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126,二つの古文書

「蛇の抜け殻?」


蛇の抜け殻の調査――ちょっと聴くと意味の分からない言葉に、俺はスアマンに鸚鵡返しする。

 スアマンはうなずいて言う


「ええ、蛇の抜け殻というのはネマンの伝承にあるダンジョンのことです。そこの調査をお願いしたい――理由を順を追って説明します」


 そしてスアマンは、改めて話を始めた。


 まず、最近ネマンでは地鳴りが頻繁に起きていると言う。これまでもゼロではなかったが、明らかに頻度が多い。そして住民からの不安の声がデュオ家に多く届けられている。

 確かにこれまでにないことで、単なる偶然で片付けるには頻度が高すぎる。いったい何かの原因なのか調査をしようとスアマンは考えていたのだ。

 そして、もしそれが町にとってよくない前兆ならばそれを取り除こうと。

 

 すでにスアマンが調査をしたところによると、蛇の抜け殻と言い伝えられているダンジョンに原因があるのではないかといきついたらしい。

 というのも、その蛇の抜け殻というのは、かつてネマンを守護していた蛇神の抜け殻が大地と一体化した際にできたダンジョンと言われているところであるのだが、その蛇神が身をよじると大地が鳴動したという。

 これはこのネマンに伝わる神話のようなものだが、今現在、まさに大地が鳴動するという出来事が今起きている。だから関連があると考えている。


 スアマンはそう説明すると、俺とフェリペを改めて強い目で見る。


「君らの話は、妹から聞いています。妹もこの街ではそれなりに実力があると認められている冒険者だが、その妹が君達の実力を高く評価していました。だから、この街を治めている者の一人として頼みます。街に大禍が訪れる、その前にその原因を突き止めていただきたい」


 スアマンはそして頭を下げた。ココも隣で両手を合わせてウインクをしている。


 大蛇の抜け殻で地震か……。

 なんだか曰くありそうなダンジョンの話だし、せっかくここにきたんだし、そういうダンジョンにも行ってみたいかな。


 それに、蛇はこの町ではペットとしてかわれていたり、街中にそれをかたどったデザインのものがあったりと結構深く関わっている。

 ということは本当に何か重要な神とか精霊的なものがいたのかもしれない。魔法やら何やらのある世界だし。だとしたらその蛇の抜け殻には太古の何かレアなものがあるかも。モンスターパラサイトでも新しいモンスターを狙えそうだし――。


 俺は横をちらっと見てみる。

 フェリペは何かを期待するような表情で話を聞いていて、こちらに気付くと見返し頷いた。

 なんとなく何を考えているかはわかりました。


「わかりました。僕らもそういったものには興味ありますし、その依頼お受けします」

「そうですか! それはありがたい。それでは、こちらを見ていただきたいのですが――」


 スアマンは声を弾ませると、背後による棚の上から一巻のセピアに色あせた巻物をつかんだ。


「これは、我がデュオ家に昔から伝わる古文書なのです。古くからネマンにいる家系なのでこんなものもあるのですが、何か重要なことが書いてあるかもしれませんので、お二人にも見て頂きたい」


 俺とフェリペは身を乗り出す。

 ついでにココも身を乗り出す。

 そしてスアマンはテーブルの上に巻物おき、それを広げていき――。


「ここがアリーの家なんだ。おー、すごい豪邸ー。うぎゃっ、不気味な人形!」

「わかりますか、ルー様。この人形怖いですよね。目がギョロりとしていて」


 とその時、廊下から声が聞こえてきた。

 この声は間違いなくと思っていると、ココがドアを開け廊下に出て――。


「やっぱり、お姉ちゃん、おかえりー。それとお客さん?」

「ただいま、ココ。この方はルー様です。ネマンで一緒に冒険しているのです。応接室から出てきましたけど、お客様でしょうか?」

「ふっふっふ……そう、お客様よお姉ちゃん。ちょうどいいね、こっち、こっち」

「あっ、ココ!」


 そんなやりとりが漏れ聞こえてきて5秒後、ココがアリーの手を引っ張って部屋の中に入ってきた。

 それに続いて珍しそうに周囲をキョロキョロしているルーの姿も。


「お、エイシとフェリペもいるじゃーん。なになに、何か悪巧み?」

「ふっふっふ、そうそう。お兄ちゃん、この人達もここにいる二人の仲間だから、一緒に話聞いてもらえばいいよ」

「フェリペ様とエイシ様が家に……? 私の部屋をちゃんと片付けておいた方がよかったでしょうか。ああ、散らかったままです――」

「ねえねえ、何やってるの、何その紙」


 ワイワイとにわかにやかましくなった応接室の中で、古文書は静かに紐解かれる時を待っている。




 なんだかんだで、アリーとルーも予想通り話に乗ってきて、俺達は四人で古文書ひもとくことにした。

 しかしそこで一つ問題が起きた。


「これは、見たことのない文字だな」


 渋い顔をしたのはフェリペ。


「そうなのです。古くから伝わっている古文書なのですが、現在の文字と違い、読むことがずっとできないままなのです。未だにその内容がわからないので、まずはそれを冒険者の方にあかして欲しいと思っています。色々なことをしている冒険者の方なら、何か手掛かりを持っているのではないかと思ったのですが、何かわかりますか?」


 スアマンの言うとおり、そこには現在ホルムで使われているのとは異なる文字が書いてあった。

 昔を知っているはずのルーも内容が分からないようである。そもそも人間が書いたものですがないのかもしれない。


 ――だけど、俺には内容がわかる。

 

 【旧き言葉】。

 俺にはモンスターパラサイトで習得したスキルがある。

 このヴァンパイアのモンスターパラサイトで身につけたスキルを使い、俺はその古文書の内容を理解することができた。


 そして、読み上げる。

6/10に『寄生してレベル上げたんだが、育ちすぎたかもしれない』の3巻が刊行されます。皆様のおかげで無事3巻も刊行できることとなりました。ありがとうございます。

三巻は魔法学校とアンデッドの話が中心の内容となっています。エイシやアンデッド達の雄姿がどどんと見られるはずです。エピのヒロイン度もアップです。

これまでと同じようにWeb版にはなかったシーンなど加筆修正あって、かなり面白くなりました(と自分では思っている)し、そりむらようじ先生の素晴らしいイラストも見られるので、書籍版も是非是非手にとってみてください。


活動報告に書影をのせましたので、興味のある方はそちらの方もご覧ください。

カドカワBOOKS様のホームページにも情報が出ていますので、そちらでもカバーイラストや情報を確認できます。


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