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123,新たな剣と試用な修行

 思った以上に、剣は早く完成した。

 工房の使いに呼ばれて駆けつけると、やりきった表情の職人とフェリペが俺を待ち構えていた。


「来たか」

「ずいぶん早いね。もっと補強にかかるかと思ってた」


 言いながら工房に入ると、フェリペとともに作業をしていたらしい職人が、苦笑しながら言う。


「この兄ちゃんが急かすもんでね。不眠不休だぜこっちは。ま、おかげで魔道具職人とやらの技を間近で見られたがな。盗ませてもらったぜ」

「こちらこそ、いいものを見られた。インスピレーションが湧いてくる。たまには他人と共作も悪くはない」


 職人とフェリペが、なんだか強敵と書いてともと呼ぶような雰囲気で見つめ合っている。有意義な合作だったんだなあ。


「どうもありがとうございました。助かります。それで、僕の剣は――」


 頭を下げて、二人がいる台へと近づいて行く。

 すると、フェリペがこちらを向き。


「ああ、これだ」


 裏の箱から、見慣れた鞘に入った剣を取り出した。


「ここで抜いても?」

「抜かなきゃ見られないだろう」

「じゃ、失礼して」


 俺はフェリペの視線を感じながら、黒銀の剣を抜いた――おお-!


「すごいきれいになってるじゃないかー。欠けとかも全然無くなってるし、つやつやだし、何より、この青みがかった感じがいい」

「だろう、その色合いを出すのに苦労したんだ。油や樹液を色々試したり」


 うんうん、とフェリペが満足げに腕を組み頷く。

 結構見た目にもこだわるタイプだな。


「これが、アイスクリスタルの色」

「そう。単にいろだけじゃなく、性能も強化されてる。合金になったことで、切れ味はさらに増した。それに、俺の魔道具の技術を応用して、魔法関連で大幅に強化されてる」

「魔道具みたいなことができるってこと?」

「似たことがな。あくまで剣を基本とした。やはり剣である以上それが美しいだろう。だが魔力を帯びた結晶を使うことで、スキルの魔法剣というものがあるだろう、あれに似た状態に常になっているんだ。元々黒銀は魔法的な力を持っているが、さらに魔法への干渉能力が飛躍的に高まって、魔力の矢などの魔法を直接斬ったりすることが前以上に高まっている。直接魔力をぶつける並に。さらに魔法に弱い相手にも大ダメージが期待できる。また持っているものの魔法威力を増加させる、魔法の杖のような効果もある。その上自然治癒力まで強化されるんだ」


 思った以上の言葉の洪水に、ちょっと何言ってるのかわからなくなりかけたが、相当色々と強化したようだ。

 ちょっと補強して切れ味を戻すどころじゃなかった。なんかもう新武器並に色々盛られてる。

 というか効果多すぎじゃない? どこのレア武器ですか?


 説明を受けると、ありがたみがましてきて、俺はじっと剣を見つめる。


「おお――本当に魔力を感じる。これは……うん、いい。ありがとう、フェリペ。いい仕事だよ本当に」

「当然だ。優れた素材を持って来られたからには、応えなけりゃ職人の存在価値がないからな。あとはエイシ、お前がそれを使いこなすだけだ」

「うん、もちろんそうするよ」


 職人にもお礼を言って、俺はフェリペとともに新たな剣を手に工房をあとにした。




「はっ、とうっ、やっ……うん、使う感覚は変わらないね」

 

 町外れの野原で、俺は早速新たな剣を振っていた。せっかくいいものにしてもらったのだから、使用感を試して使いこなさなければ。


「そこはなるべく使いやすいようにしたからな。あそこの鍛冶屋の意見だ。修理するときの鉄則だとか」


 そう言ったのは、フェリペ。

 俺が試用して見ると言ったら、フェリペも見ると言ったのだ。


「へー、なるほど」

「他分野の一流どころとの交流はいい刺激になる。ネマンはいい町だ」

「フェリペって……結構単純だよね」

「……悪いか」

「いや全然。むしろわかりやすくていい。それじゃ、魔法も試してみようかなっと」


 俺は剣を手に取り、剣に力を込めるような要領で、魔法を使ってみる。魔法の矢や、魔法の盾、精霊魔法による水の召喚など。

 それのどれも、威力が少し上がっている。


「おお! こういう感じでやるんだ! 凄いな、本当に魔法の杖みたいだ。ねえフェリペ、ちょっと魔法使ってみてくれない? 試し切りしてみたくなった――って、もう構えてるし」


 フェリペは衝撃波を放つ杖を、俺に向けて真剣な目で睨んできていた。

 いや結構怖いんですけど。


「試すつもりで来たんだから、当然だろう。俺のテストにも付き合ってもらうぞ。ちゃんと斬らなきゃ痛いからな?」

「痛いですむのかな……」


 俺は真剣に構える。

 次の瞬間、フェリペが杖を振り、魔力を伴った空気の歪みが猛スピードで襲いかかってくる。


「ちょっ、はやっ、思ったより!」


 俺は慌てて剣を振り抜いた。

 すると衝撃波に切っ先が触れた瞬間、歪みが二つにわかれ散っていく。


 おお、思ったより凄いぞ。

 ちょっと斬っただけで結構な威力がありそうなのがあっさり切れた。


 杖を振ったフェリペもご満悦の様子で、頷いている。

 満足いく威力のようだ。


「よしよし、ちゃんとできているようだな。魔力方面の強化は」

「うん。凄いね、本当に同じ剣がこんなにパワーアップするなんて」


 あらためて剣を見ると、薄く青い輝きが、陽光に映えて見える。うーん、いい。ネマンに来てから色々新しいスキルも身につけたし、その練習もしつつ、この新しい武器の性能も試してやろう。


 ちらっと俺はフェリペの方に目を向ける。

 

 ちょうどいい具合にフェリペもいるし、付き合ってもらうとするかな。


「じゃあフェリペ」

「じゃあエイシ」


 俺たちは同時に口を開いた。

 お互いになるほど、という顔をして、頷く。


 そしてフェリペは、杖や札や玉を取り出す。


「どうやら考えてることは同じらしいな。俺の魔道具をいくつか性能チェックしたいと思ってたんだ」

「俺もスキルの練習をしたいと思ってたんだ。じゃあ、やりますか」


 そして俺たちは、青々とした草の上で、スキルと魔道具をぶつけ合う攻防をしばらくのあいだ行ったのだった。



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