85 対抗戦9
今日から本格的に学校や仕事が始まった方が多いのではないでしょうか。作者も今日から仕事の日々がスタ-トします。皆さんがんばりましょう。
お話の方は相変わらず二人の熱戦が続いています。この次の投稿で決着が付く予定ですが、果たしてどうなるか・・・・・・
観衆たちのどよめきの中で、まったく彼らの理解を超える攻防を続けるさくらと橘、ここまで両者は全く譲らず互角の展開を見せている。
双方ともここまで決め手を欠いているように映るが、これは互いに長所を発揮させないように牽制し合っているためだ。それにお互いの手の内がわかっているので、大きな一撃を無闇に放つとそれを逆手に取られて反撃を受ける可能性が高い。
それだけに何とか相手を出し抜いて隙をつこうという探り合いが繰り返されていく。
「二人とも一つ一つの動作が全て駆け引きに繋がっていますね」
ディーナが心底感心したように元哉を見る、その目はこの戦いを観戦する事で様々な物を吸収しているようだ。
「そうだな、高度な戦いになればなるほど一撃で決まる可能性は低くなる。互いに心・技・体全てを使って相手を上回ろうとするためには、そこに必然的に駆け引きが生まれてくる。技だけに頼ってもダメ、体力に頼ってもダメ、精神論など論外だ。全てを高度な次元でバランスよく保てる者しか辿り着けない領域の戦いが今目の前で繰り広げられている」
元哉がこれだけ雄弁に語ることは極めて珍しい。彼はディーナはもうこのレベルの戦いの入り口に手が掛かるところまで達している事を認めているからこそ、これほどまで丁寧に説明している。
そして元哉の言葉がそのまましっくりと自分の中に入っていくのを感じ取るディーナ。わずか半年前は剣の初歩を覚えたばかりの身だったにもかかわらず、その成長振りは驚異的だ。
さくらは自分がこの戦いを心から楽しんでいることに気づく。今出せる全てを総動員してもその堅い守りを中々破れない橘の存在に深く感謝している。
姉妹として育ちながらも同時に互いを高め合う強力なライバルがそこに居るのが素直にうれしかった。そして自分が目指す最強への道のもっと先には元哉が立ちはだかっている。今はまだ追いつける見通しは立っていないが、いずれは元哉にも真っ向から立ち向かえるようになりたいと考えている。
さくらが『強さ』を求める強い欲求を持っているのに対して、橘はもっと冷静に自分の存在を捉えている。
彼女は魔力の全てを元哉に依存している以上、決して元哉を上回る事は無いと自覚している。それはさくらも同様ではあるが、それでも尚且つ強さを求めて足掻くさくらとは考えの根底が違っている。
彼女の強力な魔法は体内に潜む天使の力がその根源となっており、橘はその天使を通して真理に近づく事を追い求めている。
それはどちらかというと知識欲に属するもので、この宇宙のあり方や次元の構造を知りたがっている。だからと言ってそれさえわかれば後はどうでも言いという訳でもない。彼女は貪欲なところがあって、欲しいと思った物は手に入れたいのだ。それは決して物欲が強いという訳ではなく、人としてあるいは人を超える者としてさらに高い所を目指そうとする向上心に繋がっている。
橘にとっては強さを手に入れるのはその一環に過ぎない。元哉を上回る事は無理だが、自分がどこまで強くなれるか知りたいという好奇心がある。橘はその好奇心を満たすために、この場でさくらと熱いバトルを交わしている。
「相変わらずはなちゃんはしぶといね!」
さくらが珍しく呆れた声を出す。人から呆れられるのはしょっちゅうだが、彼女が何かに呆れるというのはまず見た事が無い。それほど隙が無い橘の攻守に手を焼いている。
「理詰めで隙の無い攻撃を破るにはこちらも無傷でなんて虫のいい事は言っていられないよね!」
どうやらさくらはダメ-ジ覚悟で橘に挑む決意を固めたようだ。最高レベルまで身体強化を引き上げ、その体を包む赤い魔力が炎のように高く吹き上がる。
そのまま橘の周囲を不規則に動きながら徐々にその距離をつめようとする。
「さくらちゃん勝負に出るつもりね」
彼女の魔力が吹き上がる様子を見て橘も覚悟を決める。
精神を研ぎ澄まして迎撃のためにその進行方向に向けて氷弾を放つ。だが全速で動くさくらに対して橘の演算が追いつかなくて、徐々にその氷弾はさくらが通り過ぎた位置に飛び出すようになる。
「チャンス! 攻撃を振り切れる!!」
さくらは急に距離をつめて橘に接近する。
「しまった、このままでは追いつかない!!」
目では追えないがさくらが接近しつつある気配を感じ取った橘は、急遽自分の中でのんきに昼寝をしている天使をたたき起こす。まだ寝惚けている天使とリンクを繋いでその演算能力を補う。
それによって何とかさくらの現在位置を捉えた橘だが、もう彼女は目の前で攻撃態勢をとっている。
それを見て天使と二人掛でフル稼働をしてシールドを展開していく橘、だが天使の助けを借りている分先程よりも短時間でさくらの猛攻をしのぐシールドを構築する。
「ん! さっきよりもシールドの展開が速いね! はなちゃん何か手を使ったな! ではさっさと退散しますか」
さくらが再び後退しようとしたちょうどその時、橘の左手から圧縮した魔力が放たれる。その魔力には当然のように爆発の術式が組み込まれている。
そしてその術式は見事に後退しようとしていたさくらを捉える。
「ドカーーーーン!!」
耳をつんざく様な強力な爆発音ともうもうと上がる黒煙、観衆はそのあまりの威力に息を呑む。果たしてあんなものすごい爆発に巻き込まれて無事なのかと心配顔で見守る。
貴賓席でも元哉以外の面々が心配そうにバルコニーから体を乗り出してその様子を見つめる。
だが元哉だけはドリ○のコントのように爆発に巻き込まれたさくらの髪の毛がチリチリになって口から黒い煙を吹きだす姿を想像して一人で爆笑していた。さくらがこの程度の爆発でダメージを受ける事など全く心配していない。
さくらは一瞬逃げるのが遅れてフィールドの端まで吹き飛ばされていた。地面に背中から着地して7回転半してようやく止まる。そして何事も無かったようにむくっと起き上がる。
「いやー! ちょっと油断しちゃったよ。思ったよりも反撃が早かったね」
頭を掻いて反省の弁を述べるさくら、MAXまで高めておいた身体強化と常日頃から鍛錬を怠らない受身のおかげで何とか無傷だ。
「あれを食らって平気で起き上がるの!」
橘はその様子を見てさすがに呆れている。彼女の感覚では10ポンド爆弾と同程度の威力にしておいたはずだ。それをモロに食らって平気で立ち上がってくるとはどれだけ丈夫に出来ているのか見当が付かない。
フィールドの端の方で頭を掻いているさくらを見つめる橘、だがその表情は硬い。もしかしたら今の一撃が決着をつける絶好の機会だったにも拘らず、それを逃した事が後々響かなければよいがと一抹の不安が脳裏をよぎる。
対するさくらは、ちょっとした過信が形勢を簡単に覆すことに繋がると再び肝に銘じている。圧倒的に有利と思って攻撃をしていたら一瞬でこの有様だ。
目の前で捉えかけていた橘だったのに、今は自分がフィールドの一番端まで飛ばされてその距離は50メートル。また距離をつめていく事から開始しなければならない。
「まったくやれやれだね」
一つ呼吸を整えてから、改めて橘に向かって足を踏み出すさくらだった。
「こんにちはディーナです」
「こんにちはロージーです」
(ディーナ)「負け犬ロージーさん、前回の話の続きですが私が性格が悪いという人は一人も居ませんでしたよ!」
(ロージー)「うう、く、悔しい・・・・・・」
(ディーナ)「ということで今日もホンワカ明るいお姫様の私ディーナとここで床に手を突いて凹んでいる負け犬でお送りいたします」
(ロージー)「ディーナちゃん、最近私に対する当たり方がちょっとひどすぎです!」
(ディーナ)「まだロージーさんは一人前には程遠い修行中の身ですからね、そういう人はボロ雑巾と同じように扱えとさくらちゃんが言っていました」
(ロージー)「ボロ雑巾・・・・・・(絶句)」
(ディーナ)「でも私は優しいのでお風呂にはロージーさんと一緒に入って上げますよ」
(ロージー)「私の存在価値はお風呂しかないんかい!!」
(ディーナ)「そうですね・・・・・・もう少し腕が上がるまでは、お風呂要員という事でお願いします」
(ロージー)「ああ、早くレベル上がらないかな(タメ息)」
(ディーナ)「大丈夫ですよ、この試合が終わったらどうせさくらちゃんがうずうずし出して魔物を狩に出掛けますから」
(ロージー)「本当! 本当だよね! そうすれば私もこのボロ雑巾生活から脱出できるよね!」
(ディーナ)「それはロージーさん次第ですよ。頑張ってください」
(ロージー)「こんな私でもどうか応援してください。感想、評価、ブックマークをお待ちしています」
(ディーナ)「次回の投稿は木曜日の予定です。」




