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118,パラサイト・モンスター

 ネマン探索一日目は、ネマンの周囲を色々と見てまわった。

 近くの山や川や畑や森などの場所を確かめ、そして、落石などで危険な場所や、モンスターがでて危険な場所――つまりダンジョンの位置を把握した。


 俺たちは宿に戻り、英気を養う。

 皆ベッドにもぐりすやすやと……の間に、俺はひっそりと宿を抜け出した。


 暗い夜の街を歩き、街の外へと向かう。

 急ぎ足で月と星の光を頼りに、昼間にチェックした場所へと急ぐ。


「あった、あった。さあて、やりましょうか」


 山の麓の坑道の奥からつながっているというダンジョンへと、俺は向かう。ランタンを手に、ごつごつした岩の感触を足裏に感じながら廃棄された坑道を昼間に聞いたとおりにしばらく進むと、やがて明るさが増した。

 ダンジョン特有の光だ。

 勢いづけられてさらに進んで行くと、一際輝く横穴があった。


「よし、発見。行くぞ」


 これがダンジョンに違いない。

 入り口の方には出てこないようだが、奥に行けばモンスターがいるはず。

 俺は、中に足を踏み入れた。


「そんなに特別な感じはないな」


 ダンジョンに入っても、魔元素が濃いために明るい以外は、普通の洞窟とはさほど変化はない。モンスターはまだかなー。


「っ! 来た。よし、慎重に……」


 十数分ほど黙々と歩くと、少し広めの空間があり、その中にモンスターとおぼしきものがいた。

 いるのは、毒々しい紫色と黄色の縞模様をしたオオトカゲだ。いかにも毒がありそうな見た目だが、たしか実際あった気がする。魔物図鑑を読んだときにのってたような、名前はそのままポイズンモンスターだったか。


 慌てて身をいったん隠してから【ステルス歩法】を使い、後ろを向いている間に気付かれないようにできる限り近づく。

 残り1メートルほどの距離まで近づいたところで、オオトカゲが振り向いた。さすがにここまで来ると野性の勘で気付くか。

 すでにオオトカゲは臨戦態勢だ。身をかがめて、体の向きを俺に向けて、今にも噛みつこうとしてきている。


 こうなったらステルス歩法を解除。

 あとは素早い身のこなしで――。


「よっ!」


 と噛みつきをかわして、頭に近づくと怖いので、頭の二メートルくらい後ろにある尻尾に回り込んでタッチ。

 すぐさまパラサイト――と同時にパラサイト・インフォ発動。


種族【ポイズンモンスター lv11】


 なるほど、モンスターの場合はこういう風になるのかと思いつつ、そのまま洞窟の奥へと駆け抜けてトカゲから逃げる。

 しばらく走って距離をとると、もう追っては来なかった。


 その途中にも大グモとか爪の長いモグラとかがいたけど、とりあえずは落ち着けるところまで避難した。

 あとでパラサイトするかもしれないけど、とりあえずまずは――。


「ちゃんとできてるかのチェックだな」


 と手を集中して見てみると、パラサイトの証である光の線が3本のびている。2本を残して解除してきたから、それが1本増えているということは、あのオオトカゲにパラサイト成功したということだ。


 よし。

 俺はぐっと小さくガッツポーズ。

 モンスターパラサイト成功。この調子で、倒すのではなく、寄生していこう。




 それから洞窟の中を歩きまわり、いくつかのモンスターに寄生した。

 オオトカゲの他に、蝙蝠と蜘蛛。

 なんだか陰気な感じのモンスターが多い気がするが、まあ洞窟の中だししかたないね。

 ちなみにそれぞれ


【ブラッドバット Lv8】

【ソニックウィドウ Lv18】


 ということだった。

 見た目は小さかったのに、案外蜘蛛が一番高レベルとは驚いた。

 まあ、そんなに強いモンスターではないかな? とはいえ並の冒険者がレベル10~20くらいだったと思うので、決して弱いというわけでもなさそうだが。


 さーて、どんなスキルが覚えられるのかなあと思いつつ、寄生できる五枠を使い切ったので、今日のところは引き返そうと戻ることにした。 

 そして入り口に戻っていくと……。


「お、あれは最初にパラサイトしたトカゲ君」


 同じ場所に、同じオオトカゲがいた。

 縄張りということなんだな、つまり。


「……そうだ」


 せっかくなので、俺はしばらくオオトカゲを観察してみることにした。手頃な大きい岩があったので、その陰に隠れて、じっと気配を感知するスキルと、気配を消すスキルの二刀流で様子をうかがう。


 オオトカゲは目を開けたまま眠っているかのようにじっとしていて動かなかったのだが、不意に首をもちあげ、舌をちろちろと動かし始めた。


 何か気付いたのかなと思って周囲を見ると、トカゲの視線の先の地面の土がもこもこと盛り上がっている。

 そして、そこからモグラが飛び出した。

 もちろん、ただのモグラじゃなくて、目が四つある爪が鋭い結構不気味なモグラだ。土に潜ってるのに目が四つあるのは意味があるのだろうかと非常に疑問だが、そんなことを思っている間に、オオトカゲがモグラに襲いかかった。


 決着は一瞬だった。

 モグラは爪を振ったが、オオトカゲの固い鱗には通じず、哀れ一口で頭から食べられてしまった。

 モンスターの世界も情け容赦ない弱肉強食らしい。食物連鎖の生態系がなりたっているのだな。しかし穴からでた瞬間を狙うとは、さながら起き攻めのような狡猾さである。爬虫類も頭いい、などと思っていたのだけれど、


種族【ポイズンモンスター lv1→4】

スキル【毒液】取得


 おおっ!?

 いきなりレベルアップしたぞ。

 

 これは、人間にパラサイトしたときのレベルアップと同じ感じだ。 

 ふむふむ、これはつまり、人間と同じように、モンスターがモンスターを倒すとモンスターもレベルが上がるし、寄生してる俺もモンスターという種族のレベルが上がるということか。種族をクラスに変えたら、今までとだいたい同じ要領ということみたいだな、わかりやすい。


 そしてスキルもばっちり習得できた。

 これなら、他のモンスターのスキルも覚えられそうだ。

 寄生しているモンスターが他のモンスターにやられないよう祈りながら、俺はひっそりとオオトカゲのいる場所を抜けて、ダンジョンをあとにした。


「おっと、そうだ。スキルの説明見ておこう。記念すべきモンスターのスキル第一号はどんなスキルかなっと」


スキル【毒液】 口から毒の液を吐き出すことができるスキル。


「……これ人前で使うの勇気必要すぎない?」



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