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122,ランチ・リベンジ


「やったー、これで目的達成。おーう、つるつる」


 手に入れたアイスクリスタルにルーが頬ずりをしている。

 皮脂とかついて汚れそうな気がするけど大丈夫なのだろうか。まあたくさんある

しちょっとくらいいいか。

 と思い、俺もアイスクリスタルに触ってみる。

 ほー、本当にすべすべしているけど、意外と冷たくはないんだな。氷そのものじゃないんだから当たり前といえば当たり前だけど。


「じゃあこれで剣を強化すればいいね。魔法剣。いい響きだ」

「ええ、そうですね。あの美しい黒銀の剣がどういう風になるのか、私も興味あります」


 俺たちはがやがやわいわい話しながら、氷晶石を必要な分回収し、そこから洞窟を引き返して、来た時よりも少し短い時間で入り口まで出てきた。


「ふあ~、眩しい」


 額に手をかざしながら、ルーが顔をしかめる。

 つられるように空を見てみると、太陽は坑道に入ったときよりもだいぶ高くなっている。


「うん、ちょうどいいですね」


 アリーのちょっと嬉しそうな声に横を見てみると、同じように空を眺めて笑顔を浮かべている。暗いところから明るいところにでられてうれしいのだろうかなどと思っていると、アリーは自前のスペースバッグから敷物を出して草の上に広げた。


「せっかくですし、お昼にしましょう、そうしましょう」


 さらに敷物の上に、大きなカゴを二つ置く。そして両方のふたを開けると、中からいくつものサンドイッチが出てきた。


「おお! 気が利くじゃんアリー!」


 ルーが靴を脱ぎすて敷物上に座り込んであぐらをかく。

 俺もあとに続く。サンドイッチは量も種類も多いなあと思って眺めていると、おなかがちょうどぐうとないた。


「ふふ、ピッタリの時間のようですね」

「確かにお腹空いてきたかも」

「でしたら、ちょうどよかったです。……この前のリベンジです。どうぞ、お腹いっぱいになるまで食べてみてください」


 少し顔を紅潮させたアリーは、気合の入った手つきでサンドイッチを指し示す。


 リベンジ……。なるほど、あの時の。


 俺の頭によぎったのは、かつてリサハルナの廃墟を調査したときにアリーがお弁当を作ってきてくれて、それを食べたこと。

 あの時は正直美味しくなかったのだが、どうやらこの様子だと今回こそはということのようだ。


 ふむ。それならばしっかり食べてジャッジしなければと料理番組の審査員のような気持ちで、俺はサンドイッチの一つを手に取り口をつけた。


「………………」

「エイシ様」

「…………」

「ど、どうでしょうか……?」

「……おいしい」


 ぱあっとアリーの顔が明るくなる。


「うん! 美味いよーこれ! アリーやるっ!」


 ルーもサンドイッチを完全に満面の笑みを浮かべている。


 本当に美味しかった。今回は全然ありーだ。

 お世辞ではなく、俺が食べたのは厚く切ったベーコンとオムレツがはさんであるサンドイッチだったが、オムレツはふわふわで、ベーコンは香ばしく、その二つが見事にマッチし、うーんこれがハーモニーをかなでるというやつだな。

 この前の味気のないのと全然違う、これは本当においしい。


「そう言っていただけると、練習した甲斐あります。さあどんどん食べてください」


 味の感想を言うと、アリーは両手をあわせてうれしそうに言った。早口具合からして本当に嬉しそうだ。

 ルーはすでに二つ目のサンドイッチを一口かじっている。このままでは全て無くなってしまいかねない。


「アリーも全部食べられないうちに、早く食べた方がいいよ。俺も食べるから」

「ふふふ、そうですね。そんな風にたくさん食べていただけると嬉しいです。いただきます」


 俺も早く食べなくてはと、そして俺は今度はトマトとレタスとチーズのサンドイッチに手を伸ばす。風味の良い油が絡めてあるっぽいな、それと香辛料とが合わさって単品の素材以上の組み合わせの旨味が出ている。

 そんな味付けされた、おいしい味のあるサンドイッチは本当においしくて、適度な運動した後ということもあり、俺たちは瞬く間に食べ終わった。


「んー、おいしかった。アリー、ごちそうさまでした」

「お粗末様でした。喜んでいただけたなら、嬉しいです」

「この前と全然違うね。もしや修行した?」

「はい。実は私の妹が料理が結構得意で、実家に帰っているときにいろいろと教えていただいたのです」

「へー、アリーって妹がいるんだあ。顔もそっくりな感じ?」


 ルーが尋ねると、アリーはちょっと首をかしげる。


「うーん、そんなには似てないかもしれません。他人にもよくそう言われます。私も妹もちょっと変わってるんですけど、方向性の違いがあるというか……」


 アリーはそこまで言うと、苦笑いを浮かべた。


「料理を教えてもらうときは大変でした。妹はいろいろを好奇心が旺盛で聞いてくるんです。どうして急に料理を教えてほしいなんて言うのか、もしかして作ってあげたい……あ、いえ、なんでもありません。とにかく! 練習した甲斐がありました!」


 苦笑いからはっとした表情になると顔を赤くして両手をわたわたと激しくふって、違うんですとアリーは繰り返す。

 なんだか一人で盛り上がってるけど、どうしたんだろうと、俺とルーは顔を見合わせたのだった。




 さて、楽しい楽しいランチタイムを過ごした俺たちは、鍛冶屋の工房に行ってアイスクリスタルを渡した。どうやらクオリティは十分らしく、早速作業に取り掛かると職人とフェリペはいっていた。

 そうして俺たちはとりあえずその日はお開きとなった。

 ちょっとばかり冒険もしたし、宿で休憩休憩と。


 休憩がてら、寄生している相手のチェックを、ベッドに寝転んだまま俺はする。


「……あ、ブラットバットが。これって、つまり」


 すると、寄生中の線が一つなくなっていた。パラサイトしている相手を確認してみても、ブラッドバットはない。

 ……多分、食べられたってことだよね。他のモンスターに。

 南無。


 俺達がランチを食べている時に、俺が寄生しているモンスターは、他のモンスターのランチになってしまっていたらしい。そうなると当然パラサイトも解除されてしまうというわけだ。自然の掟は厳しいですね。

 でも。


【調教師1→4】 習得スキル【毛繕い】


 その代わりといっちゃなんだけど、人間にパラサイトしたクラスはしっかり上がってる。この調子でいこう。


 プローカイでの戦いでは結構苦戦もあったし、やっぱりまだまだパラサイトをもっとして実力をつけていきたいところだ。

 そうしてこそ真の安全安心楽勝な異世界ライフが送れるというもの。


「剣も完成すればさらに戦力アップするし、お弁当は美味しかったし。ネマンに来たのは、大正解だな」


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