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後日談・動物園!

今回は二日連続更新です。

そして今回の連続更新で後日談も完結です。

「うわあ、こんなに首が長い動物がいるんですか」

「本来日本にはいないけどね」


 口をあんぐり開けているのは、アリー。

 ある秋の過ごしやすい気候の日に、俺たちは動物園に来ていた。


「外国にいるんですね」

「そうそう、アフリカだったかな、多分。俺も行ったことないけどね」

「だいぶいろんなところに来た気がしますが、まだまだ知らない場所がたくさんあるのですね」


 アリーが動物園にいるのも、まさにそういうことだった。

 最近はさらに簡単に行き来できる魔道具が作られたらしく(フェリペが開発したらしい)、日帰り旅行並の気楽さでやってくるのだ。……俺の部屋に。

 他の場所といい加減につなぐべきでは?


 まあ、そんなわけで、元々珍しいもの好きのアリーだし、この世界の色々なものをみたいということの一貫で、動物園に来ている。


「こちらの世界は、世界中のことがわかっているんですよね。それに驚きです。私達の世界は、まだ自分たちのいる大陸すら全土は把握できていませんのに」


 あらためていわれてみれば凄い話だ。

 実際自分の足で歩いた範囲と、知っている範囲との差が半端じゃなく大きい。実はどっきりでキリンはアフリカに住んでませんと言われても俺にはわからないし。


 アリーのいる世界も、そのうち世界の隅々までわかるのだろうか。

 そうなったら、まだ見ぬ場所を見てみたいな。


 そんなことを話しながら、俺たちは他にも象やフラミンゴやフクロウや猿などの動物を次々とみていく。

 

「レッサーパンダってかわいいですね! 名前はレッサーデーモンみたいなのに!」

「あっちはかわいくないね………………ん? なんだ? アリー、何か変じゃない?」

「変、ですか? ……あ! たしかに違和感があります。……けど、なにかがわかりませんね」

「そうなんだよね。何か変なんだけど……」


 と、俺たちはじっとレッサーパンダの檻に目をこらす。

 こんなに鬼気迫るまなざしで見つめる客はそうそういないだろう。


 ……見えた!


「魔物だ」

「はい、魔力が感じます。こちらの世界ですのに」

「この檻の奥から? ……様子を見た方がいいかもね」

「はい。でもどうやりますか」

「俺に考えがある」


 と、俺は錬成魔法のスキルを使って、透明な細長いマジックハンドのようなものを作った。自在に動くそれを使い、レッサーパンダに触れる。

 と同時に『パラサイト』スキルを発動、レッサーパンダに寄生する。


・レッサーパンダ lv2 スキルなし


 特に強化には役に立たなそうなステータスだけれど、狙いはそこじゃない。『パラサイト・ビジョン』だ。

 レッサーパンダの目を借りれば、檻の奥にいる、何か怪しいものを見ることもできるはず。


「見るんですね、エイシ様」

「うん。あとはレッサーパンダが何かを見つけてくれれば……」


 しばらく、レッサーパンダの視点に注目する。

 とはいえすぐに成果が出るわけでもないので、ひとまず他の動物を見ながら、何かを見つけるのを待っていた。

 それは、並んでカバの大あくびを見ていた時だった。


「来た! 場所は……こっちだよ」

「行きましょう!」


 それが居る場所は、正確には檻の中ではなかった。

 檻の側の植え込みの中に潜んでいたのだ。それを、レッサーパンダの低い視点の目ははっきりと捉え、警戒するような鳴き声を出している。


 俺たちがそこに向かう。

 見つけた――。


「見つけたぞ、魔物。出てこい」


 糸斬を植え込みに針のように差し込むと、『みゅーん』という意外と気の抜けた鳴き声と共に、キッコロみたいなもこもこした生き物が飛び出てきた。


「こういう生き物は? エイシ様」

「アフリカにもいないね」

『みゅみゅーん!』


 魔物は魔法を発動する。

 木の根が召喚され、俺たちに向かって来た。


 久しぶりに――やるか!


 俺は錬成魔法でナイフを作る。

 剣技『連続剣』を使用し、うねってくる木の根を連続で細切れにした。


 これは敵わないと思ったのか、魔物は逃げ出そうとする。

 だが、それは敵わなかった。

 魔物はすぐに土の塊に躓いてこけてしまい、アリーがにやりと口の端を持ち上げた。


「土魔法はこっちの世界でも便利ですね。土はたくさんありますから」

「ナイス、アリー。さてそれじゃあ、魔物をどうにかしないとね」


 俺たちは、魔物に近づいて行く。


『みゅみゅっ……待って、ほしいのだ……』




 魔物は、テレパシーのようなもので俺に語りかけてきた。

 それによると、次元の裂け目に飲み込まれて、知らない世界に来てしまい、なんだかわからなくて隠れていたということだった。

 いきなり見つかったので、怖くて逃げるために威嚇で魔法を使ってきたという。


「それなら、元の世界に帰りますか? 私達は、道がわかりますけど」


 アリーが言うと、『みゅみゅーっ』と跳ねる毛玉となって喜び踊った。

 意外とかわいくて、アリーと一緒にほっこりした顔で毛玉を撫でてしまいましたとさ。いや本当ふかふかしてて気持ちよかった。


 そんなこんなで、俺たちは毛玉の魔物を異世界へと無事に送り返したのだった。 

 送ったあとの俺の部屋で、次元を切り裂く剣をしまって、俺は一息ついた。


「ふう。動物園でまさか魔物にあうとは思わなかったよ。なんだか妙なことになっちゃったね」

「ええ。でも、ふふ。久しぶりにエイシ様と一緒に戦えて、少しでしたけど楽しかったです」

「それは俺も、完璧に同意」


 久しぶりにスキルを使って戦った。アリーとコンビネーションで。

 異世界で寄生しながらあれこれやってた時を思い出したよ。


「えっとー……なんというか、あらためて、よろしく」

「はい! なんて、今更ですけどね」


 くすりと、アリーは悪戯っぽく笑って、俺の右手を両手で丁寧に包み込んだ。


 これは……柔らかくて温かくて……ありがとう、謎の毛玉っぽい魔物。俺は君のことを忘れないよ……!




 そんな、ある休日の一日。



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