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2,異世界ホルム

 気がつくと、そこは森の外れだった。

 周囲を見渡すと、背後には木々が林立し、前方には草原と長々伸びる道らしきものがある。


 ここが、異世界ホルムなんだろうか?


 とそのとき、体長60cm以上ある羽が六枚あるトンボが豪快な羽音を鳴らしながら俺の目の前を飛んでいった。


 異世界だここ。


「こうなったからにはやるしかないな」


 俺は覚悟を決めて立ちあがる。

 とそのとき、足元に便箋と袋が落ちていることに気付いた。手紙には『起きたらすぐ読むこと! ルー』と書いてある。


『おはよう、エイシ。多分わからないことだらけだろうから、私がこのホルムのことを教えてあげる。まず自分のステータスを見たいと念じてみて』


 手紙なんて書いてくれたのか。

 言われてみれば、転移するときのことは色々言われたけど、転移した後のことはほとんど聞いてなかったっけ、真面目によむとしよう。


 ええと、ステータスを見たいと念じるんだな。

 ステータスステータスステータス――。


「おおっ! なんか出た!」


 念じると、空中に映像が浮かび上がった。

 そこにはこう書いてある。


【名前】エイシ=チョウカイ

【クラス】パラサイト 1

【体力】 25

【攻撃力】 20

【防御力】 30

【魔力】 40

【魔法攻撃力】 35

【魔法防御力】 45

【敏捷】 40

【スキル】パラサイト


 うわあ……本当にクラスがパラサイトだ。

 改めて見ると本当に酷いと思う、クラスが寄生虫って、俺にだって五分の魂があるんだぞと主張したいね。


 名前はまあ、普通だな。

 順番とか表記とかはこの世界流にしたってところだろう。

 あと能力は……よくわからん。数字だけ見ても、一般的な値がわからないとなんともいえない。

 とりあえず肉体派よりは魔法タイプってことはなんとなくわかるけど。まあ体力はないですよね、俺インドア派ニートですし、もやしですし。


 そしてスキルのパラサイトってのはなんだろう?

 クラスと一緒の名前だけど、効果がよくわからない。

 わからないなら試してみるかとステータスを出したときと同じように、パラサイトのスキルを使いたいと念じて見ると、俺の右手が光をまとった。


「おおっ、なんか出てる! ……で?」


 光った手をどうすればいいかわからず、じっと眺めているとやがて光は消えた。なんだったんだ。

 念じてもスキルの説明は見ることが出来なかった。どんなスキルを将来覚えるかというクラスの詳細なんかもダメだったし、細かいことまで全ては知ることはできないようだ。


 さて、パラサイトのスキルだが、名前からすると寄生する的な効果だろうというのはわかる。

 ということは、推測するにこの光った手で触ったものに寄生できるんじゃないかな、多分。寄生ってのがどういう状況かははっきりしないけど、人間を見つけたら試してみよう。寄生すると言ったら金銭や住処のイメージがあるし、それなら人間相手じゃないと意味ないよな。


 なかなかに最低な解釈をしつつ、俺は手紙の続きを読む。


『できた?? この世界では自分の能力がいつでも可視化できるの。ちなみに、説明で察したかもしれないけど、スキルを使ったり、スペースバッグを使うのも念じればできるから、とにかく念じるべし! 慣れないうちは声に出すといいかもね。スペースバッグも手紙と一緒に置いておいたから遠慮なく使っていいよ』


 ちらりと足元に視線を落とすと、小さな袋が置いてある。

 拾いあげつつ、手紙を読むと、いろんな物を収納できる道具らしい。中を覗いてみると、宇宙空間みたいになっている。吸い込まれそうで怖いな。


 説明通り、中に何が入っているか知りたいと念じると、ステータス欄と同じ要領で中身が表示された。

 それによると、いくらかの飲み物、食料、衣服、あとこの世界のお金が入っているようだ。さっそく衣服を取り出したいと念じつつバッグに手を入れる。

 すぐに布の感触が掌に感じられ、着るものと靴が出てきた。


 おお、これは便利。

 今さらだけど魔法が本当にある世界って認識したよ。

 結構面白そうじゃないか、などと久しぶりにワクワクを感じながら俺は服を着替え、今まで着ていたものをバッグにしまう。

 ちゃんと表示がこれまでとは別の服になっている。文字だけでなく、しまわれているものの絵でも見られるのだ。おお便利便利。


『ちゃんと使えた? そのバッグと中身は私へのお供え物だから遠慮なく賜っていいよ、追加サービスだ』


 って、これお供え物かよ。

 神様なら捧げ物とかもらうことも当然あるんだろうけど、うーん、俺がもらっちゃっていいんだろうか。


『普通は異世界から来させちゃった人には不自由ないように三つのクラスを目覚めさせるのにエイシは一つしかできなかったから……ごめんね><。でも、なんとかなると思うからあんまり腐らないでやっていってちょうだい。結構ここもいいところだからさ』


 ……結構いい奴だな、ルー。

 こんな手紙も書いてくれるし、クラスが一つしかないのも俺が能なしなだけでルーが悪いわけじゃないのに、苦労するだろうからって道具をくれるし。なんだかんだ気遣ってくれてる。

 でも字はあんまりきれいじゃない。


 それから手紙の残りを読んでいき、最後まで進めると、次のように結ばれていた。


『それじゃあ、適当に頑張ってね、エイシ。私も神らしく見守ってるから。P.S.私の神殿を見かけたら感謝の祈りを捧げるように。見てるからね』


「おお怖い怖い。……さて、そろそろ行きますか。あいつもいいところだって言ってるし、この異世界、満喫してやろう」


 そして俺は新世界ホルムに一歩を踏み出した。



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