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80 対抗戦4

お待たせしました。今回はディーナの活躍です。どのような試合になるのでしょうか・・・・・・

 宿舎に戻った橘は早速元哉とさくらの3人で話し合いを持った。


 さくらは『いいよー!』の一言で賛成し、元哉は『どれだけ力になれるかわからないが、いいんじゃないか』と了承する。


 その結果を全員を交えての話し合いで伝えて、フィオレーヌの同行は承認された。


「それにしてもそんな相手じゃロジちゃんは負けてもしょうがないね」


 さくらはロージーに勝利した彼女の事を珍しく褒めている。それだけフィオレーヌの魔法は洗練されていた。ひょっとしたら橘よりもその運用は巧いかもしれない。橘は結構力任せといった所があるので、彼女のように小さな魔法を効果的に使用するといった発想は無用のものだった。『強力な魔法を惜しみなく放って押しつぶせばよい』それが大魔王橘の戦略思想だ。


 だが、その戦略が通用しない相手・・・・・・たとえばさくらがそれに当たるが、そのような相手に対しては大いに参考になる戦い方だった。




「最近なんだか私の影が薄いような気がします」


 ディーナがぼそりと呟く。確かに彼女が注目される場面が少ないのは事実だが、明日はいよいよ彼女の出番だ。


「ディナちゃん、明日は格好いいところを見せてよ!」


 さくらは励まそうと思ってディーナに声をかけるが、横にいたロージーが拗ねた表情をする。


「どうせ私は格好悪い姿を見せましたよ!」


 試合が終わった直後は安堵感で何も考える余裕がなかったロージーだが、宿舎に戻ってからは悔しさを強く感じていた。ましてこの先その勝者と一緒に行動するとあっては、彼女のライバル意識がいやがうえにも高まっている。


「ロジちゃんはまだいっぱいお勉強する事があるんだから、この程度の結果は当たり前のことだよ!」


 人一倍『お勉強』が大嫌いなさくらが言う事なので普段は説得力に欠けるが、敗戦直後だけあってロージーは素直に頷く。


「そうですよ! ロージーさんは冒険者になって日がまだ浅いんですから、この先もいっぱい色々学んでください」


 ディーナもさくらに便乗して先輩風を吹かせるが、そんな彼女に元哉から声がかかる。


「ディーナは明日の準備は大丈夫なのか?」


 元哉はディーナが油断から怪我をしないよう戒めるために声をかけたが、ディーナは調整が順調にいっている様子で自信たっぷりに答える。


「はい、明日の朝さくらちゃんと軽く組み手をしてから出発します。誰かのように負け犬になるつもりはありません!」


 きっぱりと言い切るディーナ、これは彼女の性格が悪いからではなくて、ロージーに発奮材料にして欲しい為に口から出た言葉だ。だがそれを真に受けたロージーはイジケた目でディーナを見る。


「ディーナさん、それはひどいんじゃありませんか!」


 抗議をしてくるロージーをディーナは一言で切り捨てる。


「悔しかったら勝ちなさい」


 そのやり取りを聞いている元哉は、いつの間にか頼もしくなった彼女を見て満足そうに頷いている。この言葉はディーナが仲間になった頃から毎日のように言い聞かせてきた。


 どんなに稽古でぶちのめされても決して折れる事無くここまで一緒に旅をしてきたディーナだからこそ口に出せる言葉だった。


「さあ、明日もあることだし早めに食事を取って休みましょう」


 橘の一言でこの場はお開きになり、この日は過ぎていく。




 翌日、馬車で闘技場までやって来た一行。ロージーたちは昨日同様に貴賓席に向かい、試合に出る3人は専用の控え室に入った。ただしさくらの控え室には元哉がついていき、大量の食事をアイテムボックスから出してテーブルに並べておく。


「うほほー! 兄ちゃんこれでヤル気が出るよ!!」


 さくらは果たして試合に対するやる気を出しているのか、食事に対してやる気を出しているのかは定かだない。だがその目がキラキラと輝いているのは事実だ。


 規則によってそんなさくらを放置して元哉は貴賓席に戻った。今日も皇女が臨席しており、元哉が代表で挨拶をしにいく。


 皇女アリエーゼは『特にさくらと橘の対戦を楽しみにしている』とにこやかに話をしてきた。


 席に戻った元哉はソフィアが用意してくれたお茶を飲みながらのんびりと観戦モードだ。


 対抗戦最終日は魔法学校と騎士学校の教官が双方から10人ずつ登場してその技術を競う。勝った方が1ポイントで大将戦だけは2ポイントがついて、ポイントの多い方が今年の勝者となる。


 双方ともに学校の名誉を賭けた一戦だけに、気合の入り方が尋常ではない。選りすぐりの優秀な教官が選抜されて試合に出場する。


 また勝敗によって次年度の生徒の志願者にも影響を及ぼすから、学校側はその運営上も必死にならざるを得ない。中には試合で目にした教官に教えを請いたいと志願する者もいるので、教官一人一人の戦い振りがより重要となる。


 この日ディーナの出番は4番目、そして橘とさくらの大一番は大将戦となっている。両校とも最高の教官を大将に選んだことは言うまでもないが、これは二人が望んだ対戦でもあるのでこのような配置になることは致し方ない。


 呼び出しに合わせて最初に登場したのは、立派な金属鎧に覆われた騎士とルトの民の魔法使いだった。両者ともこの対抗戦の常連らしく、それぞれに応援の声が上がる。


 殊に魔族と呼ばれているルトの民が民衆からも受け入れられて応援されている姿は元哉の興味を引いた。魔法学校の女子生徒からの声援も盛んに飛んでいる。


 その対戦は魔法使いの圧勝に終わった。だが勝者だけでなく力なくうな垂れる騎士に対しても『次は頑張れよ!』と暖かい声援が飛ぶ。観衆はこの国で最高レベルの魔法と剣技を見に来ているので、その攻防に大いに満足している。


 ましてや今回は両校も力を合わせて戦争に勝利した祝賀会も兼ねているので、終始このような和やかなムードで対戦は進んだ。



 そしていよいよディーナの出番がやって来る。


「東方、魔法学校代表ディーナ選手」


 呼び出しの声に合わせて出てきたディーナの姿に、対戦者の騎士だけでなく観衆も一様に驚きの声を上げる。魔法使いなのでてっきりローブ姿の者が出てくると思っていたのが、ディーナは普段の自分の装備であるミスリルの剣と暗黒龍の盾を手にして登場したのだ。


 そのまるで剣士のような姿に観衆はいぶかしんだ様子で闘技場の中央を見つめている。だが、これから一体何が起こるのかといった期待感も満員に埋め尽くされた会場には漂っている。


「はじめ!」


 審判の掛け声とともに騎士が突進を開始する。彼は最初はディーナの姿に戸惑った様子だったが、相手が魔法使いならばやる事は変わらないと覚悟を決めて先手を奪いにきた。


 対するディーナはその様子を見ながら剣に魔力を流し込む。


「ファイアーボール!」


 上段に掲げた剣を振り下ろしながら、最初の1発目の魔法を発動する。ディーナが得意の闇魔法『ダークフレイム』などを発動すると大惨事になるので、ここは初級の魔法にしておく。


 観衆はディーナが剣から魔法を発動した事に、信じられない物を見た表情で呆然としている。冷静なのは彼女の事を知っている魔法学校の関係者だけだ。


 そして一番慌てているのは、目の前で剣から魔法を発動された対戦者だった。突進を開始した所で自分に向かって特大の火の玉が向かってくるのだからたまった物ではない。


 慌てて突進をやめて盾に身を隠して何とかその魔法による攻撃を凌ぐしか手立ては無かった。


 やがて信じられない物を見た観衆が少しずつ我に返り始める。彼らは口々に『今剣から魔法が飛び出したよな』と周囲に確認をしだした。自分の目で見たものが真実であることを確信すると、次第に歓声が沸き起こる。初めは小さかったものが今では地を揺るがす程の巨大な歓声に包まれる闘技場。


 盾に身を隠して亀のようになっている騎士に対して、今度はディーナから接近をする。彼女は自分の剣が正規の騎士に対してどのくらい通用するか試したい考えが有った。


 その動きを見て取った騎士はわざわざ自分のフィールドまでやって来た魔法使いに対して軽く仕留められると思った。ディーナの初撃を受けるまでは・・・・・・


 盾をかざした騎士の横に回りこんで振り上げた剣を打ち込むディーナ、騎士が予想していたよりもその動きは遥かに素早くて、剣速が速い上に狙いが正確だ。


 騎士の誇りにかけて魔法学校の教官に剣で負ける訳にはいかない。渾身の力で下から剣を振り上げてディーナの剣を弾き返そうとするが、想像以上に彼女の剣は重い。見たところ体格も普通だし一体どこにこのような力が隠されているのか理解できない騎士は次第に剣でも追い詰められていく。


 対するディーナは余裕のある表情で的確に先手を奪って騎士を防戦一方に追い込んでいく。彼女は伊達にさくらや元哉に鍛えられてきた訳ではない。今では純粋な剣技においても達人の一歩手前程度には上り詰めていた。


 小柄な少女にしか見えないディーナが剣でも騎士を圧倒する光景を目にした観衆からは歓声が止む事が無い。魔法学校の代表が剣で騎士を圧倒するなど前代未聞の出来事だ。


「私もこんな大歓声の中で戦っていたんでしょうか?」


 ロージーが元哉に話しかける。彼女は自身のプレッシャーを吹っ切ってからは、試合に集中していて歓声を気にすることが無かった。それだけにこの大歓声は彼女にとって信じられない事だった。


「そうだな、ロージーの時は特にオッサンくさい歓声が多かったぞ」


 元哉が率直な感想を述べる。彼女は宿屋の娘だった頃からなぜか同年代にはモテなくて、オッサン連中には可愛がられるという悩みを抱えてきた。それだけに元哉の言葉は彼女の精神を鋭く抉る。


「いいんです・・・・・・私の事は放って置いてください」


 ロージーはそれだけ言うともう何も話さなくなった。その目は死んだ魚のようになっている。


 闘技場の中央ではディーナが試合を決めにかかっていた。


 両者が距離を取って睨み合う中で、騎士は絶対的な不利を感じている。剣でも押されているだけでなく、魔法使いのはずがまだ1発しか魔法を放っていない。恐らくまだ隠し玉があるはず、ここは防御に徹するしかない。


 そう彼が覚悟を決めている頃、それをあざ笑うかのようにディーナの剣が光りだす。その光の周囲にはパチパチと小さな稲光がまとわりついている。


 そしてディーナは冷静に目標を定めて声を発した。


「雷撃!」


 相手を死に至らしめないように極々威力を弱めた電気の塊が小さなスパークを煌めかせながら騎士に襲い掛かる。


 その光景を目撃した騎士は必死に盾に身を隠そうとしたが、ファイアーボールと違って電気が空気中を進む速度は音速の数倍に及ぶ。


 間に合うはずもなくディーナの雷撃を浴びて騎士は意識を失った。


「勝者、魔法学校代表ディーナ選手」


 勝ち名乗りを受けて観衆に向けて挨拶をするディーナ、騎士には回復魔法を使える者が駆け寄る。


 何とか意識を回復した騎士と握手をして控え室に戻るディーナには、割れんばかりの歓声と拍手のシャワーが浴びせられていた。

「こんにちは、負け犬でオッサンにしか人気がないロージーです。今私は精神的にどん底なのでこのコーナーはお休みです。来週から復活すると思いますのでお楽しみに。感想、評価、ブックマークお待ちしています。次回の投稿は日曜日の予定です」

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