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7,パラサイト・クラス


「つまり、冒険者はF~Aまで階級がつけられて、クラスにあった依頼を受けることが出来るんです。依頼にもクラスがあって、私たちギルドが判断するのですが、自分の上下1つまでのものしか受けられません。エイシさんは新人なのでF級からですね」


 無謀なことができないようにという意味と、新人の仕事をとって人材育成が阻害されないようにという意味での階級による依頼制限らしい。

 俺はやるとしても頂点目指したいわけじゃなくて生活費だけあればいいから、それなりでいいや。生活費がどれくらいで稼げるかわからないけど。


「つまりCは上から三番目ってことなんですね。結構強いんですね」

「結構なんてもんじゃないです。上に行くほど当然人数は少ないですから、人数的に言えばトップクラスと言っていいレベルですよ」


 なるほど、あの二人は絶対外せないな。ということは――。

 俺はスキルを使用し、つながっている線の一本を切った。

 昨日のおっさんはもう外そう。寄生する相手はしっかり選ばないと。


 これであと二人までいけるようになった。

 俺はカウンターから離れて、二人の高ランクを狙う。


「あ、あれ? 依頼はやらないんですか?」


 背中から戸惑う声が聞こえてきたが、俺は丁重にお断りする。

 「え、ええー」という残念そうな声を聞きつつ、俺は受付に向かってきた女冒険者にすれ違いざま手の甲で触れ、テーブルから立った男の足に、後ろ側に振った手でさりげなくタッチして寄生した。


 いつも転んでばかりではさすがに怪しいからな、たまにはさりげなく触っていく路線も開拓しないと。

 でもこれはこれで別ベクトルで怪しい気がする。やってみたら結構すんなり出来たけど、出来ちゃうのもどうなんだ。いや、決してやましいことをやったことはありませんよ、はい。


 俺が高ランクの冒険者を狙ったのは、実力が高ければ強力なモンスターと交戦する機会が多いだろうと思ったからだ。

 それはつまり得られる経験値も多いってことになる。適当な相手に寄生していたときよりレベルアップは加速するはずだ。

 とにもかくにも、やることをやったので俺は冒険者ギルドをあとにして宿に戻った。そしてベッドの上で経験値がたまるのを待つ。


 朝がいつになく早かったので、昼寝をして起きると。


【パラサイト 11→12】


 ちょうどあがったな、モンスターと戦い始めたようだ。

 俺も目が覚めたし、ちょっとこのあたり色々見てみるか。ヴェールからも色々町のこと聞いたし、何より暇だ。


 それからは町をぷらぷら歩いて色々見つつ、町の外も獣やモンスターが出ない範囲で歩いたりしつつ過ごした。


 翌日も同じようにして過ごし、買い物なんかもいくらかした。

 まずは服。起きた時に気付いたのだが、着替えがない。目立たない格好はいいけれど、一着ではこまる。


 その他にもナイフや『普通の』荷物袋、紙とペンとインクなどなど、日用雑貨を購入した。

 町行く人を観察してわかったけど、やはりスペースバッグらしきものを利用している人はほとんどいない。

 やはり結構珍しい品なのだろう、何も知らないおのぼりさんが使ってると鴨と思われるかもしれないので、必要無い時は控えるようにしておく。

 紙は見慣れた真っ白で平らな紙とはちょっと質は比べものにならないけど、書くことはできるので我慢。


 そんなこんなで一日過ごして帰ってきた時には、レベル14まで上がっていた。ガンガン上がってくれると何もしなくても楽しくなってくるね。むしろ何もしないでレベル上がる方が楽しいと言える。


 あ、そうだ。

 スキルやレベルは注目してたけど、肝心の能力値をじっくり見てなかった。

 さあて、どれくらい強くなってるかな。


【名前】エイシ=チョウカイ

【クラス】パラサイト 14

【体力】 37

【攻撃力】 27

【防御力】 40

【魔力】 58

【魔法攻撃力】 48

【魔法防御力】 50

【敏捷】 55

【スキル】トリプルパラサイト


 ふうん、トリプルパラサイトはパラサイトとかダブルパラサイトに上書き、というかパワーアップして変化したって感じなんだな。


 さて、それでは能力の方はどうなって……あれ?

 なんか前もこのくらいだったような気が……。

 レベルは上がってるよな、うん。でも攻撃力とか体力とかたいして増えてなくないか。いや、絶対大して変わってない。


「まじかよ、おいおい」


 パラサイトごときがレベルを上げたところで大して強くなれないってことなのか。あまりにも厳しい現実過ぎるでしょうそれは。


 ……なんかレベルが上がって喜んでたのが虚しくなってきた。

 これ、張り切って寄生する意味あるんだろうか。


【パラサイト 14→15】


 あ、そんなこと言ってたらまたレベルが。

 でもどうせ能力は上がらないんでしょう?

 はあ……ん?


【スキル パラサイト・クラス習得】


 パラサイト・クラス?

 これまでのパターンと違うな。次は四つかと思ったんだけど、クラスはそういうことじゃないよな。クラスって言ったら、剣士とかパラサイトとかのクラスのことだろうけど……見てみるか。


 俺は荷物袋から魔道具屋で購入したレンズを取り出した。

 このレンズは解析レンズという魔道具で、スキルなどのステータスについての詳細を知ることが出来る。

 作るのが難しくランダムで壊れることがあるというので、使うか迷っていたのだが、新スキルを覚えたことだし使ってしまおう。


 せっかくだし、元々覚えていたスキルの詳細も見ることにして、ステータスを表示し、まずトリプルパラサイトに対して解析レンズを使用した。


 パリン。

 っていきなりレンズが壊れやがった!


 不良品だろこれ! 一発でってどういうことだよ!

 ランダムで壊れるのを最初にひくとか、ついてないにもほどがある。

 しかしあり得ないことじゃないから文句も言えない。

 魔道具屋の店主も嘘をついたわけじゃないし。

 しかたない、効果は出てるから気を取り直してスキルの説明を見よう。


【トリプルパラサイト】

 触れた相手三人に寄生できる。寄生した者が得た経験値の三倍の量を自分も取得できる。


 え?

 ええ?

 まじですか、この効果。

 三人になるだけじゃなくて、三倍になるのかよ。それってつまり、実質九倍ってことじゃないか。

 

 道理でレベルアップが早いはずだ。

 普通に考えたらレベルがあがるほど、どんどん遅くなるのに、多少は遅くなってもそこまでは変わらなかった。スキルを覚えるたびに一気に経験値もらえる量が増えてたからだったんだな。

 これは凄い。


 それに、ちょっと安心した。

 モンスターと危険を冒して戦ってるのに、それで得た経験を横取りしてたらちょっと申し訳ないと思ってたんだよな。本来得る分は本人も得られて、その上で俺が余分にもらってるならなんの遠慮もいらないな、本人は損してないわけだし。

 Win-Win――ではないけど、オッケーだ。

 これからもガンガンパラサイトしていこう。


 さて、それじゃあ次にこのあたらしいスキルはなにか見てみよう。

 と、解析レンズを使う。


【クラス マーシナリー 0→1】

【スキル 近接武器マスタリ】


 詳細を見ようとした瞬間、そんな表示があらわれた。

 俺はもちろん、クラスはパラサイトであって、マーシナリーではない。

 もしかして、これって――。


【パラサイト・クラス】

 寄生した者が得たクラス経験値をそのまま取得する。


 それが新スキルの説明だった。

 そして、これで今の表示の理由もわかった。


【名前】エイシ=チョウカイ

【クラス】パラサイト 15 マーシナリー 1

【体力】 43

【攻撃力】 31

【防御力】 43

【魔力】 59

【魔法攻撃力】 48

【魔法防御力】 51

【敏捷】 57

【スキル】トリプルパラサイト パラサイト・クラス 近接武器マスタリ


 ステータスを見ると、クラスが追加され、スキルが増え、能力値も増えている。


 これがパラサイトの真骨頂だったのか。

 他のクラスについている人が経験値を得ると、そのクラスとして経験値を得て、新たなクラスを身につけ成長させられる。

 これを利用すれば、スキルも能力も、どんどん加算していける。しかも、三人から三倍の速度で。

 このスキルこそがパラサイトの核心だったんだ。


「くくく……はっははは!」


 俺、始まったかもしれない。


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