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120、弱肉強食サバイバル


 考えた末、俺はなくなくジャクローサへのパラサイトをやめた。

 五本あった光の糸のうちの一つが音もなく消失していく。


 ジャクローサは鍛えてるし闘技場でも戦ってるから経験値も入りやすいし、寄生先としては非常に優秀なのだけど……しかしパラディンはすでに結構な高レベルなんだよね。

 そうなると、やっぱりまだレベルの低いところを鍛えた方が効率的にステータスもスキルも伸ばせる。


 というわけで、ジャクローサ、ごめん。

 心の中でいいながら、俺はジャクローサの寄生をやめた。……寄生やめてもジャクローサが一切なんの損もないのだから謝る意味はありませんね。はい。


 というわけで、空いた一枠で調教師の男にパラサイトする。 

 無事にパラサイトは成功、ネマンでは人間もモンスターも寄生が捗っていいね。


 それからは、冒険者ギルドの職員に挨拶だけしてから、ギルドをあとにした。何かしら利用する機会もあるだろうから、顔を覚えてもらっておいた方がいいだろう。


 そして再び俺たちは町を歩き始める。

 とりあえず目立つものとしては、てっぺんに大きな鐘がある塔が見えるので、そこに向かって歩いている。

 アリー曰く、特になにがあるわけでもない合図のための鐘ということだが、まあなにかしらを目指して歩いた方がいいということで。


 もちろんその途中に町にいる間に利用しそうな施設は教えてもらう。日用品を扱っている店や、浴場などなど。

 それらを見ている時だった。


「えっ!?」


 俺は通りすがった人を思わず二度見してしまう。


「まじで飼ってるの? あれ?」

「おお、本当だ。でっかい蛇ねー」


 俺たちがすれ違った婦人が、首輪というか胴輪というかをつけた蛇の散歩をしていた。緑色で、一メートルくらいの体長があるへびが、飼い主の歩調にあわせて体をうねらせている。

 まじか。

 蛇って散歩させるものだったのか。


 だがアリーはくすりと笑うと俺たちに説明した。


「他のところから来た人は驚かれるかもしれませんね。ですがここでは、蛇を飼ってる人は多いのですよ」

「まじですか? 蛇を?」

「なんか、変な話し方になってるよエイシ」

「ふふ、大丈夫です。おとなしい種類の蛇ですし、ちゃんと調教されたものが飼い蛇になってますから」


 と話していると、今度は後ろから俺たちを追い抜いた人が、蛇を連れていた。今度は首の辺りがコブラのようにふくれた黄色い蛇だ。なかなか鮮やかできれい。

 時間帯的に、ちょうど地面が暖かくなってきた今が散歩にちょうどいい時間で、今歩いている道が散歩に人気のコースらしい。


「ネマンでは昔から、蛇を飼う人が多かったのです。由来は今ではよくわかっておりませんが、蛇が人を助ける昔話などがいくつもあるので、伝統的に人と蛇が一緒に過ごしていたようです。山で道に迷った若者を、金鉱脈のありかへと案内する白蛇の話などいくつもあります」

「へー。面白いな、犬とかを飼うみたいに昔から飼ってたんだ」


 ところ変われば文化も変わると言うことか。

 この辺りに蛇がたくさんいて、何か蛇の性質とかを利用してたのかもな。それで蛇が身近にあるようになったとか。

 なんにせよ、珍しい物が見られた。新たな町に来た甲斐があるってもんだよ。


「へー、アリーもここの出身なら蛇は好き?」


 ルーが通り過ぎていく蛇の尻尾を目で追いながら尋ねると、アリーは頷いた。


「ええ。もちろんです。自宅には蛇の像もありますし。蛇の頭の帽子もありますよ」

「蛇の頭の帽子……? 蛇の頭みたいな形をしてる?」

「ええ。蛇の目の部分から外が見えるようになっているんですが、ひんやりして、気が落ち着きます」


 それは帽子というよりかぶり物なのでは……?

 という疑問が浮かぶが、アリーがコブラっぽいかぶり物をすっぽり被った姿を想像すると、なかなか面白そう。


「へえ、それはみたいなあ。どんな感じか。ねえルー」

「うんうん、見たい。それにかぶりたい」


 そっちかよ。

 さすがだなルー。


 俺たちにリクエストされると、アリーは迷うように体を左右に揺らす、少し顔を赤らめて恥ずかしそうにしている。


「そ、それは……寝るときに使うものですからあまり家の外ではやらないのですが……」


 え、そういう用途なの。ナイトキャップだったのか……。


「ですが、ネマンに来てくださった客人に頼まれては、顔が立ちませんね……、わかりました。皆さんにも用意いたします。今度宿でそれを付けて寝ましょう」


 何かを決意した者に見られる強い口調でアリーは言った。

 そして、俺の顔を覚悟した目で見つめてくる。


「おー、いいねー! 私そういう変わったの好きだよ~。ね、エイシ」

「え? ああ、うん。やろう」


 思ったのと違う展開になってしまったが、アリーの決意とルーのうきうきを見てしまうと、断れないのが気が弱い俺である。

 と、横を見ると、フェリペと目があった。


「……俺もやるのか?」

「……うん、流れ的に」


 フェリペはふっと微笑を浮かべると、小さく頷く。


 結構好きだったのか、そういうこと。




 そうして一日町を歩きまわり、必要なものなどを買っていたら日が暮れたので、目についた店で食事をとって、宿へと戻った。

 とりあえず、町の様子は二日かけてわかったので、明日からの予定は空白。各々、やりたいようにやろうということで、明日が来てから考える。

 まさにその日暮らしであるが、明日よりもまずは俺は……。


 部屋に戻って一人になった俺は、パラサイトの情報を早速見る。


【ブラッドバット Lv3→4】

【ソニックウィドウ Lv6→8】習得スキル・【毒の牙】


 ポイズンモンスターと調教師はレベルアップはなしだった。一回食べるとしばらくはその栄養で腹が持つ生き物とかもいるらしいし、オオトカゲは今日は狩りをしなかったのかもしれない。調教師の冒険者も今日はどこも冒険していないようだ。


 習得したのは、そういうわけで毒の牙のみ。

 ……毒関係多くないですか?

 モンスターのスキルまだ四つしか覚えてないのに、そのうち二つが毒って。

 人間は毒を持ってないけど、野性の生き物は毒がある生き物って想像以上に多いんだなあと部屋の中で一人で感心してしまう。


「さてさて、いつまでも感心してないで、早速モンスターのスキルを覚えたんだ。ちょっと試してみないとね」


 俺は独り言をいいながら、スキル【魔法の糸】を発動した。俺の手のひらから白い糸が飛び出し、狙いを定めた買ってきたものが入っている荷物袋に、俺の意思に呼応するように動き、ぐるぐると巻き付く。

 しっかり固定した状態で、糸を引っ張り、荷物袋を手繰り寄せ、さらに持ち上げることもできたし振り回すことも出来た。


 結構自由に動かせるし、丈夫な糸だ。 これって、かなり使い勝手よさそうだな。日常の一コマから探検でも戦闘まで、色々とできそう。

 いい相手に寄生したぞ、大当たり大当たり。


 ひとしきり糸を束ねたり巻き付けたり揺らしたりして試したり遊んだりして満足し、俺はこの日の寄生スキルについての試験は終わりにした。

 ……毒の牙と毒液は知りません。怖いから実験したくないです。ていうか毒を試す相手がそもそもいないっていう話だし。


「しかし、この先も毒とか酸とかそういう感じのスキルばっかり充実したらどうしよう……」


 そんな一抹の不安のような期待のようなものを抱きつつ、俺は部屋の中に張り巡らされた魔法の糸を眺めるのだった。


しばらく毎週日曜日に更新していく予定です。

目指せ規則正しい定期更新生活……!

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