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120 坑道での戦い

お待たせいたしました。元哉とさくらは魔物が潜むという坑道に向かいます。そこで待ち受けているのは一体・・・・・・

「ここが坑道の入り口だ。この先に道が分岐する場所があり、そこまでは全然魔物は出ないが、そこからは俺達では先に進めない。そこまでは案内するが後は任せるぞ」


 案内役のドワーフを先頭に元哉とさくらは坑道に入っていく。坑道内は人が通るだけでなく鉱石を運搬するトロッコのレールなども敷設してあり、思いの外広々としている。


 所々に照明用の魔石が壁に設置されているので視界も悪くない。


「兄ちゃん、なんかワクワクしてきた!」


 さくらは昨日から魔物狩りを楽しみにしていたので、今朝からテンションが高くて早く魔物に出会いたいのかその足は早まる一方だ。


「さくら、そんなに急ぐな! 道を間違うぞ!」


 元哉の声で立ち止まって案内の到着を待っているさくら。これでは何のためにわざわざ案内役がいるのかわからない。


 このように逸るさくらを何とか宥めながら例の分岐点まで到着する。右は旧道ですでに鉱石が掘り尽されておりすぐ先で閉鎖されているらしい。左側の坑道が新たに掘削された方で、オリハルコンを含む質の良い鉱石がたくさん取れて期待していた矢先の魔物の発生だった。


「お前たち本当に大丈夫なのか?」


 力自慢のドワーフたちでも排除出来ない魔物がこの先に待ち受けているのを心配して、案内役の男が元哉に尋ねる。


「オッチャン! 心配しなくて大丈夫だよ! チャチャッと片づけて来るから戻って待っていなよ」


 さくらは全く不安を感じた風も無く自信満々に言い放つ。この世界で怖い物無しの無敵の存在を自負しているだけの事はある。


「おい、こう見えても俺はまだ若いんだから、オッチャンはないだろう!」


 案内役のドワーフはさくらに抗議するが、突っ込むべきはそこでは無いような気がする元哉だった。それに本人は若いと主張しているが、髯モジャのその風貌で年齢など全くわかったものではない。



 ドワーフと別れて二人で左側に坑道に踏み込む。そこも先程までと同じようにレールが敷かれており、見た感じは特に変わった様子は無い。


 そのまま歩いて500メートル進んだ所でさくらが立ち止まる。


「兄ちゃん、もしかしてあれかな?」


 さくらが指差す先には到底魔物とは思えないような物が坑道のど真ん中にデンと置いてある。


「ドワーフたちも魔物の正体を語りたがらなかった所をみると、彼らにも説明のつかない物だったという可能性はあるな。とにかくあれが何か確認する必要がある。注意して進むぞ」


 元哉の視線の先にはこの世界の文明とは掛け離れた物体が存在している。そのフォルムは地球で言えば月面探査車のような形をしていて、走行用のキャタピラーが付いた台車に各種センサーと物騒な形状のビーム兵器らしき物と何本かのアームが付いた、まるで自動運転の探査システムのようだ。


 元哉たちの接近を察知したそのシステムは頭部に付いているセンサーを意識的に彼らに向けて、突然警告を発する。


「ココカラサキニススムモノハコウゲキヲスル テキトシテニンシキサレタクナケレバコウタイセヨ」


 その物体は電子音で合成されたこの世界の言葉で二人に対して侵入を阻止しようと警告を送り始める。


「兄ちゃん、どうする?」


「そうだな、まさかあんな物が出てくるとは思ってもみなかったが、このまま言い成りになるのは悔しいな。さくら徹甲弾をお見舞いしてみろ」


 元哉の指示でさくらは魔力擲弾筒の準備を開始して、戦車の装甲すら易々と貫通するレベル4の徹甲弾での射撃を試みる。


「徹甲弾、射撃開始!」


 さくらが引き金を引くと音も無く擲弾筒から放たれた魔法弾がその物体に向かう。


「ドガーーン!!」


 真っ直ぐに向かった魔法弾は見事にその物体のセンサーが集中している頭部と思しき場所に着弾して坑道を揺るがす大爆発を引き起こす。


「兄ちゃん、危なかったよ! 危うく坑道が崩れるところだった!」


 さくらは自分が引き起こした爆発の威力が予想以上だった事にさすがに驚きを隠せない。これは彼女が持っている潜在力が神様になって引き上げられたためだろう。


「テキタイシャニヨルコウゲキヲカクニン タダチニハイジョコウドウニウツル」


 魔法弾の爆発で引き起こされた濛々とした煙が晴れるのを待たないうちに例の電子音が響く。


「兄ちゃん、どうやらダメージ無かったみたい」


「そのようだな、おまけに敵として認識されたらしい」


 さくらの魔法弾が全く効果が無い事に唖然としながらも、二人は次の手を打つべく身構える。だが次の瞬間、煙で十分な視界が確保できない二人に向けてその煙を切り裂く灼熱の熱線が迸る。


 光速に近い速度で放たれたビームを直感だけで身を屈めてかわす二人、その頭上を通り過ぎた熱線は坑道の壁にぶつかり、一瞬で1メートル四方を灼熱の溶岩に変えていく。


「兄ちゃん、危なかったね!」


 さすがのさくらも相当な危機を感じたようで、その威力に舌を巻いている。


「どうやらこの世界に降り立った種族が遠い昔に持っていた遺物のようだな」


 元哉は冷静に分析をするが、その間にも第2射が飛んでくる。二人はそのタイミングがわかっていたかのように再び身をかわす。


「兄ちゃん、このままだと不利だけどどうする?」


 さくらもさすがにビーム兵器を相手にした事が無いので、どうやって攻略しようかと頭を捻っている。彼女の擲弾筒以上の威力を持つとしたら元哉の暴走魔力しかないのだが、この狭い坑道で放つと山ごと崩壊させてしまうのでこの場合は論外だ。


 元哉もこのままでは打つ手がないと撤退も視野に入れていると、その物体の方が勝手に戦術を変更してくれた。


「ビームヘイキハムコウトハンダンスル ブツリテキナコウゲキニヘンコウスル」


 アームを伸ばしながらキャタピラーのような移動のための装置を動かして二人に接近する物体。


「兄ちゃん、あっちから近づいてきたよ!」


「そうだな、これなら何とかなるかもしれない」


 元哉はナイフを引き抜いてそこに限界以上の魔力を込め始める。元哉の魔力が暴走を引き起こしてナイフが微細な振動をしながら白く光りだす。


「さくら、下がっていろ!」


 元哉の指示に従って素早く後退するさくら、反対に元哉は物体に向かって前進する。


 相手が伸ばしてきたアームをナイフで受け止めようとする。


「ガキン」


 鋭い金属音が響き火花が飛び散る。元哉が魔力をこめたナイフは通常ならばどんな金属でも切り裂けるのだが、そのアームはビクともしないばかりか元哉を押し返そうとする。一体どんな技術で作られているのか見当も付かない。


「魔力放出!」


 懸命にアームの圧力に耐えながら、その瞬間で元哉は彼の右腕まで広がる暴走した魔力を一気に物体に流し込んだ。


「イジョウヲカクニン P―03型カンシシステムノイジョウヲカクニン タダチニソウチゼンタイノサドウヲテイシスル」


 元哉の暴走した魔力が装置全体に内部からの破壊とおそらくはそのAI知能に異常を引き起こしてシステム自体の安全装置が働いた結果、その物体は完全に動きを停止した。


「兄ちゃん、これで大丈夫なのかなー?」


 さくらは半信半疑でその物体を見つめている。元哉もこれで本当に破壊したのかまだ信じる気になれないが、よく見るとその頭部らしき所に付いていたセンサーのような物が全て壊れているだけでなく、何本かあるアームも殆どが内部から破壊されて動かなくなっているようだ。


「これどうする?」


「取り敢えずここに置いておくのは不味いから俺のアイテムボックスにしまっておくか」


 元哉は本当に大丈夫か確信の無いままにその物体をしまいこむ。どうせアイテムボックスの内部は次元の狭間に繋がっているらしいので、そこで暴れだしても害は無いだろうという極めて適当な判断だった。


 二人は先に進んで坑道の様子を確認したが、その物体が埋まっていたらしい穴があるだけで、特にその他に異常は見つからなかった。


 どうやらあの謎の物体は本来監視するべき場所から何らかの理由で引き離されて、この山脈の下で長い年月眠っていたのを偶然にドワーフたちが掘り起こしてしまった物らしい。


 ひょっとしたらこの物体の危険を感じた者がこの場に埋めたものかもしれないし、この星に不時着した宇宙船から放り出された物かもしれない。


 それ以上は彼らにも推測出来ない事であり、この星のはるかな昔の出来事を知る由も無かった。



「どうやらこれで問題は解決したみたいだな。戻るか」


「そうだね兄ちゃん、ちょっと不満は残るけど仕方ないね」


 二人はそのまま無言で坑道を引き返すのだった。


  


 


 

「ヤッホー! さくらだよ! ドワーフの人たちに頼まれて坑道に行ってみたものの、まさかあんな物が待っているとは思わなかったよ! あれは魔物じゃなくて機械だね! 戦闘メカと言った方がいいかも。さすがに兄ちゃんじゃなければ倒せなかったね。私もまだ修行が足りないという事、これから更にロジちゃんを相手にして技を磨かないとだめだね。ロジちゃんにはちょっとした地獄を見てもらおう! どんな微笑ましい地獄の風景が見られるか楽しみな人は、感想、評価、ブックマークをお寄せください。次の投稿は金曜日の予定だよ」

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