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103 アジト急襲~さくらの場合

土日が忙しくなるはずだったのですが、結構時間が取れて話が出来上がりましたので投稿します。今週はいつも通りに一日おきで投稿出来そうです。


元哉たちとは別行動のさくらチームのアジト突入編です。何しろリーダーがさくらだけにどんなおかしな展開になっても不思議ではありません。彼女の場合は結果オーライが全てです・・・・・・

「あそこが例の建物です」


 付き添いの兵士が指差す場所には、魔法書を販売する店が立っている。見た感じはごく普通の店構えだが、元々魔法書店などというものは滅多に客が来ない事が当たり前なので、陰で暗躍する組織の隠れ家としては丁度いいのかもしれない。



「よしよし、では早速踏み込んで・・・・・・」


 さくらは今にも中に入り込みそうな勢いだが、そこはロージーが待ったを掛ける。捕り物と聞いて張り切っているさくらに対して、周囲は変な方向に脱線しないように監視要員の役も務めなければならない。



「さくらちゃん、元哉さんの話を聞いていなかったんですか? 表裏の出入り口を封鎖してから中に入るんでしょう!」


 あれだけ元哉に注意をされたにも拘らず、そんな事はすっかり忘れていたさくらは『そうだっけ?』と逆にロージーに聞き返している。呆れて物が言えないロージーはさくらを待たせて自分が裏口に回り、ソフィアと兵士たちが正面の入り口を固める方針を伝える。


 念のため兵士を一人連れて裏に回ったロージーの様子を確認してから、さくらは突入を開始する。


 ドアを乱暴に蹴破って店内に入るさくら。


「御用だ、御用だ! やいやい! 神妙にお縄に付きやがれ!」


 何を思ったのか、自分のリュックの横につけていた15センチほどのおもちゃの十手を右手に持っている。これは以前さくらが浅草に遊びに行った時に一目で気に入って購入したものだ。


 だからと言って、何もこんな時に使わなくてもいいと思うが、そこは捕り物と聞いてさくらが雰囲気を大切にしようと考えた結果だ。例えその方向が間違っていても彼女は自分が信じた道を突き進む。


「さくらちゃん、一体何を始める気ですか?」


 その様子をドアの外から不思議そうに眺めているソフィア、彼女にはさくらが十手を手にしている意味も『御用だ!』という言葉の意味もまったくわからない。



 さくらの騒々しい声を聞きつけて店の奥から二人の男がやって来る。彼らも金属の二股に分かれた棒のようなものを手にして『御用だ!』と叫んでいる少女を見て一体何の用件かと首を捻っている。


「やいやい! 出て来やがったなこの悪党共め! このさくら様が成敗してやるからそのつもりでいやがれ!」


 さくらは気分としては完全に『銭形○次』に成り切っているのだが、男たちは彼女が何をしたいのか全く意図が掴めていない。だが、どうやら友好的ではないという判断は下したようだ。


「お嬢ちゃん、此処はお前みたいな子供が遊びにくる場所じゃないんだよ。さっさと家に帰りな」


 何とかこのヘンテコな少女を追い返そうとするが、依然彼女は態度を変えずこちらに向けて訳のわからない事を言っている。


「さっさと両手を出しやがれ! このさくら様が直々にお縄を掛けてやるぜ!」


 店の中で訳のわからない事を言っている少女を外へ摘み出そうとして男たちがさくらに近づく。そして彼らの腕がさくらに伸びようとした瞬間に彼女の姿が消え失せる。


 一体どこに行ったのかと彼らが店内を見回している時に、続けざまに二人の膝の下辺りに激痛が走り、彼らはその場に蹲る。男たちの死角に回ったさくらがその向う脛を手にした十手で『コツン』と叩いたのだ。


 おもちゃの十手といえども金属で出来ていることに代わりが無い。それがさくらのスピードで脛に直撃すると、簡単に骨くらいなら砕ける。もっともさくらは大幅に手加減していたので、ヒビ程度のダメージで済んだ事は彼らにとって幸いだった。


「うげー!」


「イテー!」


 蹲って足を抑えながら転げまわる男たち、さくらはソフィアに目で合図をすると彼女の指示で兵士たちが店内に入り縄で拘束する。さくらはそのまま店の奥に入り込んで他に下手人がいないか捜索したが、結局この店にいたのは彼ら二人だけだった。


「何だガッカリだよ!」


 期待していた捕り物があっけなく終了したことにさくらは気を落としている。もっと華麗な殺陣が出来ると思っていただけに、その前に全てが終わってしまってこれでは時代劇ドラマとしては失格だ。


「フィアちゃん、そこの二人に回復魔法を掛けてもう一度私と立ち回りをするのはダメかな?」


「せっかく捕まえたのにもう一度解き放つわけないと思います」


 ソフィアの言うことは正論だ。『さくらの楽しみのためにわざわざ二人を解放しました』などと元哉に報告する訳にはいかない。


「しょうがないなあ」


 さくらは無念さを滲ませながら裏口に回っているロージーを呼びにいく。


「ロジちゃん、片付いたから入って来ていいよ!」


 さくらの声にロージーが裏から店内に入ると、既に男たちは縛られて外に出されていた。


「ずいぶん呆気無いですね」


 ロージーは変な声は聞こえたものの戦闘らしい物音一つしないうちに終わった事に驚いているが、さくらがやった事ならばこんなものかもしれないと納得している。


「終わったなら、さっさと帰りましょう」


「そうだね、帰ってご飯にしよう!」


 さくらは昼食がまだだったことを急に思い出した。思い出した途端にお腹が『グーー』と鳴り出す。


「大変だよ、思い出したら急にお腹が空いてきた。大急ぎで帰るよ!」


 捕縛した男たちを引っ立てながら、さくらたち一行は町長の館に帰っていった。




「ご馳走様でした!」


 行儀のよい食後の挨拶が響く。もちろんさくらの声だ。他の者たちはとっくに食事を終わらせてのんびりとお茶を飲んでいる。


 挨拶は行儀が良いのだが、そのさくらの食べっぷりは相変わらず行儀が良いとはお世辞にも言えない。食べ物の乏しいこの国でさくらの食欲を満たすために、元哉のアイテムボックスから大量の食材が町長の館に勤める調理人たちに渡っていた。


 彼らはこの国では中々見る事が出来ない貴重な食材を使って腕を振るってくれるので、さくらも常に満足している。


 今日は橘たちが戻ってくるのを待っての遅めの昼食だったので、全員がさくら程ではないがお腹を空かせていた。


 食後ひと心地付いてから捕まえてきた男たちのことに話題が移る。


「橘はあいつらを生け捕りにする事に拘っていたが、どうするつもりなんだ?」


 元哉は今後彼らをどのように処分あるいは利用していくのか詳しい話は聞いていなかった。


「組織ごとこちらに寝返らせるのよ」


 事も無いように言い切る橘だが、彼女には確固たる勝算があるように見える。


「彼らは私が勝って正式な魔王として立った場合、真っ先に粛清されると考えて必死に悪足掻きしているのよ。だから私が彼らを許してやって重用する考えがあるという宣伝材料にするための人材よ」


 なるほどと元哉は考える。国中に根を張り巡らしている秘密警察のような彼らの組織を、全て潰していくのは容易な事ではない。だが命と地位を保証してこちら側に寝返らせることが出来れば、その手間は必要なくなる。


「だがお前がこの国を治めるとして、あんな秘密警察みたいな組織が必要なのか?」


 確かに元哉の言う通り、今まで国民を弾圧してきた組織がこの国にそのまま残る事は将来に対する禍根になるかもしれない。


「その事もちゃんと考えてあるわ。組織全体を掌握したら元くんとさくらちゃんに預けるから、帝国に設立された特殊部隊みたいに作り変えてちょうだい」


 なるほど、橘が言う事は理に適っている。今まで内向きの暴力組織だったものを、対外戦闘諜報部隊に代えていけば彼らはその道で生きていくことが出来る。


 元哉とさくらの手が加われば、おそらく帝国と同様の最精鋭部隊として生まれ変わることだろう。もっとも二人にとってはそれはかなりの大仕事ではあるがやる価値は高い。


「わかった、その件は引き受けよう。さくらもいいな?」


「えっ! 何のこと?」


 この時さくらはデザートに夢中で全く話を聞いていなかった。神様に昇格したのだから少しは話しくらい聞いていてもいいのだが、全く中身に変化が無い。


「また帝国でやったように、この国の軍隊を鍛えるんだ」


 小学生でもわかるように話を噛み砕いてさくらに教える元哉、彼女はそれを聞いて目が生き生きとしてくる。


「うほほー! 兄ちゃん、それは楽しそうだね! また目一杯絞り上げてやろう!」


 さくらが乗り気になっている事で、彼らの『地獄すら生ぬるい』訓練キャンプ行きは決定する。


 この中でロージーだけは『あれはもういやだ!』と首を振っているが、もちろん多数の意見には逆らえない。最早諦めるしかなかった。


 


「こんにちはディーナです」


「ども、今ちょっと手が離せないさくらだよ!」


(ディーナ)「さくらちゃん、ソロバンを片手に一体何をやっているんですか?」


(さくら)「ディナちゃん、いい事を聞いてくれました! 最近ブックマークが中々増えないからどこが問題なのか色々検討しているんだよ!」


(ディーナ)「さくらちゃんが珍しく脳みそを使っているんですね! すごいです! さくらちゃんもやれば出来る子なんですね!」


(さくら)「ディナちゃん、何を言っているんだね! 私は最初から出来る子だよ!」


(ディーナ)「それは初めて聞きました」


(さくら)「なんだかトゲのある言い方のような・・・・・・まあいいや」


(ディーナ)「それで原因は掴めたんですか?」


(さくら)「うーん、色々検討してみたんだけど、中々わからないんだよ!」


(ディーナ)「そうですか、確かに原因がわかれば誰もが苦労はしませんよね」


(さくら)「思い当たるとしたら、最近話の流れが少し遅いことかな? 読者の皆さんはもっとスピーディーな展開を期待しているんじゃないかと思うんだけど・・・・・・」


(ディーナ)「さくらちゃん! 一体どうしたっていうんですか! まるで別人のように冴えていますね!」


(さくら)「ふふん、これが当たり前の私の姿なんだよ! それよりもディナちゃんは展開を早くする方法でいいアイデアはないの?」


(ディーナ)「次回までの課題ですね。それよりもさくらちゃん、今までバカだと言ってごめんなさい」


(さくら)「なんだとー! 私がバカだって言う噂はやっぱりディナちゃんが広めていたんだね!(プンスカ!)」


(ディーナ)「噂じゃなくていつも面と向かって言っていましたよ」


(さくら)「余計失礼な話だよ! 油断も隙もあったもんじゃない!」


(ディーナ)「さくらちゃん、もっと早く気づきましょうね。こんなさくらちゃんですが、少しは頭を使う事を覚えたようです。今後ともさくらちゃんを応援してくれる方は、感想、評価、ブックマークをどうぞお寄せください」


(さくら)「次の投稿は水曜日の予定だよ! なるべくテンポよく話を進めるから(努力目標)よろしくお願いしまーす」

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