14,異世界依頼三種盛り
・ポリウ草の採取
【風邪の流行で鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、喉のかゆみに効く薬の元、ポリウ草の在庫が少なくなってきた。集めてきて欲しい】
まずは採取依頼から。
この前も採取やろうとしたけど、結局やらなかったからな、一回は冒険者ギルドに来たからにはやってみたかったんだ。
だいたいの場所はウェンディから聞いている。この前と同じ東の森の、この前とは違う場所に群生しているらしい。
その場所に向かって歩いて行くことしばらく、赤い猪が襲いかかってきたが、なんなく倒して進んでいく。
他にも好戦的な鹿が角を突き立てようとしてきたり、巨大な蜂が襲いかかってきたり、三十センチくらいあるヒルの集団がにじり寄ってきたり、なかなかにサバイバルな森だ。
ギルドの人達もう少し討伐がんばった方がいいと思います。
「ん?」
そうこうしていると、兎がぴょんと茂みから跳びだしてきた。
よく見てみると、鼻が豚っぽくて、背中に鰭みたいなたてがみみたいなものがついている。
これは、ピープラビットの特徴と同じじゃないか。
「一石二鳥ってやつか、これが。兎だけに」
・ピープラビット討伐
【畑の作物を食い荒らすピープラビットを退治してくれ。一匹で畑を一枚おじゃんにしやがるんだ】
なるほど、今もナスっぽい野菜をかじっている。
前足で野菜を持ってガジガジしてる様子はかわいいが、実態は畑を荒らす害獣、容赦は無用。
俺は剣に手をかけ駆け寄っていく。
狼すら凌駕したスピードなら兎ごとき……なに!
兎に接近することはできたが、小柄な兎はまるで羽のようにひらひらと俺の剣をかわす。そして時折ばかにしたように後ろ足で蹴っ飛ばしたり、綿のような尻尾をふりふりしてくる。
完全に人間様を舐め腐ってるな。
まるでRPGにいる回避率だけやけに高いモンスターみたいなことしやがって、こういうのって防御力高い敵よりストレス溜まるんだよね、本当。
「くそ、埒があかない」
剣を振るのではあたらない。
木や茂みも使うクレバーなこいつを退治するには――避けられない攻撃をするしかない。
見せてもらおう、複合スキルの力。
クラス・魔道師。
クラス・狩人。
この二つのクラスから生まれたスキル、マジックアローレイン。
俺は弓を引き絞るような動作をし、ピープラビットの頭上に向かってスキルを放った。
ピープラビットは何してるんだこいつという小馬鹿にした顔で矢の行方を見ていたが、次の瞬間慌てて跳ねる。
だが、もう遅い。
魔力の矢は空中で分裂し、無数の雨となって降り注ぐ。
線や点なら身をかわすことができても、大きな面の攻撃はそうはいかない。
逃げ場所はない。
範囲外に逃げようとしたピープラビットだがあと一跳び間に合わず、かの兎は矢に貫かれて目を閉じた。
やれやれ、強敵だった。
この前の銀狼より個人の感想では厄介だったぞこいつ。どう考えてもFランク相当の実力じゃ討伐は至難だろう。ウェンディが薦めなかった理由がよくわかった。
戦闘力が高い=厄介ではないってことだな、いい勉強になりました。
いい勉強になったついでにいい食材にもなりそうだ。
今夜はファンタジックに兎肉シチューでも食べようかと思っていると、らせんを描くように伸びる特徴的な植物が遥か遠くに見えた。
「あれがポリウ草だな。便利なもんだ、狩人のスキル」
スキル【鷹の目】。
捜し物を見つけやすくなるスキル。
ようするに目端が利くって奴だな、注意力が増して色々と発見しやすくなる。
木の根を乗り越え邪魔な木の枝を払って進むと、そこは群生地だったらしく、一本だけでなく大量にポリウ草がはえていた。
全部とっては来年が困るだろう、たしか1kg相当くらいあればいいらしいから、色をつけて1,5kgほど採っていった。
サクサク進んでここまではいい感じ。
この調子でやっていこう。