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78 対抗戦3

大変お待たせいたしました。年末で忙しくて書く時間が取れません。年内はこれが最後の投稿になります。もし奇跡的に時間が出来れば投稿しますが、次回は年明けの1月5日頃になりそうです。


この小説を書き始めて約半年、ここまでお付き合いいただいたことに感謝いたします。それでは皆様どうぞよいお年を。

 ロージーの戦いのあと、闘技場では準決勝の第2試合が行われた。


 魔法使いの生徒同士による試合は、魔法学校のトーナメントを制した女子生徒が勝利して、その結果対抗戦史上初となる女性同士の決勝戦が行われることになった。


「ディーナさんだったら、あの魔法使いの生徒をどうやって攻めますか?」


 彼女の試合を見ていたソフィアがディーナに尋ねる。ソフィアはまだ色々な事を吸収していく段階なので、ディーナはその質問に丁寧に答えた。


「あの子の攻撃は中々隙がないですけど、守りの方はどうでしょうか。たぶん学生同士では攻撃をされる前に片が付いてしまって、攻撃を受けた時にどう対応するのか見てみたい気がします」


 ディーナは具体的な攻撃の事よりも自分が目で見た感想を述べるにとどめた。その方がソフィアが自分で考える事が出来るだろうという配慮だ。


 ソフィアは恐らく自分で考えろという事なんだろうとは思いつつ、参考までにさくらにも意見を求める。


「さくらちゃんならどうしますか?」


 さくらは試合を観戦しながらその間お菓子を食べ続けていたが、その手を止めてソフィアに向き直った。


「決まっているでしょう! 全ての魔法を正面から叩き壊して心をへし折る!!」


 自信満々に言い切るさくらだが、ソフィアの予想通りに全く参考になる意見ではなかった。だがそれを可能に出来るさくらだからこそ、明日橘との試合に臨めるわけだ。


 ソフィアは特訓の時自分がさくらに向けて放った魔法を全てコブシ一つで消し飛ばされた。その呆れるほどの強さといったら、自分と比べるのもおかしいくらいに高い所にさくらはいる。


 そのさくらは再びお菓子に向き直り、口の周りをお菓子の屑で汚している。この小さな少女の強さの秘密は一体どこにあるのだろう?・・・・・・ソフィアの興味は尽きない。



 決勝戦は準決勝の1時間後に始まる。対戦者の体力と魔力が十分に回復する時間が必要なための措置だ。


 その間は会場では『一体どちらが勝つか』『どんな試合になるか』などといった話が飛び交っている。中にはこっそりと賭け屋でどちらかの選手に賭けている者なのか、この試合の行く末を祈っている者まで現れる始末。


 そんな喧騒に満ちていた観衆の視線は決勝戦の始まりを告げるファンファーレとともに、闘技場の中心に釘付けとなった。


「西方、ロージー選手」


 会場の呼び出しの声とともにロージーが登場すると、割れんばかりの歓声が闘技場を包む。


 ロージーは試合に集中しているのか、その歓声に動じることもなく正面を見つめている。


「東方、フィオレーヌ選手」


 同じようにロージーに負けない歓声に包まれて登場する対戦者。彼女も会場を気にする素振りを見せていない。


 規定の訓練用の皮鎧をまとったロージーに対して、フィオレーヌは魔法学校の生徒が着用する黒いローブ姿。


 剣と魔法一体どちらが勝利するか、固唾を呑んでその様子を見守る観衆たち。


 静まり返った闘技場に開始を告げる声が響き渡る。


「はじめ」


 これまでの対戦と同じように双方の距離は20メートル、どうやってこの距離を詰めるかがロージーの勝利の鍵になる。


 対するフィオレーヌは距離を詰める間を与えずに、魔法を当てることが勝利につながる。


 最初に攻撃したのはやはりフィオレーヌの方だ。彼女の武器は詠唱短縮と連続魔法。無詠唱とほぼ変わらないタイミングで魔法を発動できる。


 だがそれよりもすごいのはそのリロード能力の方だ。同じ種類の魔法であれば繰り返して何度でも魔力を集めるだけで発動できる特技を持っている。つまり最初の一回の魔法をごく短い呪文で発動すれば、あとはオートマチックで次々に同じ魔法を繰り出せるのだ。


 それだけでもすごい事だが、彼女のもう一つの特技は空間を3次元で捉えてその空間内のどこからでも魔法を発動できることだ。


 この世界の魔法使いは自分の手に魔力を集めてそこから魔法を発動するのに対して、彼女は自らが設定した任意の場所に魔力を飛ばしてそこで魔法を発動することが可能だ。


 つまり相手の前方に注意を向けておいて、後ろから魔法を発動させる事が出来る。これが魔法学校最強の生徒会長の実力だ。


 仮に橘であったら思った場所に天から雷や隕石を落とすことが出来る。だがディーナやロージーは手元からもしくは剣から魔法を発動することしか出来ない。


 フィオレーヌは空間を3次元座標で捉えて、その距離や方向のベクトルを制御するだけの計算能力を備えており、その頭脳はこの世界には有り得ないほど高度な知能を備えている。



 そして彼女はロージーに向けて正面からアイスボールを5発打ち出した。ソフトボール程度の氷の塊がロージーに向けて飛んでいく。


 想像してほしい、雪合戦で同時に5発の玉が飛んできた時に、どうやって避ければよいのか。それも巧妙に軌道をずらしてあって、簡単には避ける事が出来ないようになっている。


 ロージーは自分に向かってくる氷の塊に対して2発を剣で弾き、1発をバックラーでかわし、残りの2発を身を屈めてやり過ごした。


「ふー、ずいぶんいやらしい攻撃ね。相手の避けにくい所がわかってやっているみたい」


 初弾を受けきったロージーの感想だ。もっとも彼女もディーナやソフィアの魔法を受ける練習はしているのでこのくらいなら対処は可能だ。


 だがその時彼女の背後で風を切る音がする。振り向く暇もなく躊躇わずに前進するロージー。


 そしてまた今度は前から氷の塊が飛んでくる。その次は右から左から・・・・・・


 さすがのこのままでは防戦一方で何も出来なくなるので、ロージーはやむなく決断する。


「シールド」


 この大会でロージーは今まで魔法を使ってこなかった。一応騎士学校の生徒扱いなので、あまり魔法に頼る戦いはしたくなかったのだが、今はもうそんなことは言っていられない。


 前から飛んでくる氷をシールドで防ぎながら、後ろや横から飛んでくるものについては素早く動いてかわす。


 ただロージーの魔法量はそれほど多くないので、シールドをいつまでも張り続けているわけにもいかない。それに彼女のシールドでは10発程度の氷が当たると砕けてしまうのも難点だった。


「ロージーさん、結構苦戦していますね」


 その戦いの様子を貴賓席で見つめるディーナが意外そうな様子で話し出す。


「あっちこっちから氷が飛んできてロジちゃん思ったように動けないからね。でも勝っても負けてもいい勉強になりそうだね」


 さくらはその様子を気にも留めずにお菓子を食べ続ける。彼女にとってはこの戦いの勝敗などは二の次だった。もっと将来のロージーの成長に役立てばいいと考えている。


 観衆は二人の高度な攻防を見て沸き返っている。初級魔法にもかかわらず見た事がない高度な運用とそれを防ぎながら隙をうかがう剣士。二人のこの戦いは永遠に続くのではないかと思われた。


 だがその終わりは不意に訪れる。


 氷の塊の攻勢が一時止んで、ロージーはチャンスとばかりに前に出ようとする。だがそこにフィオレーヌの罠が仕掛けてあった。


 罠といってもごく単純なものだ。アイスボールを飛ばすのを一先ず止めて、ロージーの周囲の地面を凍らせただけだ。


 それが終わったら再び四方からロージーに向けてアイスボールを打ち出す。


 フィオレーヌの巧みな誘導に引っかかったロージーは凍った地面に一瞬足を取られる。その結果背後から飛んできた氷が5発彼女の背中にぶつかって、勝敗は決した。


 何とか起き上がって悔しそうな表情でフィオレーヌが勝ち名乗りを受けるのを見つめるロージー。だが全く歯が立たなかったのは事実だ。今はそのことを自分で受け止めようとしている。


 背中は痛むが自分で回復魔法を掛けたのでもうダメージはない。それよりも宿舎に帰って今はゆっくりと休みたいとボーっとしながら考えていた。


 そんな時に勝ったフィオレーヌが握手を求めてくる。お互いの健闘を称え合って握手をする二人。


「ロージーさん、いい試合でした。私がこれだけ魔力を使ったのは初めてです」


 笑ってロージーを称えるフィオレーヌ。その束ねたブロンドの美しい髪が日差しに煌く。


「防戦一方で何も出来ませんでした。勉強になりました」


 ロージーは結果はともかくとして、これでやっと肩の荷が下りることにホッとしている。


「ロージーさん、お願いがあるんですが・・・・・・橘教官とゆっくりとお話がしたいのですが、取り次いでいただけますか?」


 丁寧な言葉で頭を下げるフィオレーヌ、彼女は魔法学校で橘の存在は知っていたのだが、戦争やら何やらでここまで挨拶が出来なかった。


「わかりました聞いてきますので、控え室で待っていてください」


 ロージーはそう言って貴賓席に向かう。


 しばらくして橘を伴い彼女が待つ控え室にやってきたロージー、ドアをノックすると『どうぞ』と返事が返ってきた。


 控え室の中に入るとフィオレーヌが立ち上がって二人を迎える。


「お忙しいところありがとうございます」


 わざわざ自分のために足を運んでくれた橘に挨拶をする。


「優勝おめでとうございます。いい試合でしたよ」


 橘もにこやかに言葉を返す。


 控え室の簡素な椅子に腰を下ろすと、早速フィオレーヌが切り出した。


「橘教官、以前からお話がしたかったのですが、中々機会がなくて遅くなりました。魔法学校生徒会長のフィオレーヌです。ところで教官『日本』という国をご存知ですか?」


 彼女の口から語られた唐突な言葉、この世界の人間が知るはずのない国『日本』という言葉が一体なぜその口から飛び出してきたのか、全く想像を超えたその発言にさすがの橘も答えに窮するのだった。  

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