表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/160

115,アリー、色々なものと出会う


 そんなわけで、俺はアリーと共にプローカイの街に繰り出した。まずは、出会った広場にもう一度行ってみる。

 広場では吟遊詩人がリュートを奏でていたり、操り人形を巧みに操る芸を見せているものなどがいた。

 アリーはそれらを、楽しそうに眺めている。


「アリーもこういうの好きなんだ。」

「はい。こういった鍛えた芸というのはいいものですよね。私も自分の技を磨くよう見習わないといけないと思わされます。昔から、サロンやパーティーやお祭りなどで彼らのような芸人の芸を見るのが好きでした」

「ジャクローサみたいなことを言ってるなあ」

「ジャクローサ? どなたでしょうか」

「ここのプローカイの名物に、闘技場があるでしょ」

「ええ。何度か見たことがあります」

「そこの闘士なんだ。貴族なんだけど闘士をやってるっていうね」


 アリーはなるほどと言う顔で、屋根が見える闘技場に目をむける。

 俺も視線をそちらへ動かすと、見慣れたフード姿が近づいてきた。


「おお、そこにおりますはエイシさんじゃありませんか。お元気そうで嬉しいです」

「ん? あ、スケルトン」


 声をかけてきたのは、スケルトンだった。

 なんだかもはや、完全にこの街馴染んでいる気がする。意外と世の中って何とかなるもんなんだなぁ。


 アリーも気付いてスケルトンを見た。

 すると、スケルトンが頭を下げる。

 アリーも頭を下げ、


「エイシ様のお知り合いの方でしょうか。私はアリーと申します。どうぞお見知りおきをお願い致します」

「こりゃまた随分とご丁寧に。アリーさんすね。エイシさんの知り合いなら、俺にとっても恩人ですわ、どうぞよろしく。俺はトンって言います」


 ものすごく普通に挨拶をしている。片方は骨なのに。

 俺は少し考えて、吸血鬼もすでに知っているアリーならばスケルトンが話しかけて来たとしても間違いなく受け入れるだろうと思い、スケルトンの正体を話した。

 その方がスケルトンもやりやすいだろう。


「そうっす、自分スケルトンなんですよ」

「わあ、本当に骨でいらっしゃるんですね。普通に人間と会話ができるスケルトンは初めてお会いしました。あらためてよろしくお願いいたします」


 あっさり受け入れた。

 予想通りといえば予想通りだが、さすがアリーだ。

 割と何でも認められるタイプだよね。


 少しばかりスケルトンと話すと、スケルトンは買い物をするとかいって去っていった。残ったオレに向かって、アリーは感心したように口を開く。


「闘士にお知り合いがいて、スケルトンにまで知り合いがいらっしゃるなんて、エイシ様は顔が広いのですね」

「顔が広いというかなんというか……」


 そこは感心するポイントなのだろうか?

 さらに女神とも面識があり、その上に吸血鬼がさらにもう一人追加されたと知ったらどういう反応をするだろうか。


 ……改めて考えてみると、俺って結構変な知り合い多いな。

 なんか人間より人間じゃない存在の知り合いの方が多いんじゃないかとすら思ってくるぐらいに。

 さすがにそれはないかな……ないと思いたいです、はい。




 それから街の中をひとしきり歩いてまわると、俺たちは次に郊外の草原に来ていた。そこで俺はハナを召喚している。


「わあ、可愛らしい召喚獣ですね。ふさふさな毛があるのに、背中は硬そうで見たことない動物です。ハナさん、どうぞ来てください」


 街を歩いた後は街の外を見てみようということになるのは、アウトドア派のアリーからすると、当然であった。

 せっかく広いところに来たので、アンホーリーウッドでも学校でも働いてくれたハナを遊ばせようと思って召喚したところ、アリーが予想以上に食いついているというわけだ。


「おおー、元気いいですね」


 お腹をわしわしと撫でるとハナは気持ちよさそうな顔でリラックスしている。

 しばらく撫でられていたハナは、やがて飽きたのかくるりと普通の向きになり、今度はとててと走り出した。


「追いかけっこですか。いいですよ、私も結構足に自信が……と、ハナさん、走るのすごく速いですね。ちょっ、ちょっと、待ってくださーい」


 全力疾走するハナは想像以上に早かった。

 さすが獣の俊敏性というところで、並の人間でも並じゃない人間でも追いつけない高速だ。


 俺も追いかけっこに加わり、しばらく召喚獣と共に戯れたのだった。


 その後は闘技場の見学をした。

 そこで俺が「おお、あれはこの前の乱入闘士だ、闘技場を辻斬りから救った闘士だ」と言われると(もういちいち顔を隠すのも面倒になったので、諦めて言われるままにしている)、アリーがそれら言ってきた人に、「この方はプローカイの闘技場だけではなくローレルの街も救ったんですよ!」と火に油を注ぐ発言をして大変だった。

 聞かれたアリーはとっても嬉しそうにローレルでのことを、闘技場の観客達に話していた。いやいや、予想外の騒ぎだった。でもまあ、飲み食い奢ってもらったりできたからお得だったけどね。




 そんなこんなで1日過ごし――。


 俺の宿泊している宿屋の前に、俺たちは二人いた。


「今日は一日、ありがとうございました」

「こっちこそ久しぶりにアリーと一緒に過ごしてリフレッシュできたよ」

「そう言っていただけたら、私も嬉しいです。私の方こそ、エイシ様とご一緒できてとても充実した時間でした。冒険もいいですが、このようにゆっくり過ごすというのもまたいいものですね」


 しみじみと言うアリーを見て、俺も頷く。

 アリーはそんな俺をじっと見つめている。

 アリーの顔を、夕日が赤く染めている。だが、その顔は夕日以上に赤くなっているような気が、不意にした。


「あの……

エイシ様」


 アリーが一歩近づいた。


「しばらくお会いできなくて、それは仕方がないことと思っていたのですが、久しぶりにお会いしたら、驚きました」

「驚いたって、何に?」

「ローレルで過ごしていた期間はそう長くないと思うのです。ですが、その間に、エイシ様と冒険でも、それ以外のことでも、一緒に過ごせる時間が私にとって、とても自然なことになっていたと気づいたんです。今もこうして向き合っていると、とてもやすらぎます」

「アリー……?」


 アリーは俺をじっと見つめている。

 その瞳は、強い感情が宿っているようで。

 吸い寄せられるように、俺も自然と一歩近づき。


 久しぶりに会って、気分が高揚しているんだ、きっと、お互いに――なんて考えようとしてみたものの、それ以上は考える余裕もなく俺たちは――。


「おー! そこにおわすはエイシと……あ、アリーだね! やほー!」

「エイシ……! くく、ははは! ついに見つけたぞ!」


 突然大きな二重唱が飛び込んできた。

 俺とアリーは、はっと我に返り、同時に後じさりして声の方へと顔を向ける。


 ルーと、そして――フェリペが共にやって来た。


「なになに~、なんでこんな所で突っ立って見つめ合ってるの。こんな外でやるより、用があるなら宿の中でやればいいのに」

「宿の中でやる……って、何を言って……いや、今の私は……ああうう。……」


 あ、止まった。


 ルーの言葉でアリーの機能が完全に停止した。

 固まったまま自分の世界に入ってしまっている。


 その時、もう一人のやってきた者、フェリペは俺に鋭い視線を向けていた。


「ここで会ったが百年目と言ったところか。まったく、手間をかけさせてくれるやつだなエイシは」

「手間をかけるって……なんでフェリペがここに?」

「魔道具職人がいる理由なんて一つしかないだろう?」


 フェリペは目を細めて笑みを浮かべる。


「どうせエイシ、お前のことだ。いろいろ『いいもの』を見つけてるって事は分かっている。さあ、見せてもらおうじゃないか」


 じりじりと俺ににじり寄ってくるフェリペ。

 ルーはなんだか面白そうなことが起きそうだなぁという顔でにやにやしているし、アリーはまだ固まっている。


 どうやら、今日という一日は、のんびり過ごしただけでは終わってくれなさそうだと、俺は息を一つついたのだった。



【寄生してレベル上げたんだが、育ちすぎたかもしれない】の書籍二巻が発売されます。

皆様のおかげで無事二巻も書くことができました!いつも読んでくださってありがとうございます!

一巻同様加筆修正も結構していまして、新たなキャラクターも登場いたしますのでよろしければ書籍版も是非読んでみてください。


発売日は2/10です、ちなみに場所によっては公式刊行日よりも1,2日はやく発売されるところもあるみたいです。

ではでは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ