよ。顔のタイプを二つに分けたならそれらは同じグループだってことは。ただそれって男女を分けるくらいの大雑把な分類じゃないですか。
それに好きなものほど微妙な差がものをいうじゃん。ちょっと違うだけで好みからはずれたりするじゃん。好きなものほどこだわりがあるじゃん。
で、わかんないならその話題に触れるなというアドバイスをもらったんですが、わかんないってことに気付いていなかったからこういうことになったわけで……。
想像力の欠如と言われればそれまでですが、私だってどう思われるか微妙だなと感じたらわざわざ口にしたりしませんって。なんの疑いもなく魅力となる要素だと思ったから言ったまでで。
実はこういうこと、よくあります。かなしいかな、私の好みは一般的ではないことがあるようです。まあねぇ、好みなんてものはだいたいが人それぞれなんだろうけど、偏りはあるじゃないですか。で、その少数派であっても問題はないんですが、その自覚がないと私みたいなことになります。そう、問題は好みが一般的でないことじゃなくて、その自覚がないことなんです。難しいよね。自分の感覚が当たり前とは思っていないけれど、それほどかけ離れていると思っていないわけで。
そんなこんなで、リスクが高すぎるので最近は口にしないようにしていますが、これからもし濃い顔を褒める機会があれば「あなたみたいな濃い顔って大好き」って言おうと思います。
だからね、私はなにを言われても傷ついたりしません。──あれ? ちょっと飛躍しすぎました?
では行間埋めましょうかね。
いちおう、こんな図太い神経した私でも言われた言葉にズキッとくることはあるんですよ。でも即座に「もう私ったらばかね。なに勘違いしてるのかしら」って思うのです。
わざわざ面と向かって悪口を言う人なんているわけがないというのが私の持論です。もしそう聞こえたなら私の被害妄想に違いないのです。それかジョークに気付かなかっただけ。
まあねぇ、世の中には人を傷つけるのが好きな人もいないとは限りませんが、少なくとも私はそういう人とつながっているつもりはありません。
ただこれは私がそう思うってだけなので、相手がそう思ってくれるとは限らないし、たぶん思ってくれないでしょう。
だから私は好みの濃い顔の人と出会っても心の中で思うだけにしています。「ああ、なんて濃くて素敵な顔なのかしら」って。
はい、恒例の脱線おしまい。
でね、この好みはどちらかというと男性に対して強く反応します。女性はねぇ、メイクとかではっきりした顔立ちにできるからねぇ。あまり特別感がないんですよ。
それに「濃い顔好きだね」とよく言われたのも男性の好みに関しての言葉でしたからね。好きな有名人であったり、彼氏であったり。
けどね、有名人はともかく、彼氏は関係なくない? 顔で好きになるわけじゃないし、場合によっては私から興味を持ったわけじゃなかったりするのに。にもかかわらず、かなりいろんな人から何度も言われました。「濃い顔好きだね」。
そのたびに「え~? そんなことないよ~!」と言っていましたが、冒頭で述べました濃さの種類で分類したところ、ある種の濃さには非常に魅力を感じている自分に気が付いたのであります。
もっと細かく……う~ん、パーツで説明するとわかりやすいかもしれません。
顕著なのは目元ですね。目が大きく、眉が太く、まつ毛が多くて長い。目元が黒っぽい印象ですね。
私の上まつ毛より立派な下まつ毛だったりしてね。なんでもまつ毛が長くて眼鏡のレンズに当たっちゃったりするとか。羨ましすぎる。分けてくれ。
眉も放っておいたら繋がっちゃいそうなくらいしっかりした感じが好きです。でも繋がっていないのを希望。
ほらね。彫りが深いのとはちょっと違うでしょう? え? 同じ? ちがうよ~! もおっ、なんでわかんないかなぁ!?
……あ。この流れでほかにも話したいことを思いついたけど、なんか語りすぎた感じなので続きはまた今度。
濃い話でこってりしたかと思うので、去り際はあっさりと。では。