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72 対抗戦に向けて

またまた話しはさくらたちに戻ります。

 帝都では対抗戦の日が近づいてくるにつれて、街の話題は『今年はどちらが勝つか』『生徒のトーナメントは誰が優勝するか』などの話題で持ちきりとなっている。


 特に今年は戦勝の祝いも兼ねているとあって、街の人々の気分もいやがうえにも盛り上がっている。


 対抗戦は5日間の日程で行われ、はじめの3日間で各校の生徒がトーナメントによって8人の代表を決定する。


 4日目には魔法学校代表と騎士学校代表の合計16人が、トーナメントで優勝者を決定する。


 今年の下馬評では魔法学校が圧倒的に有利との予想が下されており、その根拠は橘が教えた無詠唱で魔法を放つ生徒たちの存在だ。


 元哉が訓練した特殊旅団の兵士ならば彼らに対抗できるのだが、秘匿部隊であるために表に出ることはない。


 したがって今年は上位を魔法学校が独占するとの見方が大勢を占めている。


 そして最終日には両校の教官同士の模擬戦が組まれている。


 両者の激突は春に行われる騎士団と魔法師団の対抗戦と並んで、帝国最高レベルの対戦として毎年注目の的だ。


 元哉達も今回に限り参加をすることになったが、話し合いの末にロージーは生徒のトーナメントに、ディーナは教官の対抗戦に出場することになった。


 それはロージーが訓練生扱いで騎士学校に所属していたのに対して、ディーナは橘の助手として魔法学校に在籍していたことが原因となっている。


 実はその裏には騎士学校の強い要請があったことも事実だ。このところ5年続けて生徒のトーナメントは魔法学校から優勝者を出しており、今年も無詠唱の魔法を放つ生徒が大挙して出場する。


 ロージーは彼らを破る騎士学校の切り札として、生徒枠での出場を要請された。一緒に訓練を受けた特殊旅団の兵たちからも後押しを受けて、さらには皇女までが『騎士学校の名誉のために出てほしい』と言い出す始末。


 アリエーゼ皇女も3ヶ月様々な経験をした場所だけに、思い入れがあるようだ。


 ここまでされると気のいい宿屋の娘は断れない。騎士学校の臨時訓練生という立場で生徒の代表として参加することになった。


 もちろん校内のトーナメントを勝ち抜かなければ対抗戦には出場できないので、ロージーは剣を中心にしたトレーニングを開始している。


 とは言ってもロージーの操る2刀流は騎士たちの剣術とはかけ離れたかなり変則スタイル、特殊旅団の兵士の中には彼女を真似て2刀流で戦う者もいるが、貴族の子弟は見た事が無い戦い方だ。


 トーナメントで使用する刃引きのショートソードとナイフを使って、さくらを相手にして今日も訓練に励んでいる。


「遅い!」


 さくらに突きをかわされて、剣を引くのが一瞬送れたところに足払いを受けて地面に転がされる。


「さくらちゃん、早過ぎです! これ以上早く戻すなんて無理ですよ」


 地面に転がったまま泣き言をこぼすロージー、さくらから見たら全ての攻撃が遅いのだが特に目立ったところをこのように指摘している。


「ロジちゃん、相手は待ってくれないからね! そこを乗り越えてこそ次の段階に入れるんだよ」


 普段いい加減なさくらだが、こと戦闘になるとまるで別人だ。的確なアドバイスを送っている。


 彼女たちはトーナメントで対戦する騎士学校の生徒のレベルを知らない。一緒に訓練をした特殊旅団のレベルは知っているものの、一般の騎士過程で学んでいる生徒たちとは対戦したことがなかった。


 もちろん彼らの剣筋や剣技もわからないので、今のうちに出来るだけレベルアップをしておこうという目論見でさくらを相手にして厳しい訓練を続けている。


 一緒にいるディーナとソフィアは二人で魔法の練習をしたり、時にはロージーの相手も務める。


 彼女たちが訓練している近くの見学席には、騎士の候補生数人の姿があった。彼らは皆北部貴族の子弟で今回のさくらの活躍にあまりよい感情を抱いていない。


「ずいぶん野蛮な戦い方だな! あれが救国の英雄だって言うのか」


 未熟な彼らの目にはさくらが仕掛ける絶妙なフェイントや駆け引きの数々を見抜くことが出来なかった。


「ああ、まるでサル同士が争っているかのようだ」


 一人が調子に乗って嘲りの言葉を口にするとそれに釣られて笑い声が起きる。


 さくらの耳に観戦席にいる数人の生徒の会話が届く。彼女は耳がいい、300メートル先でお金が落ちる音を聞き逃さない。そしてダッシュして拾ったお金を持ってコンビニに飛び込み、夏はアイス冬は肉まんを購入するという特技がある。


 橘からは『拾ったお金を自分の物にするのは犯罪』と言われているが、そんな彼女に対してさくらは『はなちゃん、バレなきゃ犯罪じゃないんだよ!』とどこ吹く風だ。


 ロージーとの組み手の手を止めて、ツカツカと彼らに歩むさくら。その表情は弱い者イジメをするガキ大将のようだ。


「ああ君たち、暇だったら訓練に付き合ってもらえるかな?」


 と言いながらさくらの手はすでに一人の生徒の襟首を掴んでいる。彼らの拒否権は認めない方針だ。


「離せ、我らを誰だと思っている!」


 さくらに引きずられて席を離れたその生徒はわめき散らしているが、どうやってもさくらの手を振り払うことが出来ない。 


 どうやら彼が一番身分が高い生徒のようで、一緒にいた者たちは見捨てるわけにもいかず、あとを追うように付いてくる。


 さくらは引きずって来た生徒をディーナの前に無造作に投げ捨てると、わざとらしい表情でいかにも面白い事を思いついたように話し始める。


「えー、どうやら私たちの練習に協力したい人が現れましたので、まずはディナちゃん相手をしてください」


 さくらはまず最初にディーナを指名した。いきなりロージーと対戦させるのではなく、彼女に相手の技量を見させるところから始める方針のようだ。


「貴様、このような無法なことを・・・・・・」


「教官命令だよ!」


 生徒が何かを言おうとしたので面倒だから強権を発動するさくら。この学校ではどのような立場の者であろうと生徒でいる限りは教官命令には逆らえない。それが法に反していない限りは。


「私がやるんですか!」


 ディーナはまさか自分にお鉢が回ってくるとは思っていなかったので、いきなりの事に驚いている。


「ディナちゃんは魔法の方が得意だけど剣もそこそこいけるから頑張ってね。ディナちゃん魔法は無しでやってね!」


 さくらの指示に『はあー』と気のない返事をしてロージーのショートソードを借りて構える。


 生徒は魔法使いが相手と聞いて楽な勝負だと気を取り直して腰の剣を抜いた。生徒が持っているのはもちろん訓連用の刃引きの剣だ。


 生徒は手にするロングソードを構える。得物は生徒の方が有利だ。


 彼の目にディーナは同じ年頃のいかにも非力な少女にしか映っていなかった。


「どうぞ掛かってきてください」


 ディーナのこれまた気の無い声が飛ぶ。その体にはまったく力が入っていないように生徒には映る。ディーナとしては無駄な力を入れずに自然体で立っているだけだ。


 生徒は馬鹿にされているような気になって、一気に勝負を決めてやろうと渾身の踏み込みで剣を上段から振り下ろした。


『ガシーーーン』


 生徒の全力の剣を片手で簡単に受け止めるディーナ。それもそのはずで、彼女はレベル60近くに対して生徒は10を超えた程度。勝敗など最初から明らかだった。


 続けざまに振るわれる剣を余裕を持って受け止めるディーナ、彼女はその場から全く動いていない。


 それどころか左手を腰に当てて右手だけで軽々と生徒の剣を捌いている。


「もう少し頑張りましょうですね、えいっ!」


 ディーナが少し力をこめて生徒の剣を跳ね飛ばすと、その勢いに押された生徒は尻餅をついた。


 そしてその首にディーナの剣が突きつけられる。


「参りました」


 全く相手にされないばかりか、同じ年頃の少女に軽くあしらわれた屈辱に塗れて彼は降参した。


 こうしてさくらの命令に従って、その場に連れてこられた生徒5人は次々に叩き伏せられていった。


 そして最後に彼女たちを『サル』と呼んだ生徒にはさくら教官自らの特別訓練が施された。さくらは意外と根に持つタイプで、仕返しはきっちりとする。


 もちろん降参など認めない、訓練に名を借りた制裁は生徒が白目をむいて意識を失うまで続いた。






 こちらは魔法学校、サッカーグランドほどの広さの演習場を貸切りにして橘と元哉の特訓が行われている。


 屋外ではあるが万一の事を考えて橘がシールドで覆っているため、外にはその影響が及ばない。


 そのため橘の魔法を一目見ようというギャラリーで見学席は溢れ返っている。


「じゃあ行くわ」


 橘は組み上げた術式を元哉に向けて放つ。この術式は氷の弾丸が砕けると同時に対象を麻痺させる電流を流して、最後には爆裂の術式が発動する3段構えの魔法だ。



 その術式は元哉にぶつかる手前で発動して、氷が砕け、電流が流れ、爆発する。だが、元哉が常にその身にまとう分厚い魔力の壁を越えることは出来ない。


「なんという見事な術式!」


 見学席からはため息が起きる。橘が見せる高度な技巧はもはや芸術的ですらある。術式の重ね掛けだけでも困難を極めるのに彼女はそれを当たり前のように使いこなしている。


「まあまあの威力だったぞ」


 元哉は橘の魔法に評価を下す。


「うーん、この程度ではさくらちゃんもきっと対策を講じているでしょうから微妙なところね」


 橘の自己評価は相変わらず厳しい。それは目指しているところが高いためだ。


 さくらには基本的に魔法が当たらない。あの素早い動きで全ての魔法を避けてしまう。当たらない的に当てるという無茶振りから始めないといけないのだから、橘にとっては難問の連続だ。


 心理的な罠を仕掛けてもさくらの単純思考に全て突き破られてしまう。かといって正面からの力勝負を挑むと今度はかわされてカウンターが飛んでくる、橘にとってさくらは非常に厄介な相手だった。


「やっぱりあの手しかないのかな・・・・・・」


 考え込む橘、さくらとの対戦に向けた彼女の試行錯誤は続く。 

「こんにちは、ディーナです」


「ヤッホー! さくらだよ!!」


(ディーナ)「さくらちゃん、よかったんすですか? 貴族のお坊ちゃんたちをボコボコにしていましたけど・・・・・・」


(さくら)「別にあの程度気にすることないよ」


(ディーナ)「私、なんだか弱い者イジメをしているようで、気が引けたんですよ」


(さくら)「ディナちゃん、何言ってるの! あれは弱い者イジメだよ! 悔しかったら強くなってみろってことだよ」


(ディーナ)「きっぱりと言い切りましたね! まあこの世界は弱い者は生きていけない所ですからね」


(さくら)「そうそう、だから決して面白がってやっていたわけじゃないよ」


(ディーナ)「その割にはずいぶん楽しそうでしたよ」


(さくら)「うん、楽しかったよ! 久しぶりに胸がスッとしたね」


(ディーナ)「だからそんなに胸がスッキリと小さい・・・・・・グエッ!」


(さくら)「・・・・・・」


(ディーナ)「危ないじゃないですか! いきなり鳩尾を狙うのはやめてください!!」


(さくら)「ふん、自分が少しくらい大きな物を持っているからって、いい気になるんじゃないよ!」


(ディーナ)「いや、これは自然にこうなっただけなので、別にさくらちゃんに見せびらかしているわけではありませんよ(ドン)」


(さくら)「見せびらかしているジャマイカーーー! あっ、いかん特殊用語が出てしまった」


(ディーナ)「それにしても今回は全くオチの方向が見えませんが、どうするつもりですか?」


(さくら)「たまにはこんな回もいいでしょう。決してオチが思いつかなかったわけじゃないよ! 違うからね! 大事なことなので・・・・・・」


(ディーナ)「次回はちゃんとオチがつくように頑張りますので、感想、評価、ブックマークお寄せください」


(さくら)「次の投稿は火曜日の予定だよ!」

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