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81 対抗戦5

予定よりも1日早いですが、続きを投稿します。


いよいよ二人の対戦がやってまいりました。果たして結果はどうなるのか・・・・・・

 試合を終えてディーナが元哉たちの所に戻ってきた。


「ディーナ、危なげのないいい戦い方だったぞ」


 滅多に褒める事の無い元哉からの一言だけにディーナの喜びはひとしおだ。戦いの最中は冷静を心掛けていたのだが、一気に歓喜でいっぱいの表情になる。


「元哉さん、ありがとうございました。これも皆さんのおかげです」


 笑顔で頭を下げるディーナを一同は『おめでとう』『頑張ったね』などと声をかける。拗ねていたロージーも笑顔を取り戻して、『さすがです』と喜んでいる。


 彼女の試合で午前中に予定されていた試合は終わったので、大会は昼の休憩に入る。


 元哉たちが陣取る貴賓席でも昨日同様に皇女も同席しての和やかな昼食が始まる。だがさくらは別室にいるので、現在テーブルに並んでいる食事の量は人数分の当たり前の分量だ。


「どうもさくら教官がいらっしゃると食事の量の基準がわからなくなります」


 これは皇女アリエーゼの率直な感想だ。こと食事に関してはさくらだけが基準外なのであって、その他の者は当たり前の量しか食べないのだが、皇女から見れば元哉たちもその有り余る力の分だけ食事も大量に取るようなイメージを持ってしまうらしい。これもひとえにさくらの責任だ。


「午後はいよいよお二人の対戦ですね。一体どのような素晴らしい戦いが見られるのか、今からワクワクいたします」


 皇女の意見はこの場にいる元哉以外の者に共通する見解だ。何しろかなり長く一緒にいるディーナでさえさくらと橘が対戦するところなど見た事が無い。


 限りなく強大な力を秘める二人の対戦が一体どのような結末になるのか想像する事すら出来なかった。


 その場にいる皆が口々に様々な展開の予想を始める。時には元哉も意見を求められるが、彼は『見ればわかる』と全く取り合おうとしなかった。


 元哉は予備知識無しでこの最高の一戦を皆に見せたかった。だから敢てその予想に口を挟むことはしない。


 皆が『ああでもない』『こうでもないと』議論が白熱する中で、この大会の役員の紋章を付けた係の者が貴賓席を訪れる。


「お話中申し訳ありません。さくら選手からの伝言をお伝えいたします。昼食が足りないので持って来て欲しいとの事です」


 その言葉にその場にいる全員がひっくり返った。今朝元哉がわざわざ控え室まで同行してかなり多めに食事を渡しておいたはずだったのだが・・・・・・


「あいつ、目の前の食べ物に我慢出来なくて朝からずっと食べっぱなしだったに違いないぞ」


 元哉の予想は正解だった。食べ物を我慢できないさくらは、昼を前にほとんどのご馳走を食べつくしていたのだ。

 

 それでいて昼食が足りないとリクエストしてくるとは・・・・・・対戦を前に神経が太いにもほどがある。


 仕方無しに元哉はアイテムボックスの中身を確かめて、ちょっと足りなさそうなので皇女からも料理を分けてもらってから、さくらが待っている控え室に向かった。


「さくらちゃんさすがですね。まさか、昼ご飯のお替りをしてくるとは・・・・・・この分だったら体調は絶好調と見ていいですね」


 ディーナは少し呆れながらも、さくらの心配などするだけ無駄だとすでに悟っている。他の面々も大体同様だ。




 元哉が戻って来たのはちょうど午後の試合が始まるところだった。ややげんなりとした表情の元哉にその場にいる者たちは『きっとさくらちゃんの食欲に呆れて戻って来たんだ』と理解している。





 午後の試合は順調に進み残るは大将戦だけになった。ここまでは魔法学校が5ポイントに対して騎士学校は4ポイントでこの対戦によって今年の勝敗が決する。


 大将戦のさくらと橘の試合は事前の申し合わせに沿ったルールで行なわれ主な内容は次の通り。


・橘は範囲魔法による攻撃と殺傷性の高い魔法は使用しない。


・さくらは魔力擲弾筒を使用しない。


・お互い相手を可能な限り傷つけないように配慮する。


 以上が二人の対戦で交わした申し合わせだ。どちらも一撃で相手を死に追いやる攻撃が可能なので、下手をすれば殺し合いになってしまう。


 それを避けるためにこのルールが存在する。仮に橘が範囲魔法を使用して攻撃をすると、それだけで決着が付いてしまうし、さくらが擲弾筒を使用しても同様の事が起きる。


 したがって橘は魔法を駆使して、さくらはその肉体を武器にして危険を回避しながらお互いを上回る事だけを目指して戦うように定められたルールだ。




 この試合見たさに詰め掛けた観衆で満員の闘技場は大将戦が始まる前の異様な静けさに包まれている。誰も瞬き一つをするのも惜しいくらいに、これからこの会場で行われる一戦の全てを見逃してはなるまいと目を凝らす。


 やがて最後の一戦の開始を告げるファンファーレが鳴り響き、静まり返った会場は一転して大歓声に包まれる。


 その中で魔法によって拡声されたアナウンスが会場の隅々まで良く通る声でこれから対戦する二人の紹介を始める。


「西方、魔法学校教官の橘選手は先の戦いにおきまして魔法でアライン渓谷に巨大な要塞を築き上げて帝国の守りに大きく貢献しただけだ無く、その精密な魔法を駆使して矢に爆裂の魔法を組み込んで我が軍が教国を退ける事に多大な貢献をいたしました」


 聞いている本人が気恥ずかしくなるような紹介が行われて、その活躍ぶりが伝えられると観衆からはヤンヤの喝采が送られる。


 実際に敢闘門に向かう通路でこの紹介を聞いていた橘は心の中で『余計な事は言わなくてよろしい』と苦りきっていた。


「東方、騎士学校教官のさくら選手は、アライン要塞を迂回しようとして山岳地帯に侵入した敵兵5000人に対して単騎で応戦しその3分の1を撃破して敗走させてだけでなく、敵の3000騎の騎馬隊を単騎で蹂躙して我が軍に勝利をもたらしました」


 その活躍ぶりが伝えられると観衆からは『ウオーーーーー!!!』とものすごい歓声が沸き起こる。


 橘とは反対側の通路でその声を聞いていたさくらは『ふふん、皆さん中々わかっているじゃない』と喜んでいる。さくらは褒められて伸びる子だ。


「救国の英雄と呼ぶべき両者の対戦、一体どのような歴史に残る一戦が繰り広げられるのか・・・・・・観衆の皆さん、あなた方が歴史の生き証人です!」


 アナウンスはヒートアップする観衆をさらに盛り立てる。それに煽られて収拾が付かない程の大歓声と熱気が会場を包み込んだ。


 かなりの時間がたってようやく潮が引くようにその歓声が収まってから、いよいよアナウンスが選手の入場を告げる。


「西方、魔法学校教官の橘選手が入場します」


 歓衆に見守られて橘が闘技場の中央に進む。白いローブに身を包んだ彼女を見て観衆はその体に包み込まれている圧倒的な威厳に息を呑んだ。


『これは本物に違いない』


 少し目の肥えた者ならすぐにわかる、その恐るべき魔力を内包した橘は自然体でその場に立っているだけだ。だが、彼女がそこにいるだけでその存在感は際立っている。なにしろ大魔王様だ、その威光に包まれた姿は見る者の視線を引き付けて止まない。


 橘の登場とその存在感に圧倒された観衆は声も出さずにその対戦者の登場を待った。何しろ5000人の敵兵を一人で蹴散らすつわものだ。さぞかし立派な偉丈夫が出てくるものと固唾を呑んで待ち構えている。


「東方、騎士学校教官のさくら選手が入場します!」


 アナウンスの声に敢闘門に登場したさくら・・・・・・それを見た観衆全員が揃ってきれいにコケた。


 ちんちくりんな体で両手に手甲をしているだけで何の武器も持っていない、そんなさくらの姿を見た観衆はこれが本当に救国の英雄なのかと誰もが目を疑った。


 観衆がさくらを目にしてどう反応すればよいのか悩んでいる時に、大勢が居並ぶスタンドの其処彼処で直立不動の姿勢で彼女の登場を迎える者たちがいる。


 彼らは私服姿で観客に紛れて警備をしている特殊旅団の隊員たちだ。その体に染み付いたさくらへの恐怖は未だに拭い去れない。


 一部にはこの恐怖こそが自分たちを過酷な任務に駆り立てるエネルギーになると喜んでいる者まで出る始末。さくらのシゴキが最早癖になっている彼らは、この先真っ当な社会生活を営めるのか少々不安になってくる。



「両者中央へ」


 審判が改めて注意事項を伝える。その間目を合わせていた二人の闘志に火が付く。


「やっと私たちの番が来たわね」


「お腹もいっぱいだし、こっちは絶好調だよ!」


 短い言葉のやり取りの後開始線まで下がっていく二人、いよいよ大魔王と獣王の戦いの火蓋が斬って落とされる。

「こんにちは、ディーナです。今私たちは試合の観戦で手が離せないのでこのコーナーはお休みです。たくさんのアクセスとブックマークありがとうございました。引き続き感想、評価、ブックマークをお待ちしています。次の投稿は月曜日の予定です」

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