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EX・寄生と不思議なダンジョン 4

 迷宮自体を掘ってしまうツルハシの上位互換のようなアリーの裏技で、俺達は迷宮をさらに加速して進んで行った。


 そしてその途中、もちろんアイテムも拾っていく。

 この迷宮には装備品のみならず、結構いい魔道具が落ちているのだ。


・透明薬(しばらく体が透明になってモンスターに感知されなくなる)

・眠りの草(この迷宮のモンスターを眠らせる)

・アナイアレーションの杖(この迷宮のモンスターを一撃で倒せる)

・天恵のお札(迷宮にあるアイテムの位置が感知できる)


 などなど。

 はっきりいって超強力な魔道具ばかりだ。


 異世界でも見たことないレベルだけれど、効果を見るにこの迷宮限定で力を発揮するものらしい。

 有効範囲が限定されてることで、効果を増しているってことなんだろう。


 そもそもこの迷宮自体が魔道具みたいなもので、モンスターもアイテムも繋がっているとしたら、消したり感知したりも簡単にできたとしてもおかしくはない。


 俺達はアイテムも使ってアリーの力で迷宮の形も変えて先に進んで行く。

 そしてついに二十階層を超えて二十一階層。


 一気に迷宮の様子が変化した。

 周りが宇宙空間みたいになっていて、これまでの狭い通路や部屋がいくつも連なっていたのと違い、大きなドーム状になっている。


 そこに扉が一枚だけあるという様子。

 明らかに、ボスがいる部屋だ。


「この先がボスと出口か」

「ようし、早く行こっ」

「ルー様、焦ってはいけません、返り討ちにあってしまいます」

「大丈夫だよ、アリー。やられてもまた一階から復活できるし」

「うーん、それは大丈夫なんでしょうか……?」


 いけいけなルーと慎重なアリーだが、しかしここまで来たら引き返すことはできない。

 この迷宮、戻る道はないのだ。

 腹を決め――。


『おお! おお! ここまでたどり着いた者があらわれたか!』


 その時、大地をゆるがすような威厳のある声が響いた。

 俺達は驚き周囲を見るが、声の主は見え――いや、まさか。


 俺は真上を見上げ、口をぽかんと開けざるを得なかった。


「巨人――こんなところに」

『勇者達よ。よくぞ話が迷宮最深部にたどり着いた。クリアまではあと一歩。この儂をクリアに導いてみせよ!』


 俺達がいる二十一階層の入り口をまたぐように、巨人が立っていたのだ。

 ルーとアリーも巨人の岩のような顔を眺めて口を開けている。


「全然気づかなかったよ。これ、足なのねー。柱かと思ってた」

『この先にはお前達の予想通り迷宮の王たるモンスターがいる。倒せばクリアだ、迷宮から出られる。さらに宝も用意されているぞ』


 巨人は俺達を見下ろしながら言うが、……そもそもなぜここに巨人が?

 アリーも同じ疑問を持ったようで、巨人に尋ねた。


「あの、あなたはなぜここにいるのですか? しかもこの不思議な迷宮に詳しいですし……まさかとは思うのですが……今ひらめいたのですが……この迷宮の制作者……ではないのでしょうか」


 まさか、制作者がこんなところに?

 と思ったのだが、巨人はあっさりと頷いた。


『ほっほ、その通り。儂がこの迷宮を作った。巨人のことも知っているようだな?』


 巨人、それはアリーやルー達が住む異世界に、遥か昔に住んでいた高度な文明を持っていた種族だ。

 女神であるルーに女神の力を与えたのも巨人なのだから、その高度さには想像がつくというもの。俺も巨人の塔でそのすごさは目の当たりにした。しかし、巨人とその文明は滅びたはずだが……。


『巨人族が様々な魔道具を作ることに長けていたことは知っているだろう。文明が発展していたことも。文明が発展し毎日安全に暇に暮らせるようになると刺激が欲しくなってのう、こういう刺激的なアトラクションの魔道具を作ったのだ』

「遊ぶためだけにこんな大がかりなものを?」

『ほっほ、その通り。時間はいくらでもあったからの。長いことかけて作って儂自身が楽しむために入ったんだが、そこで問題が起きた。巨人の文明がピンチになったようで、色々な兵器が使われ……その中には次元に干渉するものもあり、迷宮ごと世界の狭間に吹っ飛ばされてしまったのだよ』


 謎がこれで解けた。

 巨人が作ったこの迷宮がそうして世界と世界の狭間に飛ばされて、漂っていた。

 俺達が世界の間を移動する時に、たまたまその漂っていた迷宮の入り口にぶつかってしまい、中に吸い込まれてしまった。

 そういうわけだったのか。

 そしてモンスターとかスキルの使用は全て、文明が強力になりすぎた巨人が遊ぶためだから、色々リセットとかされていたと。


「そうだったのですか。しかし制作者様なら、簡単に戻れるのでは?」

『それじゃあ面白くないじゃないか。楽しめるよう、作者でも1プレイヤーにしかなれないように作ったんだ。しかし……そしたら……ボスが強すぎてクリアができなくなってしまったんだよ』


 さすがにアリーも「えー」という顔で巨人を眺めていた。

 これは想像以上に間の抜けた巨人だな、うん。

 ルーはもちろん容赦なく。


「ちょっとおまぬけすぎない?」

『何も言い返せぬ。バランス調整を失敗したゲームを作った自業自得だ。だから、他のプレイヤーを待っていた。一人では無理でも、多数なら倒せるかもしれぬからな。ボスにはアイテムの効果も効かなくしてしまったし、まったくバランスを考えて欲しいものだ』

「自分で言わないで欲しい。まあ、そこに俺達が来たと」

『そういうことだ。ほっほ、まさに勇者、まさに救世主だ!』


 巨人は迷宮の壁面を揺るがしながら喜んでいる。

 ……まあ、喜んでるならいいか。

 俺も久々にダンジョン攻略できて楽しかったしね。


「そうと決まれば早速行きましょ! 仲間も増えて戦力アップだし!」

「まあちょっと待てルー」

「ぐぇ」


 駆け出したルーの服を引っ張って止めると、抗議の視線が飛んでくる。

 巨人も『せっかく勇者が揃ったのに行かぬのか?』ともうすっかり仲間気分だ。俺は巨人が元凶だということを忘れてはいないぞ、まったく。


「もう少しで届く(・・)から。少しまって」


 ルー達はよくわかってないようだが、アリーがはっとした表情をした。

 そして上の階層をみやすような所作をする。


「パラサイト、ですねエイシ様」

「さすがアリー、わかってるね。そう、ここに来るまでにいろんなモンスターにパラサイトをしてきた。その経験値がちょうど入りそうなところなんだ」


 もう上の階層へ引き返すことはできない。

 それならもうレベルを上げて強くなることもできない。

 それは普通なら、の話だ。


 俺の寄生スキルがあれば、上にいるモンスター達が経験値を稼いでくれる。モンスター間での食物連鎖もあるようだしな。

 そう、普通ならダンジョンを駆け抜けたらレベル不足になるが、それもない。戦わずに逃げている間にもパラサイトで経験値が入って来ていたから。


 そして――。


『クラス:グレーターデーモン、レベルアップ! 34→45』

『スキル:大暗黒魔術習得!』

『クラス:ドラゴン、レベルアップ! 15→24』

『スキル:ドラゴンスケイル習得! フロストブレス習得!』

『クラス:酒呑童子、レベルアップ! 20→27』

『スキル:金剛力習得!』


 などと、ここで待っている間に次々とレベルアップの報告が入ってくる。

 パラサイトは入手経験値にも倍率がかかるから、そのスピードも速い。


「おおー、出た! パラサイト! これを待ってたのねエイシは」

『なんという……見たことのない技だ。儂のゲームにこんな抜け道があったとは。ぬぬぬ』

「いや、今は悔しがる場面じゃないでしょう。バランス調整しなおさなくていいですからね……さ、行きましょう。ここまでレベルを上げれば、大丈夫なはずです」


 もう相当にレベルを上げた。

 巨人も俺の言葉に力強く頷く。ボスも楽勝だと。


 俺達はボス部屋の扉を開いた。


新作【追放されたからソロでダンジョンに潜ったら『ダンジョン所有権』を手に入れました】を書き始めました。

ダンジョンにあるもの全てを自分の所有物にできる能力を手に入れた主人公が、アイテムを大量に手に入れたり、モンスターを仲間にしたり、その力で色々なことをして歩んで行く物語です。

自分で言うのもなんですが、かなり面白いものが書けたと思っているので是非一度読んでみてください!

小説へのリンクは↓にあります。



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